表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふかしぎ真霊奇譚  作者: 猫音おる
第二章   ~生徒会怪編~
12/92

#12 ふかしぎな生徒会

あれやこれやで6月も終わりに近づいてくる。

お寺へなぜかお泊まり会となったし、手がかりになるような話もなかった…とは言い難い。

炎良の祖母に当たる、彼方柳樹の日記帳。

これにいろいろ退魔師として戦ってきた妖怪などの経緯などが書かれている。

琉嬉は何気なく読んでたところ、気になる箇所を見つけた。

「…妖怪と言われるモノは人間と同じく、その時代によって新しい存在、力を持ったあやかしが作り上げられる。ふうふむ」

「お前様♪何を読んでおるんだ?」

 ぴょこんと、琉嬉の目の前に座り込む來魅。

「いや、うちのじいちゃんのばあちゃんの日記だって」

「ほほぅ、それは私を封印した者のかの」

「……あー、そうだったけ?來魅にとっては憎い相手になるんじゃないの?」

「はは、そんな気はもうないぞ。それに、その相手はもういまい」

「それはそうだけど…」

「お前様が気にするな。私は命があっただけでも嬉しいものだ」

「……命がって…相当な戦いだったんだろうね…」

 とても悲惨な戦い…だったのかもしれない。

そんな気がしてきた琉嬉。

「がしゃろくろ…については特に記述はないけど…、人の怨念により妖怪化するのもある…って書いてる。

しかし……ざっくばらんとしてるなぁ…面倒くさがり屋だって言ってたなじいちゃんは…同じ血を感じるよ」

「ほほう?そうなんか。しかし…」

 來魅はじっくりと琉嬉の方を見る。

「な、なんだよ…そんなにみつめて」

「いや、似てるといえば似てるのう」

「え?」

「お前様が私を封じた彼方の者に」

「そうなの?……写真は残ってるのはもうお婆さんになった画像しかないしなぁ。柳樹さんの」

 目をつぶってしばらく過去の記憶を思い出す來魅。

「ふむ。その眠たそうな目つきはそっくりだの」

「…誰が眠たそうな目つきなんだよ」


 ぺしっと可愛い音が聞こえた。

「なんの音…?」

 琉嬉の部屋の前を通りかかった悠飛が偶然聞いていた。



「朝からコントかよ…まったく…」

「何か言った?琉嬉ちゃん?」

「あ、いや…」

 授業開始前。

クラスメイトのみなっちに独り言をツッコミ入れられる。

ついつい独り言のように、口に出してしまう。

こんな賑やかな環境が今までなかったから、どうも不満事を言ってしまうのだ。

(分かってはいるんだけどね……)

「おー、お前らー。今日は最初の時間は全校集会だー」

「全校集会?何のだよ…?」

「さぁ?」

 渋々みんな廊下に出て並び始めて、そのまま講堂へ向かう。

どこもそうだが、こうやってゾロゾロと向かう姿は滑稽だ。




「…であるから…して…」

 これから沢山ある行事などについていろいろ校長らが話す。

近いうちに体育祭がある。

鞍光高校には年に二回の大きな運動行事がある。

まずは6月中旬に陸上競技などの体育祭。

そして9月の頭、つまり夏休みが終わった後にすぐ球技大会がある。

球技大会は年度によってやるスポーツはある程度変わる。

今年は野球をメインだそうだ。

といっても野球だけじゃなくても、サッカーなど余りが出ないように全員参加出来るようだ。

詳しくはまだ正確には決まってない。

体育祭のために生徒会も忙しくなるらしく、寧音もあんまり部活に顔出せないと琉嬉に話している。

琉嬉は來魅に言われた眠たそうな目を更に細めて眠たそうな表情を加速させていた。

「むー。眠くなる」

 そして次の人物だった。

生徒会長の宮森まどかが壇上にあがる。

(……生徒会長…宮森…まどか…あいつ本当に会長だったんだ)

『えぇと、皆さんおはようございま『ゴンッ』あいたぁ~』

 講堂内が一気にドッと笑いが起きる。

(まじかよあいつ…ドジっ子属性だったのか…)

 まどかが挨拶と同時にマイクに額をぶつけた。

お約束…とも言える、ドジっ子ぶりをみせつける。

「あははー、会長さん面白い~っ」

 一年生の方から大きい声が聞こえる。

多分、聞き慣れた声からするとみゆの声だ。

普段から大きな声で喋るが、声質のせいなのかここまで通って聞こえた。

そもそも場所をわきまえないで発言するのが多いが。

『すみません、まだ不慣れでして…ええと、なんでしたっけ』

 壇上のそばにいる、他の生徒会メンバー。

副会長の龍翔が一所懸命何かを言っている。

『ああ、そうでしたね。ええと、今月…来週には体育祭があります。生徒会一同頑張って皆さん盛り上がっていきましょう~。

それと……』

(あいつの喋りは余計に眠くなる……おっとり娘め…)

