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ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第三章   ~夏季心霊編~
14/92

#14 吸血鬼伝説もいい迷惑

 6月がそろそろ終わる。

夏が近づく。

湿った空気感。

ジトジトする雨が降っている。

一人傘差して歩く少年…ではなく少女。


 彼方悠飛だった。

本人の希望で引越しはしたが、学校は変えたくないと言う理由で

ちょっと遠目であるが電車を利用し中学校に通っている。

「ふぅ…これ毎日かぁ…。姉ちゃん達は偉いなぁ」

 イマイチ慣れない電車通学。

まだ中学生。

今までは近い学校通いだったが、不慣れな通学に少々苦戦していた。

「どうして、こう毎朝こんなに混むんだろう…」

 そろそろ嫌気がさしていた。

乗車時間は30分。

悠飛にとっては辛い状況であった。

しかも琉嬉達とは方向が違う。

鞍光の中央駅まで一緒でもすぐ別れてしまうのである。

「んー。大変だなー…」

 すっかり元気のない悠飛だった。


 一方その頃同じ時間。

琉嬉。

同じくして朝ラッシュ…とまでは行かないが混雑した電車に乗り合わせる。

「むぅー…。毎朝の事とはいえ、嫌になるなぁ…」

 背の低い琉嬉にとっては少々厳しい。

「時間ずらそうかな…」

 琉嬉もまた、参った様子だった。

登校時間も少々変更しようかとさえ思っていた。


 いつもの学校。

今日は雨。

テンションもあがらない…というより、悠飛自体がクールなのでテンション高いのかすらもわからない。

はたから見たらそう思う。

悠飛の通う中学校。

引っ越す前は近かったのだが、今は遠くなってしまった。

通うのも楽じゃない。

朝から少しぐったりしていた。

慣れない登校は悠飛の体力気力を奪っていった。

「おーい。悠飛」

 ふと見上げると従姉妹の紫音がいた。

引っ越す前に一時的に一緒に住んでた。

そのため同じ学校に通うのも当然だ。

クラスはさすがに違う。

「元気ないね悠飛」

「……うん」

「家が遠くなったから大変じゃない?」

 いつのまにかいた莉音。

紫音に比べるとおとなしめではあるが、するどい洞察力がある。

「…まあね…。そんなところかな」

「…大変だな」

 しばし沈黙が流れる…。

「そうそう、悠飛」

 沈黙を破ったのは紫音。

「ん?」

「最近、ここらで吸血鬼騒ぎってのがあるんだけど…」

「……??吸血鬼って、血を吸うやつ?」

「そうそう」

 吸血鬼といえば、ドラキュラ伯爵などでおなじみである。

血を吸う、まさに化け物のような存在。

とはいえよくある話。

メジャーでもある、ありきたりな話だ。

「…それがどうしたの?」

「どうやらね、この学校の生徒が襲われたらしい…だって」

 生徒が襲われた。

信憑性が薄い話ではあるが、妖怪などが存在する世界。

あながちありえない話ではある。

「…なんだかわからないけど、その吸血鬼がどうしたの?」

 ニヤニヤしながら紫音が口に出す。

「協力して見つけて、そして倒そう!」


「…あのねぇ。私達は中学生だよ。そんな事してると怪しまれるよ?」

「なーに言ってンの!琉嬉姉なんか高校生でも10歳くらいにしか見えないでしょ!もう中3なんだし。オトナ、だよ!」

「ちょっと…紫音、それ言いすぎじゃない…?」

 紫音の発言にオロオロする莉音。

だが悠飛は…

「うーん。10歳って言っても通じるよね…」

(オイオイ…実妹さんよ…)

 悠飛の姉に対して放った一言を心の中でツッコミを入れる莉音だった。


 一方その頃の琉嬉はふかしぎ部の部室で携帯ゲームをしていた。




 学校が終わり、事件現場だと思われる周辺一帯に行く3人。

現場に着いても特に何も変わりなくある住宅街の道路。

そして小降りになってきた天候。

曖昧な天気だ。

傘をさす。

「何も無いけど…」

「いーや、あるね!」

「…どうしてそんなにやる気なの…?」

「琉嬉姉の活躍ぶりのせいで火がついたみたいなの」

「ふーん……そういう熱血なところが、なんか、彼方家の人間らしくない性格だよね…」

「そうだよね~。思い立ったらすぐ行動するタイプだから」

「どうして双子でこうも、性格違うんだ…?」

 悠飛はどうも納得できないようだった。

見れば見るほど見ただけの見分けはつかない。

顔は勿論、髪型や声、背丈、体格、全てほとんど一緒だ。

双子だとしてもここまでそのまんま同じなのはあまりいないのはないだろうか?