 普段から醸し出しているふわふわな雰囲気。

喋りもまた、ほわほわしてて眠気を増長させる。

なんていうか、声もふわりとしてて可愛らしい。

琉嬉はうつらうつらとしていたがついに耐え切れなくなり、眠たそう目がついには閉じてしまった。

そのまま器用に立ったまま寝てしまった。



「はっ!ここはどこだ!」

 ガバッと顔を上げキョロキョロ見回す。

自分の教室で自分の席だった。

そして……ベシッと頭に衝撃が走った。

「?!?!」

 顔を見上げる。

するとにこやかにした桜川先生の顔が。

「彼方さん~?授業中じゃなく、全校集会でも寝るなんざ…いい度胸してますなぁ?え?」

 桜川先生が丸めた教科書で琉嬉の頭を叩いたのだった。

顔はなぜか笑顔だが、目は笑っていないのが分かる。

「???」

 事態が飲み込めない琉嬉。

言葉も発する事なく目が泳いでる。

「まったく…これで成績悪かったらもっと怒ってるところだけど…上位だから許してやる」

「……おおぅ…それはどうも…」

「誰が連れて来たと思うんだまったく…軽かったけどな」

「か、軽いとか…言わないでください…」

 ワハハと教室内が笑いが起こる。

「しかし…転校初日から問題起こしたり…さすがの先生も心労が…」

 クドクド愚痴る。

(……恥ずかしい…)



「琉嬉先輩…たしかに軽そうですもんね」

 御琴が何やら紙に何かを書き込みながら会話している。

部活経費の用紙らしい。

0を書き込んでる。

「うるさいな…それは遠まわしに僕が小さいってコトだろ?」

「いーじゃんいーじゃん、ねえ?軽いって言われるのは女の子にとっては嬉しい話だよ?」

「護は重たそうだもんねー?」

「う、気にしてるのに…」

「何キロ?」

「……5、50キロぐらい…」

「本当に?」

 じーっと護の目を見る。

嘘くさい目をしている。

「うっさい!54キロだ!文句あっか!」

「………御琴。重いのそれって?」

「…普通だと思いますよ?」

 いつになく冷静な御琴。

女子だらけの空間に慣れてきたようだ。

「普通より軽い方がいいの!これはあれよ!筋肉、そう筋肉!」

「護先輩…たしかに体の締まり具合良さそうですもんね」

「なんかそれセクハラに聞こえる…」

 最近返し方が強くなってきた御琴だ。

「僕より20キロぐらい重い…」

「なんです………と…?」

 琉嬉より20キロ重たい。

衝撃の発言に護が固まる。

「琉嬉ちゃん何キロなの…?」

「前測った時は……32ぐらい?」

「……冗談でしょ?軽すぎ……いや、小さいから別におかしくないのか…?」

「逆に僕も聞くけどな。スレンダーな体つき割には多いようにも感じるし…やっぱその胸か?胸なんだな?!」

 突然護の胸を両手で掴む。

「ちょ、ちょっと…!琉嬉ちゃん…そんなに気にしてるの…?てか触らないで…」

「自分に無い物が気になるのは当然だろう!」

 首だけ御琴の方へ向ける護。

琉嬉は護の胸を触りながら胸と睨んでいる。

「…この状況何…?」

「僕に言われても…困りますよ」

 こういう時に限ってみゆがいない。

掃除当番だかなんだかで少し遅くなるらしい。


「それにしても会長には笑わせてもらったね」

「頭ぶつけるだもんー」

 みゆも合流し、いつものグダグダ会議が始まる。

「生徒会は忙しいらしいですね。寧音先輩が来れないみたいです」

「そっか~、残念」

 などと会話を続ける。

部員達の会話を余所に琉嬉は資料を保管してる引き出しのとこで立ちながら何か見ている。

「琉嬉ちゃん、何やってるの?」

「んー。学校の見取り図みてた」

「見取り図?またそんなのどこで…」

「ん」

 琉嬉が左手の親指を生徒会室の方を指す。

「…もしかして寧音ちゃん?」

「いえす」

「でもそんなの見てどうするんです?」

 みゆが琉嬉の頭上から覗き込む。

琉嬉が小さいから軽々と頭の上から覗けた。

「お前なぁ…。んーと、僕はまだ校舎を把握しきれいてないし…あと旧校舎の話を調べてた」

「旧校舎って…すぐそこのですか?よく霊体が出入りしてますよね~?」

「前から?」

「それは知りませんっ」

 知らないという言葉をビシッと気合入れて言う。

変な態度が意味不明だ。

「……お前に聞いた僕が馬鹿だった」

「えへへ」

「褒められてないぞ」

 ぽふっとみゆの頭を軽く叩く護。

護が聞いただけの噂について喋る。

「琉嬉ちゃん、私もよく知らないんだけどさ、旧校舎ってのは祟られるから放置されてるって噂らしいよ?」

「祟られる?」

「そー、祟りじゃー!ってヤツ?」

「脅かさないでくださいよ…護先輩」

 なぜかびびってる御琴。

「祟りねぇ…よくある話だけど…」

 祟り。

神仏的なものや怨霊などがその相手に厄災を起こすという、いかにもやばそうなもの。

旧校舎を取り壊そうとすると祟りがあると恐れられているという。

「…噂に過ぎないとは思うけど…あたしらの世界じゃよくある話じゃない?」

「ま、そうだね。うちもそういうのを対処するために生きてる家系だし」


「で、どーすんの?ふかしぎ部は旧校舎でも探索する?入ろうと思えば入れるけどバレたら…やばいよー?」

「てかさ、あの夢の内容と、鳴神柚羽が言うのが本当なら旧校舎が合致するんだよなー」

「へ?なんで?」

「柚羽は、がしゃどくろを旧校舎に封印されているって言ってた。その封印されてるのが10年前」

「10年前…そんな昔じゃないよね?」

「旧校舎の取り壊しの話があったのは…今から20年も前の話」

「へぇ~…。え?でも…それだと時間軸に矛盾がありません?」

「そう、その通り」

 10年前に封じられたがしゃどくろ。

でもそれ以前から祟りの話があったという。

「うーん、実に不可思議な話だねぇ~」

「ひょっとして…がしゃどくろ以外に何かいたんじゃないか?説」

「ほへぇ」

「それと、ずっと術者がこの地にいるって話だよね?僕ら彼方家もそうだけど」

「うん」

「ようするに…來魅と同じレベルの妖怪を封印してたんじゃないかな…この鞍光に」

「なんと!」

「一体は來魅で…、もう一体はがしゃどくろ。いや、がしゃどくろ以前の妖怪か何か…を」

「……ていうと?」

「五大家じゃなくって……他の名家…が中心に」

 琉嬉のひとつの過程の推理。

五大家が勿論來魅を封じたのは間違いない。

だがそれより知名度がかなり劣る名家達が別に同じように封じた可能性がある。

名家の出身である、まどか達が同じようにして動いてるのではないかと推測する。

正直言って、あの柚羽も全部知ってる内容を話してるとは思えない。

「こればっかりは警察も知らないだろうしなぁ…。妖怪絡みの資料が残ってそうなのは…」

「耿助さんの所?」

「最近忙しいみたいで中々来れないみたいなんだよね…でも連絡はしておこう」

「あんまり進展しないねぇ」

 机に座ったまま足をブラブラさせる護。

「あんまり足動かすと下着見えますよ」

「お、なんだい?御琴君見たいのかい?」

「……僕はただ、注意を促してるだけで…」

「風紀が乱れてます!芹澤さん!」

「へひぇ?!」

 いつの間にか居た寧音。

「あれー、生徒会の方は終わったんですか?」

「終わったも何も…まだこれからですよ」

 と言いつつ、空いてる椅子に座り出す。

そして手はお菓子に伸びる。

「…サボり?」

「休憩と言います」

「休憩という名のサボりってやつだね…寧音って見かけによらず手を抜く時はとことん抜くよね」

「そ、そんな事ありませぬっ」

 動揺が取れる言い方だった。


「てかなんで、寧音はいつも敬語なの?」

「いや、それは…まだあんまり親しき仲ではないというか…」

「僕らは同学年。こいつらは学年下の後輩。タメ口でいいんだよ?」

「…しかし…」

 さらに動揺する。

「じゃあ、こうしよう。敬語を使わないようにしたら僕に抱きついていい」

「え?しかし…それは…いいですね…その考え…」

「ほら、もう敬語だ」

「…じゃあ、遠慮なく琉嬉さん。抱きつかせてもらう!」

「わぷっ!正面からはやめろ!」

「可愛い~」

 その様子に呆れる他の部員達。

「な、何この状況…?」

「さあ…?」




 ふかしぎ部のメンバーは旧校舎付近まで来ていた。

少し荒れた状態。

それが不思議に思ったみゆが地面や折れた木の枝などを見逃さなかった。

折れた木の枝を眺める。

「…こんなに荒れてたっけ?」

 枝を拾ってはぽいっと捨てるみゆ。

「さぁ…ここはあまり居心地良くないんで来ないよ」

「うーん…」

「なぜでしょうね?」

 琉嬉と寧音だけはその詳細は知っている。

が、知らんぷりする琉嬉。

ちなみに寧音は生徒会の方へ戻ってる。

「……さて、ここにいてもしょうがない。戻ろっか」

 何やら焦ったように琉嬉が言い出す。

「琉嬉ちゃんどうしたの?もういいの?」

「うん、大丈夫…ははは」

「変なの~」

「怪しい……」

 目を光らせる護。

何かに気づく。

「なんかあったんでしょ?ここで」

「ないないないない」

 懸命に否定する。

つまり何かあるという意味にもとれる。

「教えなさぁい?」

「気持ちわるいよ…護」

「ちぇ、なんだよせっかく大人の色気を出してやったのにさ」

「なーにが大人だよ…」

「護先輩ってぇ、スタイル抜群ですけど…顔は結構幼い感じですよね?」

「んな、気にしてる事を~このにぎやか娘が~ッ」

「あひぃぃいはいいはいいはいふぇふう」

 みゆの両ほっぺを引っ張る護。

(…割と童顔なの気にしてたんだ…)