 しばらく辺りを見て回る。

だが、そこで莉音が気づく。

「あ、あのさ、紫音」

「んあ?何?」

なんだか言いにくそうな表情をしている。

「…言いたい事あるなら言ったほうが楽だよ?」

「うん。そうなんだけどさ…。ここに来る前にその被害者に会った方がいいんじゃないかな~って…」

 莉音がそう言うと紫音が固まる。

「…あ、そっか!先にそっち行った方がいいのか!」

「先にって…」

「じゃあ行こう!」

「どこに?」

「へ?」

 またもや莉音の一言で紫音が固まる。

「大体、被害者が誰だかわからないじゃない?」

「……あ、そっか」

 悠飛はため息つきながら双子のやりとりに呆れ果てていた。

どうやら紫音は考えが今一歩足りないようである。

莉音が紫音の暴走を抑える。

一応姉としての威厳とでもいうのか、莉音の言葉は聞く紫音。

「むむ…ここに来ても意味なかったてコトだよね…?」

 悠飛の方をチラっと見る紫音。

嫌そうな顔する悠飛。

「…うーん……。それを決めるのはまだ早いかと思うけど…」

「どゆ意味?」

「私はさ、霊視はあまり得意じゃないんだけど…そういうのあればヒントくらいはわかるんじゃない?」

「なるほど」

「後はさ、その吸血鬼の妖気みたいのが残ってるとか…」

「ふむふむ。早速やってみよう」

 紫音はふと目をつぶり、集中する。

「…姉ちゃんならそういう力強いからすぐ分かると思うけどね」

 彼方家の血筋でも最高峰に高い霊感の持ち主。

感受性が高いので微量の霊気でも感じ取れる。

反対に妹の悠飛は不得意だと言う。

「…そうだよね…琉嬉お姉ちゃんならそういうのすぐわかりそう」

 そうしてるうちに紫音の霊視が終わる。

「どう?何かわかった?」

「…うーん」

 沈黙の紫音。

「紫音?」

「んーよくわかんない。微かに霊力みたいのは感じるんだけど…」

「だけど?」

「やっぱ被害者に会いに行こう」

「なんだそら!」

 普段クールな悠飛が思わず叫んだ。


 悠飛は自宅に帰っていた。

「…今日は珍しく遅いね」

 琉嬉が珍しく遅く帰ってきた悠飛を不思議そうに聞く。

「うーん、これ言っていいのかな?」

「む?」


「紫音がまた変な事言ってたのか」

「うん。でも、ここにきて吸血鬼騒ぎは変じゃない?」

「…まー、前からそういった類の話しがおかしくもない地域だったしな~」

 当然琉嬉も通っていた中学。

そして住んでいた地域。

不可解な出来事が前から無かった訳ではない。

「かといってあれだな、吸血鬼なんて聞いたことないな」

「だよねぇ…」

「來魅はなんか知らないの?」

「吸血鬼?さぁー、知らんのう。

少なくとも100年前にはここらでは聞いた事なかったがの」

 來魅も知らないようだ。

琉嬉にはふと思い出していた。

「姉ちゃん?どうしたの?」

 考え込む琉嬉の顔に疑問。

「いや…、何か思い当たるっていうかさ…。なんて言うのか…」

「え?どういう事?思い当たるって…」

「いや…まさか……。うーん」

 琉嬉はしばし黙り込んだ後ゆっくりしゃべりだした。

「……以前さ、吸血鬼と戦った事あるんだよね」

「へ!?」

 普段クールな目つきだが、その目を丸くして驚く悠飛。

「でも、そいつがやるとは思えないし」

「…その根拠はあるの?」

「うんー。見境なしに襲うとは思えないし。そもそも…」

「そもそも?」

「別に血吸わなくても大丈夫だって言ってたし」


 悠飛には驚きが隠せないでいた。

血を吸わない吸血鬼は吸血鬼じゃないだろう、とまで思っていた。

やっぱり違う吸血鬼なのか? そもそも、吸血鬼の仕業なのだろうか?

疑問が大いに残る。

「あんまり深入りするなよ悠飛」

「……」

「また自分で対処できないのに憑かれたりするぞ」

 久々に会った時。

悠飛は少々厄介な悪霊に獲り憑かれていた。

憑かれていては何もできなくとも、憑かれてさえいなければ祓う事は出来る。

そこさえ注意すれば悠飛でも難なく戦える。

琉嬉の妹だけあるので能力次第ではかなり強力な部類…なのであるが。

霊感知力が低いため、精神波攻撃系統は苦手。

肉弾戦が得意なのである。

「嫌だけどさ、一応、その吸血鬼に聞いてみるよ。それまではあんまり深く首突っ込まない方がいいと思うよ」

「うん……。そうしたいけどね…。紫音が」

 そう。紫音の性格が厄介なのである。

とにかく強気で前へ、前へ突撃していくタイプ。

考えるより手を出すような種類の人間なのである。

そしてまた気が強い琉嬉と衝突する事もしばしばあったのだ。

「紫音の性格もアレだけど…莉音も止めはしないのな」

「なんだよねぇ。結局は似たものというか」

「まあ、双子だしなぁ」

「……」

「また妙な話が出てきてるんだのう」

 その日はこうした会話で夜が更けていった。



 翌日、その日も天気は悪かった。

日が昇ってる…はずだが、雨雲なのか。

いつもより黒い雲が空を覆っている。

昼間なのに暗い。

いつ雨降ってもいいかもしれないといった具合だ。

「おーっす悠飛!」

「あ、紫音」

「いろいろ学校のヤツに聞いてみたけど、どうやら3年の高宮さんって人らしいぞ。同じ学年だ」

「…ほんと?」

「うん。早速行ってみるか」

「しかしまあ…莉音。よく調べついたね」

「…大変だった。紫音の強引さが…」

 疲れた顔をしている莉音。

大変だったようだ。

苦労が現れてるのが少し同情する。

ともかく行動あるのみ。

悠飛はなんとなく今の状況を見守るしかなく、着いていくだけだった。

というより、口出して紫音と揉め事になるのが嫌だった。


「ここかなぁ?」

 莉音の手には住所と地図。

目の前には高宮と書いた表札。

どこにでもあるような一般の住宅だ。

「よし、早速聞き込みだ」

 紫音は躊躇なくインターホンを鳴らす。

ピンポーン…と、響く。

『ハイ』

「あのぉ~、高宮さん宅ですよね?高宮理子さんいらっしゃいますか?」

『いますけど、何用ですか?』

「な…何用って…聞かれたけどどうする?」

 紫音が焦った様子で二人を見る。

「…あんたねぇ…」

 悠飛が呆れ返る。

そしてインターホンごしに言う。

「一応、同じ学校の者です。学校のプリント持ってきたんです。お会いできませんか?」

『あ、そうなの~?お待ちくださいね』

「おおっ」

「案外うまくいくもんだね」

 もちろん、嘘。

「…良心が痛む……」


「あなた方は…?」

 あまり接点のない生徒達が入ってきて驚くのも無理もない。

かなり驚いた表情をしている。

高宮は寝巻きのままのようだ。

見れば可愛いというより綺麗系な雰囲気を出している。

「高宮さんねっ!私は彼方紫音!」

「彼方さん…。知ってますよ。有名だもん。あなた方」

「そうか!なら話しが早い!聞きたいコトがあって来たのさ!」

「ちょっと落ち着いて紫音」

 ズイッと紫音の顔を抑え込むようにして前に出る悠飛。

「ごめんね。うちの従姉妹が強引でさ」

「…そ、そう…」

「ま、聞きたいコトがあるのは私も同じだけどさ」

「聞きたいコト…?」

「そう、あんたが「吸血鬼」に襲われたってね」

「……!」

 高宮理子という少女は何か解ったかのように動きをピタっと止める。

「やっぱり何か知ってる様子だね」


 一息ついて落ち着くように、悠飛らはその場に座る。

話によるとここ2、3日は学校に出ていない。

不思議に思ったクラスメイトが噂のあった日と重なったため、怪しさに拍車がかかり、

高宮という少女が襲われたのではないかという噂がたっていた。

ここに来たのは賭けでもあった。

「…正直に話してみなよ」

「よくわからなかったんだけどね…。塾の帰りだったんだけど…」

 高宮は淡々と語りだした。

「吸血鬼とかなんなのかわかんないけど、帰り道夜だったからあんまりはっきりと見えなかったんだけど」

「うむうむ」

「人がいるなあ…と思ってそんなに気にかけなかったんだけど…、

そう思った瞬間予想だにできないジャンプ?みたいに飛んできたというか…」

「…マジか」

「最初変な事されるかと思ったんだけど…」

「変な事?」

 紫音が余計な事を聞く。

「え…?いや、その…」

「しのーん。夜な夜な若い女の子が襲われるっていったら、いやらしーコトとかでしょ」

 顔を赤くしながらも言い切る莉音。

言わなきゃいいのに。

「あぁ、そか。なるほど」

 納得する莉音。

「…お前らはちょっと黙ってろ」

 悠飛が莉音紫音をまとめて遠ざける。


「それで…気づいたら首の辺りをガブって…」

「それってマジモノの吸血鬼…!?」

「意識が遠のく時に…なんかもう一人現れて…その後の記憶がないの」

「うはぁ…それは本当なのかぁ…」

 そう語ると高宮は首の傷痕…噛まれた痕を見せた。

3人が覗き込む。

たしかに、左首辺りに歯型のような傷痕がくっきり残っている。

痛々しい様子。

「でもよく助かったねぇ」

「うん…。気づいたら病院だったけど…、貧血気味だったけど他は問題なく大丈夫だって」

「ふぅん…この吸血鬼話は本当だったのか…」

「まだ確定したわけじゃないけどね」

 それにしてもどうして「吸血鬼」という話になったのか。

それは高宮の首の傷痕だった。

傷痕を見た高宮の友人が吸血鬼の仕業だという結果になったため、噂が広まったというのだ。

ましてや、被害を受けた本人が首のを噛まれたというのだから。

「あ、そだ。高宮さん」

「…はい?」

 紫音が思い立ったように高宮の前に座る。

「ちょっと失礼して…」

 高宮の額に手を当てて霊視を試みる。

「これは…?」

「まぁまぁ、ちょっと大人しくしててね」

「はぁ…」

 しばらくそうしたまま5分間。

そっと手を離す紫音。

「何か解った?」

「……多分…人間じゃない霊気…。妖気?」

紫音は感じ取っていたようだった。

「やっぱり人間の仕業じゃない…?」

「あのぉ…人間じゃないとかなんとかって…」

 疑問に思う高宮。

「あ、こっちの話ぃ~。ま、誰のせいとかわかんないけど、これ以上犠牲が増えないように私達が解決しとくよ」

「はぁ……。よくわかんないけど、頑張ってください」

「ご協力感謝!高宮さん!仇をとっとくよ!」

「仇って…」

(高宮さん死んだわけじゃないだろ)