 どうせ日中に来ても意味がない。

来るなら深夜など、人の気配がない時だろう。

そんな事を考えてながら琉嬉は部室に戻る。

ただ、旧校舎周りに立ち入っても特別大きな力は感じない。

時折現れる霊体が旧校舎の建物の中に入っていくのは感づいている。

何かが引き寄せてるかのように。

(……今は動くべきじゃないな…誰か見てる)

 何かの視線を感じ、おとなしく引き下がるふかしぎ部。

誰かが監視してるようにも思える。

一通り通れそうな所だけ通って見たが、監視カメラみたいなのもない。

ただただ、異様な雰囲気と空気感。

そこそこ気温が高くなってきてるのに木々の影のせいかひんやりしている。

(祟り……か)


 部室に戻り、進展もないまま琉嬉達は帰宅の準備を進める。

「あー、この学校って…水着って指定の?」

「そうだよ?琉嬉ちゃん水着買ってないの?」

「…水泳の授業あったよな…面倒だ」

「ねえねえ、夏休みに海行きましょうよ!海!うちの別荘で!」

 突然みゆがテンション上げて言い出した。

「海?」

「別荘?さすが大金持ち…」

「ふふん、どーんと任せたまえっ」

「海たってなぁ…僕、水着ないぞ。いや…あるけど…」

「あるけど?」

「小学生の頃の。」

 全員静まり返る。

「つまり、それでまかなえていた…と?」

「……」

 コクンと無言で頷いた。

誰も突っ込まない。

琉嬉が本気で怒りかねないからだ。

「じゃ、じゃあさ、今度の休みの日に水着買いに行きましょう?」

「そうそう、あたしも新しいの欲しかったし」

「ね?みこっちゃんも?」

「なんで僕まで?」

「うーん、考えておこう」

 水着を買うだの変な話が飛躍しているが、この日はおとなしく帰ろうとしていた。

―――が。


 事件はすぐやって来てしまった。




 部室を出た瞬間、他の部員達の姿がない。

不気味なくらいの静寂。

音も聞こえない。

(……幻術…か?)

 急激な変化に警戒する。

「………これ使えば…解けるだろうけど…いやしかし…」

 琉嬉は空気の流れが違うのに気づいた。

「風……?どこから…」

 ふと、部室に戻り窓の方を見る。

開いている。

閉めた筈が、開いている。

「…理解したよ」

 誰かが、窓から出て行った。

そうとしか考えられない。

(そういや僕もこっから出たっけな。あん時)

 龍翔が仕掛けた時は窓から飛び降りた琉嬉。

「んー、みんなどこ行ったんだか……」

 何となく察してはいる。

「この術は……妖怪…?いやしかし……」

 琉嬉は部室から再び出ていて廊下に出る。

生徒会室も物音がしない。

誰もいないようだ。

というより、いないように感じてるだけかもしれない。

少しその場から離れるように動く。


「誰もいない……ここまで大きな術を作れるのは大したもんだね…こりゃ」

 何が起きてるのかさっぱり。

(……迂闊だった。なんで早く気付かなかったんだろ…いや、気付く筈がないんだけどね…)

 そう。

琉嬉は確信する。

「敵」はすぐ身近にいたという事をだ。

「さて……どういう訳かな?生徒会長さん?」

「あらぁ、全てお見通しでしたか?」

 廊下の曲がり角から姿を表す生徒会長の宮森まどか。

「……僕には半端な幻術は通用しないよ」

 そう言いつつ琉嬉は後ろを振り返る。

そして、突然現れた槍のような巨大が刃物…いや、槍だろう。

その槍を防御壁で防ぐ。

「危ないなー」

「半端な攻撃は通用しない…そのようですね」

「…笑顔の割にはエグいんですね、会長さん?」

「はぁい。それが私のモットーですから」

「何故狙う?」

「……聞きたいですか?」

「聞きたいねっ!」

 琉嬉から次は攻撃を仕掛ける。

沢山の御札を投げつける。

無論、簡単に通用するとは思ってない。

これまで幾多の術者に弾かれてるのだから。

「ふふ、いいですよ。お答えしましょう」

 まどかの右手に槍が現れる。

(…!さっきの槍?そういう事か!)