と心の中でツッコむ莉音。

3人は高宮宅を後にした。


「それにしてももう一人ってのが気になるね…仲間?」

 悠飛は疑問に思っていた。

気になるもう一人。

「あのさ、二人とも」

「ん?」

「さっきのでわかったんだけどさ、どうやら高宮さん本人以外の、強い霊気が二つ…?微かに残っていた」

「!!」

 紫音の霊視の結果、二人分の霊気が残っていたという。

やはり高宮の発言は嘘ではなかったという事である。

「でも、どういうコト…?二人で襲ったとしてもなんで命までは取らなかったんだろうか、て思うよ」

「莉音の言う事も確かに一理ある」

 妖怪…といえども人間を襲う奴はいる。

下手すれば命だって取るだろう。

だが、今回は血を吸っただけで命は助かっている。

何か裏があるのだろうか。

疑問は残る一方だった。

「うーん。仕方ないなぁ。また昨日の場所行ってみるか」

「また?…何も変わってないと思うんだけどなぁ」

「じゃ、じゃあさ、夜に行くってのは?」

「……めんどくさいなぁ…」

「今日はお寺に泊まっていけばいいじゃん!元々住んでた所だし」

 こうして半ば強引に悠飛は夜に行動するハメになった。

「………別に今日じゃなくてもよくないか?」



 3人は結局また、事件現場にいた。

なんだかんだで付き合う悠飛。

大体夜の9時。

女子中学生が夜にうろついてるようにしか見えない。

「調べたんだけどさ…」

「ん?何?」

「ここだけじゃなく、他に事件現場?がもう二ヶ所、あるんだって」

「え?!マジ?」

 紫音が身を乗り出して聞き入る。

「どやってそんな情報手に入れたの?!」

 悠飛が渋々答える。

「姉ちゃんのね、知り合いに刑事の人がいるんだ。

その人が他に起きた場所を教えてくれたって」

「やるじゃん琉嬉姉」

 琉嬉の知り合い、沢村刑事。

沢村刑事本人も霊力がある人間。

そのつながりなのか琉嬉とも関わりがあり、多少融通が利く。

警察の方も一応調べているが、今回の事件にはさっぱり困った様子。

いかんせん犯人の目星はついてない状況だった。

そこで、沢村刑事は琉嬉に情報提供して、調べてもらおうとはしていたらしいとの事。

「琉嬉お姉ちゃんは来ないの?」

 莉音がそれとなく聞く。

「うーん。どうだか…」

 お金が絡まないとあまり動こうとはしない姉。

気難しい性格なのである。


 再び現場に到着した3人だったが、特に変わった様子はない。

「ここと、他の場所を合わせると…」

「あれ?悠飛ちゃん地図持ってきてる」

 莉音が悠飛が地図を持ってきて何かしてるのに気づく。

「ん?いや、あると便利かなっと思って…」

「やるじゃん!悠飛」

「推理小説とかそういうの読んでるとこういうのがやりたくなるんだ」

「へぇ~…」

 二人は感心した様子。

悠飛の意外な一面だった。

今居る場所と他の現場を照らし合わせる。

距離、時間などおおよその感覚を合わせていく。

しばらく地図と格闘している悠飛。

そして……。

「うん。意外に遠くないね。歩いては行ける場所…」

「そうなの?」

「ほら、見て」

 ばっと地図を広げる悠飛。

覗き込む二人。

今いる所からそう遠くない所に丸印がついている。

「時間が…大体20時から21時くらい。今よりちょっと早い時間くらいかな」

「20時…て?」

「夜の8時の事だよ。紫音」

「あ、そっか」

 紫音のアホっぽい発言に呆れながらも悠飛は続ける。

「ん…とね、時間がいずれも20時くらい、20時半ちょっと前くらいだから…」

「だから…?」

「もうちょっと早い時間から張っていればいいんだろうけど…」

「けど?」

「今日が事件起きるっていうわけでもないよね」

「……だよね」


 事実に気づき途方にくれる紫音。

「やるんだったら、毎日じゃないと意味ないかもね…」

「う…うむむ。たしかに…」

 ガッカリする紫音達。

「とりあえず、別の場所に行ってみる?」

「うーん。ここにいても仕方ないから行ってみよっか!」

 紫音は乗り気だった。

だが、莉音は顔には出さないが、心の中では乗り気ではなかった。


 場所は住宅街から変わって田んぼや畑が多い地域。

すぐ行けば山中になる田舎街ではある。

先ほどの現場から一番近い場所。

畑が広がる場所。

誰一人通らない、寂しい時間帯。

「……誰もいないし、霊気めいたのも感じないなぁ…」

 またもやガッカリする紫音。

「でも、ま、残念がる前に予測はできそうかも」

「え?」

 悠飛の発言に戸惑う紫音と莉音。

「アンタ達…何?」

 二人が後ろを向くと美女がいた。


 そこには金髪で女性…。

日本人ではない顔立ちの美女がいた。

背が高く、モデルのような美人。

先ほどまで誰もいなかったのに突然現れた。

こんな夜の田舎道に似つかない綺麗な、異国風の女性。

「わわ、悠飛、外人さんだ外人さん。それも金髪美女だよ!」

「…うるさいな紫音…」

 騒ぎ出す紫音。

何が現れてもきっと、騒がしいんだろう。

「アンタ達ここで何してるの?」

「何してるったって…ここら辺で吸血鬼が出るって噂聞いたから」

「!」

 驚いた表情する女性。

でもその躍いた表情をすぐ落ち着いた表情に戻す。

「結構有名なのね…その話」

「学校どころか、街中に広まりつつあるけど…。ネットでも書き込みあるし」

「そう…」

 そこで紫音が切り出す。

「私達はね、ぶっちゃけ吸血鬼退治に来て現れないか捜してたんだ!あんた何か知ってる?!」

「紫音ちゃん…それ人に尋ねる態度じゃないよ…」

「フフ…」

 女性が笑う。

「アンタ達ね…なんか嗅ぎ回ってる感じしたの」

「!?」

 3人は身構える。

「まさか…あんたが吸血鬼の正体!?」

「フフフフ…吸血鬼ねえ…たしかにそうかもしれないけど」

「マジか…!」

 その女性は不敵に笑う。

自分が吸血鬼などと言う。

だが、悠飛はどうも違和感を感じていた。

「吸血鬼だというならここで倒ーーす!」

 紫音が有無言わさず攻撃を仕掛ける。

それを難無くかわす女性。

「危ないわね~」

「避けたか!なら…」

 次の動作に移る紫音…だったが。

「ちょっとは話を聞きなさいよ」

 女性の素早い拳の一撃が紫音の腹あたりに命中していた。

「なっ…?」

 紫音はそこに崩れ落ちる。

「…早い!」

 悠飛が素早く女性に氷の一撃を放つ。

「ちょ、!氷って!」

 女性の足元に氷の刃が解き放たれる。

当たらないにしろ、足止めにはなった。

「く…許さーん!」

 紫音がすぐさままた、攻撃を仕掛ける。

「…!!」

「無牙!」

 紫音の掌低が女性に命中。

「はっ!!」

 命中した手から霊力が放たれる。

「これは…追加攻撃!?」

 女性が遠くに吹っ飛ぶ。

が、見事に着地。

「どうだ!」

「…やるわね…!子供だと油断してらんないわね」

「さっきのお返し!」

 してやったりといった具合の顔の紫音。

「…ちょっと待って、紫音」

 悠飛が紫音を制す。

「な、なにすんの?!悠飛!」

「どうも違和感感じるんだよ」

「違和感?」

 悠飛はさっきから感じていた違和感が拭えないでいた。

「この人がやったとは思えない…気もする」

「はぁ?!どうゆーコト?」

「……」

 悠飛が黙り込む。

訳が分かってない紫音。

「…あのさ、もしかしてこの人もこの事件を追ってる人じゃないかな?」

「話が早い男の子ね」

「あ」

「あ」

 莉音と紫音は女性の発言に唖然とした。

「わたしは…男じゃないー!!!」

「え?!」



「ごめんなさいね。てっきり男の子かと…」

「よく間違えられるから…いいです。もう」

 ふてくされる悠飛。

その様子をケラケラ笑っている紫音。


 女性は名を「ルナフラワード」と名乗った。

本名かどうかはわからない。

が、言うには日本国籍ではあるらしい。

生まれも日本。

言語も日本語だけしかわからないという。

「私の事はルナでいいわ。貴方達は?」

「…あたしが彼方紫音。こっちが双子の姉の莉音」

「……私は彼方悠飛」

「同じ苗字って事は姉妹かなんか?」

「いとこの関係」

「へぇ……。いとこ同士…。ふーん…彼方ねぇ…。あの有名なお寺さんと関係あるの?」

 ルナも緋黄寺の有名さは知っているようだ。

「関係も何も、そこの子供だし」

「えー!そうなんだ!お姉さんびっくり!」

 極端に驚く。

「…そんなに有名なの…?」

 驚きっぷりに逆にびっくりする3人だった。


「私もね、実はこの事件追ってたのよ」

 ルナフラワードは同じくして、この吸血鬼事件を追っていた。

「…それにしてもこの事件に彼方家の人が介入してくるとはねぇ」

「それはこの双子の妹のせいです」

「あ、あのなぁ…悠飛」

 紫音が言いだしっぺである。

といってもこういった絡みの事件は彼方家のお手の物ではある。