 槍をひと振り。

御札は衝撃波みたいな物で吹き飛ばされる。

しかし御札は飛ばされても矛先は変えずに飛び回る。

「…そんなに一辺に操れるんですか…凄いですね」

「それはどーも!」

 突進して飛び蹴りを放つ。

まどかは槍でガード。

「てぇい!」

 まどかの足元から大きな霊気の柱が飛び出す。

命中はするが、大きなダメージはないようだ。

「危ないですね…」

「へぇ…(まともに当たったのに…微量な霊気でダメージを抑えてやがる)」


 攻防は続いた。

場所が狭いため、不利に思ったのかまどかは窓から飛び降りた。

琉嬉も追いかける。

あっさり引く態度に罠かも知れないと思いつつ追いかけた。

「さてさて、そろそろ答えてもらおうか?」

「単純ですよ。あなた方を旧校舎に近づけないためにです」

「…そうかい、やっぱり」

「ええ」

 こんな状況でも笑顔だ。

「妙だね。他の部員達はどこやったのさ。多分大丈夫だとは思うけど」

 まどかは攻撃を一旦やめる。

その答えを言う。

「私の幻術で、私と琉嬉さんだけを結界内に封じ込めました。他の方は私達の姿を見る事は出来ないと思います」

「へぇ……割とセコイ戦法で来るんだね」

「ええ。真正面からやったらあなたには勝てませんから」

 ニヤッと普段への口の琉嬉が笑う。

「じゃ、もうひとつ質問。なぜ僕を狙う?」

「危険だからです。旧校舎に近づくのはやめて欲しいのです。

あなたも見たでしょう?私達とほとんど変わらない実力を持った鳴神柚羽さんの状態を」

「………そうだね。死にかけたって言ってた」

「実は、私達以外の術者達があの場所に行っています」

「………」

 琉嬉はおとなしく聞く。

だが手に札を持ち、警戒は怠らない。

「その筋の人間、つまり、日本霊術会の人達やこの学校に居た、同じような生徒達も」

「……」

「いずれも結果は柚羽さんのように、命を落としかけた者や…実際に落とした者も」

「…………それは、この10年間ずっと?」

「そうです。封印されてると言っても、いずれ解ける封印。

封じてる間に倒そうと試みますが、それでも無理なんです」

「…はっ、それは名家の仕事としてか?」

 挑発するように言う。

「名家だからこそ…ですね。誇りと言うのでしょうか」

「だから、僕ら五大家の人間や関係ない人を近づけさせないため…?」

「そうです。ですが、それはあくまでも表向きの…今までやってきた人達の考え」

「…ここからはまどかの考え?」

「そうです。私「個人」の考えで…あそこに近づこうとしてる人を止めます。力ずくで」

 まどかの前の代の霊術師達もこの学校に在籍していた。


「………それでこの幻術も?」

「はい」

「…そんだけの身体能力と幻術などを使うとか…あんた相当だね」

「褒めて貰えて光栄です」

 過去にも旧校舎をどうにかしようとする人間達が居た。

しかし、それはことごとく潰されていったという。

そんな犠牲も出さない為にも今は極力関係ない人間や、力を持つ人間を近づけさせない。

そのために動いてるという。

それは、まどか自身、個人的に動いてる事。


「面倒くさいね…、だったらちゃんと組織として動いたら?寧音も勝手に動いてるみたいだし」

「…そうですね。ふかしぎ部みたいにきちんと組織として作ればいいのでしょうけれど…私は生徒会ですし」

「……それも表向きの発言だろ?」

「…本当に琉嬉さん。あなたは面白い人です」

「普通とは違うねとは言われるけどね」

尚も笑顔を崩さないまどか。

どれだけ落ち着いてるのだろうか。

「お前さんは……優しい人だ。怖いくらい。

幻術で僕だけ結界に飛ばして、他に人間や他の生徒会を巻き込まないようにしたんだろ」

「ええ」

「内心僕がやってる事が気に食わないだけだろ?」

 ズンッとまどかの心にのしかかってくる見えないモノ。

表情が流石に、変わる。

核心をつかれたのか、笑顔を取りやめる。

「あなたとは、分かり合えそうですねっ」

 言葉と同時に、攻撃を放つ。

「気孔芯!」

「おわっ!」

 槍から少し離れてても斬撃のような衝撃波が広がる。

間一髪避けたが、命中した地面は綺麗に切り裂いていた。

「くっ…槍が厄介だね…リーチが長い(あれは…霊具の一種か)」

 霊具。

物質力があるが、自らの霊力で具現化する特別仕様の道具。

契約してしまえば、霊力が乏しい者でも扱える危険とも言える道具。

まどかは槍を霊具として扱っているようだ。

(ふむ…肉弾戦では敵わないか…くそ、いつもこんなんじゃん僕…もっと体術鍛えようかな)