「せっかくだし一緒にこの事件を追ってみる?」

 ルナフラワードは合同で事件を解決しようという案を出す。

「むむ…」

「どうする?紫音?」

 莉音は心配そうに紫音に話しかける。

「別にこのままルナさんがいなくても真相は見えてこないかもだし」

 たまたま偶然。

ルナフラワードとは出会った(むしろ戦ったが)。

そしてルナフラワードの方が事情が詳しいのかもしれない。

「どっちにしろ事件現場回っていても何も見つからないと思うし、しばらく一緒に行動した方がいいかもね…」

「仕方ない。そうするか」

 なんだかんだで共に行動する事になった。



「ねえ…もう11時だよ…」

 莉音が疲れの言葉をもらす。

元々、乗り気ではなかった。

悠飛も同じだったが、結局莉音より乗り気になっていた。

だが莉音だけは付き合わされる格好になっていた。

「今日中にやらないといけない事なの…?紫音」

 眠たそうな目を擦る。

その場に座り込んでしまう。

こう見るとただの子供のようだ。

「せっかくここまで来たんだから、キッチリ終わらせないとダメ!」

「気合入ってるわね~」

 かなり気合が入っている紫音。

「空回りしないでね」

 冷静にツッコミ入れる悠飛。

尚も進む面々。

「まだ進むの……?私眠いよぅ…」

 気づけばよくわらない森林道に入っていた。

夜の森中は気味が悪い。

そんな中女の子が4人。

逆に不思議な光景。

「ルナさんやら、ここに何かあるの?」

「…大体の居場所は掴めてるのよ」

「へ?」

「犯人のね」

 ルナがそう言う。

「あなた達の推理もなかなかよかったのね。だから偶然さっきの所で会ったというワケ」

「なるほど…」

 悠飛の作戦もあながち悪くはなかったようである。

だが、その悠飛は…。

「…でもここにいるっていう確証は……?」

「臭い…かな?」

「はぁ……?」

 臭いと言われ唖然とする3人。

「いやいや、臭いって言っても本当に臭うんじゃなくって、

妖気というのかな…?」

「妖気だったらあたし達も気づくと思うけど」

 3人も彼方の一族。

高い霊力を持つ家系ではあるので、少々弱めの霊気的なものでも感じ取れるのであろう。

だが、今のところ、何も感じられない3人。

しかし、ルナは薄々感じているとでも言った話をする。

一体このルナフラワードという人物は何者なのか…。

それは後に知る事になった。



 そこは近くの裏山だった。

辺りは何もない。

風でざわつく木々や草があるだけだった。

深い闇の森。

その中に4人は居た。

「ねぇ…結構~歩いたよ」

 莉音が疲れきっていた。

同じく紫音も言葉数少なくなっている。

しかし言いだしっぺなので弱音ははかない。

「さあて…そろそろこの辺で姿現したらどうかしらね?」

 突然ルナが不可解な事を言い出す。

「…ルナさん?」

悠飛が異変に気づいた。

「!!」

 3人はいつの間にかいた異形な存在に目を向けた。

「こ…これって…!」

 目の前には2mくらいはあるだろうか。

人のようではあるがあきらかに人間ではない、生物。


 ――妖怪がいた。

「…お前達は…何者ダ」

「何者って…あんたのやってるコトを止めに来たんだけどね」

「……霊術師カ」

 3人は呆然としていた。

「…ソコの、金髪の女…貴様ハ、この前…」

 ルナフラワードと顔見知りな様子だ。

「コイツが今回の事件の犯人よ。吸血妖怪だから気をつけてね」

 ルナフラワードが3人にそう告げると同時に動き出す。

「なんだか知らないうちに真実に到達したって事だね」

 悠飛も行動に出る。

「じゃあ~コイツを倒せば事件もなくなるって話ね!やってやる!」

 急激にテンションを上げる紫音。

「お前達には無理ダ」

 吸血妖怪が口から何かの液体のような物を出す。

「うわっ」

「言ってるそばから!」

 紫音が避けそこなった。

当たった服の部分が溶けたように見える。

「うっわ…!何コレ!気色悪ッ!」

「次来るわよ!」

 ルナが声を張り上げる。

「くぅ!」

 妖怪の渾身のパンチ。

地面を叩き割る。

かなりの威力だ。

「うひゃ、凄っ……。くっそ~服をダメにしやがって…」

 紫音の怒る理由が出来た。

「このぉ!」

 悠飛が腕に作った氷の剣で攻撃を放つ。

見事に斬り裂く。

しかし浅く入った。

(…浅かったか!)