 少しサボリ気味だったのが身に染みてくる。

「なら…これで」

 一撃必殺。

大きな霊力を込めた御札をまどかに放つ。

「龍神符!」

「これはこれは…強力そうですね」

 避けようとするが、それが追尾してくる。

「…こんな大きな霊力の塊が…さすがですね!」

 ガード体勢を取り、命中する。

ズドンという大きな音が鳴り響く。


「これでやられるハズないよね?」

 琉嬉は一瞬の隙をついて爆風の中を駆け抜ける。

「…フフ」

 大きなダメージを負ってないようだった。

しかし琉嬉の掌底がまどかを狙う。

「そうはさせませんよ」

 槍を盾にして攻撃を受け流す。

「うお?!」

 受け流したと思ったら、ぐるんっとまどかが一回転して、槍を器用に斬りつける。

「くっ!」

 琉嬉の右腕当たりに当たる。

血が飛び散った。

「やるね会長さん」

「………彼方さんも、素晴らしい動きです。ですが…」

 槍が光りだした。

「…とどめってやつかい?」

「なぁに、死にはしませんよ」

 琉嬉はゾクッとした。

笑顔の裏は恐ろしい程の殺気があるのを。

もしかして…こうやって力づくで近づく者を倒してきたのだろうか?と。

でも考えるのはすぐやめた。

「風縛」

 槍から放たれた光が琉嬉を包む。

「…まじかい」

 動きが封じられる。

手足がまったく動かない。

顔は動かせるが、それ以外は動かすことが不可能だ。

「申し訳ありませんね、彼方さん。しばらく寝てもらいます」

 無慈悲にトドメの一撃を放とうとするまどか。

槍を風が纏う。

風の力を利用した、強力な一撃を。

「おやすみなさい。彼方さん」

「…………」

 キュイーンと耳鳴りのような音が突然聞こえだした。

「……これは?!」

 地面が光り輝いている。

「…彼方さん?」

「ごめん、まどか。お前さん何か焦ってるようだったから、うまくいったようだよ」

「……ふふふ、やりますね…」

 地面には半径10mくらいの円が出来ていて光り輝いていた。

「霊法陣…ですね。いつの間に」

「勿論戦いながら」

「つくづくあなたという人は……」

 まどかの動きが止まる。

自分の纏っている防御用の術と相殺してるようで、身動きがとれなくなってしまってる。

「僕の本気…これで何度目だろう。まったく……こんなに死にかける事は今までないよ。

この学校に入ってから」

「でもそちらも動けないでしょう?どっちの術が先に解けるか…」

「いーや、こっちが先に解けるね」

 左腕の数珠がない。

動きを封じる前に外しておいた。

「真霊気……使わせてもらうよ」

「しんれいき…?」

「少し術を練るのに時間がかかるんだ。おかげでヒヤヒヤしたけどね」

 琉嬉は両手からまばゆい光を放つ。

「くぅ…?!」

 目も開けてられないくらい光。

その光が琉嬉とまどかを包んだ。




 異様な空間から抜け出した。

カラスの鳴き声が聞こえる。

リン…と、鈴の音も聞こえた。

琉嬉だ。

腕を抑えてる。

血は出ていない。

自分の治癒術で回復させた。

だが切り傷が残ってる。

「あーあ、制服が……縫えば大丈夫かな?」


 校舎に戻ってきた琉嬉。

生徒会室にいる。

時計は夜の7時半。

「そろそろ見回りの先生が来るぞーまどか」

「ひゃうっ」

 買ってきた缶ジュースをまどかの頬に当てる。

その勢いで起きた。

「あれ、私は…一体?」

「ぶっ倒れた。僕の真霊気を浴びて。多分思うように霊力を思うように使えないと思うよ」

「……そうですか。私は負けたのですね」

 しょんぼりするまどか。

「負けたというか…引き分け?」

「え?」

「僕が先に目を覚ましたけど…一時間近く倒れてたみたい」

 琉嬉が真霊気を放った。

それもほぼ全力で。

咄嗟だったとはいえ、あまり効果がなかったら敗北必死だからだ。

ただ、使いすぎて琉嬉もその場に倒れ込んだ。

「………何故です?真霊気ってなんなんですか?」

「あれ?知らないの?」

「私が知ってる情報は、相手を一撃で葬りさる超強力な霊撃だとしか…」

「あー、その程度ね。ま、あんまり使われてないみたいだし。説明すると…彼方家だけに伝わる、反則級の力」

「…さすが五大家ですね」

「……やっぱりその辺意識してる?」

「それはしますよ。五大家は特別な力を持つ一族。それに比べて名家は所詮、「ただの強い力を持つ霊能力術者」ですから」

「…そうか?僕は直系だけど本家側ではないし」

「?」

 説明が面倒になりそうなので、ここは端折った。


「他のみんなは帰っちゃったのかな」

 携帯を調べる。

すると、やはり姿が見えなから先に帰りますね~、というみゆの発言があった。

「まったく…何がしたかったんだよ?まどかは」

「…だから、彼方さんが言ったじゃないですか?ただ気に食わなかったって…」

「……今はそれすらも嘘くさく見えるけどね」

 いつもの笑顔のまどかに戻っている。

少しだけまどかの本心が見えた…気がしたが今はどうも怪しく見える。

(…腹の探り合いはコイツには勝てないな…)