「ウガァッ!貴様ァッ!」

 悠飛の足が掴まれる。

身動きがとれなくなる悠飛。

「くっ!」

「不用意に近づくと危ないわよ!」

 ルナフラワードが右腕を振り下ろす。

スバッと鈍く切るような音がする。

悠飛を掴んでいた腕を切断する。

「ググッ!」

 だが、腕はすぐさま再生する。

かなりの再生能力だ。

「なな…何コイツ!?」

 紫音が驚愕する。

無理もない。

妖怪自体は何度も戦った事ある紫音達だが、これ程までの再生力があるのとは会った事がない。

「…さすが、吸血鬼ね…再生能力が高いわね」

 ルナフラワードも驚きを隠せない。

「肉体ある存在においてこれ程の回復力があるとは…。さて姉ちゃんならどうするだろうか…」

 悠飛が冷静に姉の琉嬉の戦いをヒントに策を考える。



「…琉嬉ちゃん。犯人の居場所が分かったって本当かい?」

「僕が見つけた訳じゃないけどね」

 沢村刑事と琉嬉だった。

二人はどうやら犯人、吸血妖怪の居場所へ向かっているようである。

特系としての力を利用して、独断で動いてる沢村。

途中で琉嬉を拾って車で向かっていた。

「犯人というか、今回の事件の首謀者は妖怪みたい」

「…妖怪なのか……て、え?!」

 沢村刑事は驚いた。

「なんで妖怪だって判断できるんだい?」

「ん~。同じようなやつが知り合いにいてさ、心当たりあるっていうから」

「…なんだか分からんが、琉嬉ちゃんの知り合いの言う事なのならそうだろうなぁ…」


 二人がそうこうしてるうちに戦いは佳境に入ろうとしていた。

吸血妖怪はおそるべき再生能力を持っている。

うかつにも攻撃しようとも無駄に体力、霊力を消耗してしまう。

「無闇に攻撃しても駄目みたいだね…」

「さぁて…どうしましょうか」

「どうするったてねぇ…」

 打つ手なしか。

だが、そこで莉音が口を開いた。

「あ、あのさ、再生できるったて、限界はあるはずだよ。おそらく…」

「どうゆう事?」

 少し間を置いて莉音が再び話す。

「多分、頭を完全に潰してしまうか、体全体丸ごと消滅させるか…」

「…あはは、お嬢さんかわいい顔してかなりエゲツナイ事言うのね」

 ルナフラワードが笑い飛ばす。

莉音の言うことはごもっとも。

再生力が高くても細胞すべてなくなりさえば復活する事はない。

だが、今いるメンバーでそれ程の霊撃を放てるのがいるのだろうか。

ルナはまだ未知数だが悠飛ら3人はそこまでの霊力はない。

琉嬉ならば高威力の霊撃は出せるのだろうが…。

「ルナさん、消滅させれるほどの一撃放てる?」

 悠飛がルナフラワードに問いかける。

「さぁ…相手に効けばの話だけど…。やってみる?」

「私達が出来るだけ弱めてひきつけるから、ルナさんお願い!」

 そう言うと紫音が素早く攻撃に回る。

「早っ!」

 慌てて行動に出るルナフラワード。

「まったく…紫音のヤツ…」

 半ばあきれながら悠飛も行動に移す。


「何の会議してたカ、わからんが女子どもが束にかかろうと無駄な事ダ」

「やってみなくちゃ…」

 素早い動きで紫音が蹴りを繰り出す。

「わかんないだろっ!!」

 見事に顔に命中する。

「ガッ…この…!」

「おっとぉ!」

 間一髪腕の素振りを避ける。

「一緒にいると当たるぞ!」

 悠飛が無数の氷を放つ。

鋭い槍のように何十本も作り出し撃っていく。

「うわっ!危なっ!」

 巻き添えを喰らいそうになる紫音。

「…さすが彼方家の子達ね…。動きが尋常じゃない」

 悠飛達の動きに感心する。

ルナフラワードの手元には強力な霊力が満ちていた。

「グッ…貴様ラァッッ!」

 吸血妖怪が妖気を爆発させる。

辺りは軽く爆発でもしたように砂煙が巻き上がる。

「わっ」

 紫音が体勢を崩す。

その隙を狙って妖怪の攻撃を受ける。

「くぅぅっ!」

「紫音!!」


 その時、莉音が妖怪の背後に回っていた。

「捕えた……!!」

「!!?!?いつの間に…」

 吸血妖怪の動きが弱まる。

「秘奥義…殺真!!」

 その瞬間まばゆい光が広がった。



「がガが……なんダこれは…!?」

 妖怪の動きが止まった。

というより、動けないようだ。

動かそうとも動けない状況になっている。

「おおっ!」

 思わず感動の声をあげるルナフラワード。

突然何もしないでオロオロしてたように見えた莉音が放った一撃。

まさにダークホース。

吸血妖怪も油断してたのであろう。

全く警戒してなかったようだ。

「今がチャンスってやつ?よくやった!莉音!」

 ここぞとばかりに突撃開始する紫音。

「せいっ!」

 悠飛の冷気が全体を覆う。

みるみるうちに妖怪が凍りつく。

「がガ…」

 そして紫音のさらなる追い討ち。

「こいつは効くだろ!ん?」

 なんともいやらしい笑み浮かべながら霊気を送り込む紫音。

「妖怪にはちときついかな??フフフ…」

 対妖怪に威力のある技らしい。

そして、最後にルナフラワードの強力な霊撃――――。


 妖怪は爆発四散した。




「なんだ。もう終わったのか」

 戦いの終わった現場に到着した琉嬉と沢村刑事。

「おっそい~~琉嬉姉!」

 琉嬉に詰め寄る紫音。

ぷんぷん顔の紫音に対して琉嬉は至って冷静な顔をしている。

悠飛の方を見ると、小さくウインクした。

(……まぁ、今回は4人もいたしね…)

 疲れた顔をしているが、組んだ腕のまま小さくVサインを出す。

「まぁまぁ、いいんじゃない?紫音ちゃん」

「姉ちゃんいなくてもなんとかなったし。ルナフラワードさんもいたから助かったよ」

「ふーん……ルナフラワードさん…ねぇ…」

 チラっとルナフラワードの方を見る琉嬉。

やっぱり金髪美人。

しかし別段驚いた様子を見せない琉嬉。

そのままルナフラワードの方へ向かう。

「久々ね。琉嬉」

「……まさかこんなカタチで再会なんてね」

 どうやら知り合いらしい。

「え?何?知ってるの?お互い?」

「…ちょっとね」

 悠飛は以前琉嬉の言っていた言葉を思い出していた。

(そういや前、吸血鬼と戦ったと言ってたけど…もしや…?)