(…叉羅沙さんにも見せてない本心…流石私が認めた人です)

「ん?」

「どうかしましたか?」

「…いや、それより話を聞きたくってね」

「旧校舎の事ですか?」

「そうだね」

「…知る限りでは、私達名家が封じたのはたしかです」

「倒せなかった理由は?」

「現存の術では通用しなかったからです」

「…どんだけ強いのさそれ」

 詳細を語るまどか。

手には先程琉嬉が買ってきた炭酸入りのジュース。

ここらでしか売ってない地域限定の炭酸飲料だ。

(しかし……まどかって…結構可愛いな。ちっ。少しスタイルいいからって…。背も高いし胸も大きいしムチムチした太ももとか…

って僕何考えてるんだ?どこかのスケベオヤジかっちゅーの…)

「どうかしました?」

「あ、いや、続けて」

「知っての通り、柚羽さんは今まで封じされてた妖怪を強く知りませんでした」

「…それで?」

「理由を知った柚羽さんは、封印を解ける前に倒すために旧校舎に行ったんです」

「ちょっと待った。強く知らなかったってどういう意味?なんで柚羽も名家だろ?」

「人柱って知ってます?」

「……生贄みたいな物?」

 人柱。

今では違う意味で使われているのが多いが。

「ええ、近いかもしれませんが…大昔に行われていた行為ですよ。

単純に言えば、建造物の基礎に一緒に埋められる人の事です。

災害などで壊れないように祈願の意味を込めて、人間を一緒に埋め立ててしまうという…残酷な話です」

「まったくだね。その人柱が関係あるの?」

「妖怪を封じる為に、自らを犠牲にして封印をしている人間が居るのです」

「…そうでもしないと駄目だったの…?」

「ハイ。そうでもしないと…自らの霊力で封印の力を強くしてるらしいです」

「……それってもしかして」

「柚羽さんの…鳴神家の人間です」


 人柱になっているのは鳴神家の人間。

胸が締め付けられるような感覚に陥る。

「…柚羽はそれを引き継ごうとしたのか?」

「……それを止めようとしたんですが遅かったんです」

「返り討ちにあって…って事か」

 柚羽の大怪我の元は自分自身で話してたのとは同じようだ。

「人柱って…つまり代々…?」

「おそらくそうです。ただ、術が失敗して、なんとか生きてはいたんですが」

 柚羽はおそらく、人柱なるべく向かったらしいとの事だ。

運が良かったのか悪かったのか。

その術がうまく作用しなく、失敗したリスクでの大怪我だそうだ。

「…封じの術が効いてるのはその人柱としての術と…あと一個引っかかるんだよな…」

「…想像の通りだと思います」

「参堂耿助…さん」

 まどかは笑顔で頷いた。




「知ってるんなら話してくださいよね。耿助さん?」

 琉嬉とまどかは耿助を呼び出して、学校近くの大きな公園にいた。

状況を軽く説明すると、すぐに来てくれた。

「いやはははは、いずれ話そうとは思ってたんですよね~」

「……えいっ」

 げしっと耿助の脛のあたりを軽く蹴る。

「あたたた…すみません。本当に。でもまさか…來魅さんが封印解けたのと同じ年に封印が解けそうになるとは

思いもしませんよ」

「完全に來魅の方は計算してなかったくせに」

「…アハハ、そうですよね?正直來魅さんの件については大昔過ぎてスルーしてたんですよ」

「分からなくもないけど…がしゃどくろの方が最近の話だから?」

「考えてもみてください。10年前は僕も君達と同じ15、6歳ですから…、というかこちらに住んでませんでした」

「まぁそうだよね。10代の若造があれやこれや出来ないもんね」

 まどかと顔を見合わす琉嬉。

まどかは眉を一つ動かさず笑顔だ。

「………ある意味ポーカーフェイスだねあんたも」

「いつも楽しそうですねとは言われます」

「…で、耿助さんも参堂家としての力を使って封じてるの?」

(あ、彼方さんにスルーされちゃった)