「でも、なんでアンタが出てきたの?」

 琉嬉がルナフラワードに疑問を投げつける。

どうしてわざわざ、この事件に限って出てきたのか。

それが理解できなかった。

「私としては、同族のような存在のやってた行為が許せなかったのよ」

「へ?どういう意味?」

 紫音混乱してきたようだ。

「つ・ま・り。私も吸血鬼の血筋、なの」

「エーーーーーッッッ!!!?!?!」

 驚く琉嬉以外の人間達。


「驚くのも無理ないか~」

 笑いながら言うルナフラワード。

「いや、だって…えー??」

「まあまあ落ち着きなよ」

 そこで割って入る沢村刑事。

「この事件に関しては琉嬉ちゃんに頼もうと思ったけど、なんだかんだで解決はしたし」

「うむ」

「さすが彼方家さんの家系だね」

「ざっとこんなもんさ!」

 なぜか威張る紫音。

「死人は出てないけど重傷者は出ている。ほっとくと確実に死人は出てた可能性はあるしね」

「…結局はルナフラワードがその妖怪を追い詰めていたんだな」

「何回か戦ったんだけどね。ほとんど逃げられてたし」

「そうなんだ…」

 ルナフラワードは、この事件に関してすでに動いていた。

以前悠飛らの同じ学校の生徒が襲われた時もルナフラワードは居合わせていたのだ。

被害者が死なないで済んでいたのは、ルナフラワードがその場に駆けつけて助けていたからだ。

自身からは話してはくれないが、なんとなく琉嬉は察していた。

「でもまさか、彼方の家の人たちもこの事件に介入してくるとは思わなかったけどね」

「全部このバカ紫音のせいだけどね」

「なっ!悠飛!お前!」

「そうだね。紫音が首を突っ込むから…」

「莉音まで!むきー!」

「…相変わらずうるさい女だなぁ…」

 耳をわざとらしく両手人差し指で塞ぐ琉嬉。



「んで、久々だな」

「……そうね」

 琉嬉とルナフラワード。

対峙する二人。

前に戦った事がある。

そんな関係だった。

「…今回は協力する形になったけど、次は敵かもね」

「相変わらず負けず嫌いだな」

「あんたこそ」

「……でもそうも言ってられないけどね。今は」

「どういう事?」

「ちょいとヤバイのが復活しそうなんだけどね」

「…ヤバイの?」

 琉嬉はとある妖怪について話した。

ついでに來魅の事も話した。


「…何ソレ……琉嬉も敵わないようなヤツがいるの?」

「残念ながら、世の中広いって事かな。僕も精進しなきゃ、て思ってるよ」

「………あの力は?」

「それは本当に本当の最終手段。通用するかどうかもわからないけど」

 あの力。

そう、「真霊気」と言われるすべての力を無効化する驚異的な力。

琉嬉はその力を使う事が出来る…が、使うには己に負担が強すぎる。

使おうと思えばいつでも使える。

しかし琉嬉は気乗りではない。

以前に護や生徒会の人間達にも微弱ながら使っている。

あの時はほぼ、一体一なのでなんとかなったが、使い所を誤ると危険だ。

「……そう。そんな妖怪がいたのね…」

「それもそうなんだけど、さ」

 またここで入ってくる沢村刑事。

「ここ数年妖怪だの心霊だの、そういった事件が増えてるんだよ」

「…たしかにそうよね。何か関係あるのかしら?」

「うちの祖父ちゃんもそんな事言ってたな。昔より多くなってるって」

 3人はしばし沈黙…。

「そういう事で、琉嬉ちゃん達の力を借りる事にこれからもあるかもだからよろしくな!」

「…ハイハイ。ノーギャラは勘弁だけどねぇ…」

 琉嬉らしいセリフ。

お金にはちょっとうるさい。

沢村の方をいつも眠たそうな目つきでチラっと見る。

視線を思わず逸らしてしまう沢村だった。


「でも、意外と楽しかったわよ。琉嬉の妹さん達はにぎやかで」

「そうかい」

「妹じゃなくてお姉さんにしか見えないけどね。ププッ」

「お前なぁ…」

「…さすがは五大家の彼方家ね」

「そりゃどうも

 余計な言葉言って去るルナフラワード。

「あ、ルナさん行っちゃうの?」

「今日は楽しかったわよ。また今度ね」

「また今度」

 悠飛もクールに見送る。

「よくわかんないけど、事件も解決したようだし。よかったね」

 彼方姉妹達は沢村刑事の車に乗り込んで鬱蒼とした森から抜け出した。



「ねぇ、琉嬉姉?」

「何?」

「ルナさんとはどういう関係?」

「関係って…まぁ前にいろいろ…ね」

「えー、そこが知りたい~」

「わ、私も…」

 莉音も話に入ってくる。

「うっさいなぁ……。簡単に言うと、僕がお寺の退魔の仕事を手伝った時にある妖怪退治の時に出会ったんだよ」

「へぇ…その妖怪ってルナさん?」

「違う。それは別の妖怪。てか、アイツ妖怪なのか…?吸血鬼って妖怪?」

「…そうなんじゃないの?」

 悠飛が答える。

「……その妖怪の中に混ざっていたのが、ルナフラワード。

ただ、あっちはあっちでなんか目的あって入り込んでたらしいんだけどね」

「…入り込んでいた?どういう事?」

「知らん。妖怪の世界にもいろいろあるらしくって…なんかスパイみたいな事してたらしいよ」

 スパイ行動。

妖怪の世界も大変なようだ。

「じいちゃんがまとめてやっちゃえって話になったから僕もやろうとしたけど…アイツとたまたま戦闘になったって話だけ」

「へー」

「別に…ルナを退治するとかじゃないけど。運が悪かったんだよ」

「なるほど…」

「強かったの?」

 琉嬉はスマホの画面を見ながら、話を続けた。

「強かった…のは確かだけど、途中で目的達成したらしくて先に逃げちゃった」

「ふぅん……」

「まさか、こっちにいたって事は案外近くに住んでるっぽいなぁ」

 実は言うとあまり素性を知らない。

知っているのは、ルナフラワードのフルネームが「ルナフラワード・バルストゥエム」という事くらい。

バルストゥエムという名前の家があるらしい…という他以外は全く知らない。

いや、調べようと思えばすぐ分かる事なのだろうが、敢えてしてないのだ。

…敵に回したくない。

そういう人物の一人だから。

「…吸血鬼ねぇ……。同じ吸血鬼でもいい迷惑だったろうに…」

「え?」

 琉嬉の意味深のような発言。

いや、単に深い意味はないのかもしれない。




 ある森奥の少し開けた場所。

周りは木々ばかり。

近くには牛舎などある。

小さな小屋、大きめの一軒家らしき建物。

そして近くに大きなお城みたいな、いかにも怪しげな洋館がある。

ルナフラワードはまるで洋館のような自宅から外の風景を覗いていた。

「彼方家ね…本当楽しい子らね」

 微笑みながらそっと暗闇の部屋の中へと姿を消した。


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