「一応、そうですね。ただ…霊磁場が強すぎて結界の力が薄れてきてしまうんですよね。あの学校は…」

「ふむ…」

 強力な霊磁場が出来てるという。

「時間がないんですよ…。このままでは封印が解けてしまう。

だから時間を稼いで……対処する方法を考えてます」

「…それなら日本霊術会を頼れば…」

「倒せるのなら既に倒してる筈です」

「あー、それもそっか。だから封印してるんだ」

「でも……彼方さん。その真霊気ていうのを使えば…」

「だめだ。今使っても封じてる結界を無効化するだけだ。その後が保証出来ない」

「そうですか…」

「結界だけを無効化するだけになるんですか…それは困りましたね」

「ただでさえ、参堂家の力の封印術と人柱うんぬんでしょ?何が起きるか分からないよ…?」

「たしかに…」


 真霊気でまるごと破壊でもすればいいのか。

だがそんな事したら後始末が大変だ。

さすがに沢村刑事の方で警察の方を抑え込むのも難しいだろう。

「…いや、焦らなくても大丈夫。まどか」

「はい?」

「お前もふかしぎ部に入れ。話はそこからだ」

 まどかは笑顔のまま止まる。

そして首を横に傾げて、琉嬉の発言を理解した。

「…なんですと?」

 聞き返す。

「ぷ、ふふふふ。まどかのキャラらしくない発言…あはは。もう一度言うよ?ふかしぎ部に入ってくれ」

「で、ですが、私は生徒会としての…」

「部屋が隣同士だから問題ない!寧音だって入ってくれたんだ。僕らが力を合わせれば…解決出来ると思うよ?」

「………はぁ」

 さすがにぽかんとする。

耿助はそれを見て笑ってるだけ。

場を楽しんでるようだ。

「面白いですよ~?ふかしぎ部は。僕も無理をしてでも顔を出すようにしようかな?」

「…まあ、楽しそうではありますが…」

「決まり!じゃ、入部届…これ」

 上着の内ポケットから取り出した入部届の用紙。

くしゃくしゃになっている。

「…いつも持ってるんですか?」

「間違って御札に使いそうになるけどね。よろしく!」

 そして琉嬉は入部届の用紙をまどかに渡すと帰って行った。

二人残された。

「相変わらず切り替えの早い子ですね~」

 耿助が手帳を出して予定表を見ながら言う。

「…本当、面白い方です」

「実はですね、來魅さんの時もあんな風に切り替えが早くて來魅さんを自宅に引き入れたんですよ」

「……なるほど」

「彼女には絶対の自身があるようです。終息した後の事を、予測して」

「うふふ。彼女自身が「ふかしぎ」な人ですね」




 翌日の放課後。

琉嬉は珍しく笑顔気味だった。

「琉嬉ちゃんどうかしたの?」

「んー、なんだ護か」

「なんだって…一応部員なんだから…」

 ぷくっと膨れた顔をする護。

「これを見よ!」

 ばーんと机に散蒔くように置いたもの。

入部届。

それも4人分。

「入部届……?誰が…?」

 名前を見ると、全員生徒会の役員の名前だ。

「…何?オッケーもらったの?」

「そういうこった」

「わっ?!」

 護がビクッとしする

後ろにいたのは龍翔と寧音だった。

「あらまあ、龍翔君に寧音ちゃん」

「どうやって言いくるめたのかは知りませんが…他の生徒会の役員もふかしぎ部に正式に入部したようです。

あれこれ他の生徒から聞かれて面倒でしたよ……」

 疲れたようにして椅子に座り、机の真ん中に置いてあるお菓子に手がいく。

「そりゃそうだ。生徒会のほとんどがいきなりふかしぎ部に入部だもんな」

 龍翔も座る。

「へへん、これは僕の人徳のおかげです」

 無表情のまま親指を立ててグーポーズ。

(…やっぱり可愛い…琉嬉さん…)

「寧音ちゃん…大丈夫?顔赤いけど」

「いえ、だいじょうぶ!」

「…本当?」

 ゴホゴホとわざとらしく咳をして誤魔化す寧音。

「あれ…みなさんこちらにいましたか」

 生徒会室へと繋がるドアからまどかが入ってくる。

手にはなぜかペットボトルのジュース。

炭酸飲料のようだ。

「俺ら結局ふかしぎ部入部だとよ。ま、お前さんの意向なら仕方ないな」

「ふふ、これからはふかしぎ部として、彼方さん達と協力していきますよ」

「待った。まどか。僕の事は下の名前の、琉嬉と呼びなさい」

「うわー、出たよー琉嬉ちゃんの苗字じゃなくって下の名前で呼べ攻撃が」

「あっと、龍翔君もだよ」

「お、おぅ…」

「了解しました。琉嬉さん」

 ニコリと笑顔で返す。

(…いつの間に仲良くなったんだこの二人?)

 その場にいた全員が不思議そうな顔をする。


「あれー?生徒会の人達がいるー?なんでですか~?」

「あ、本当だ」

「ほんまやね」

 残りの部員達もやってくる。

「わっ、叉羅沙先輩…大きいんですからびっくりさせないでくださいよ~。てか後ろにいたんですか?

大きいのに気付かなかったです」

「…さり気なくヒドイ事言うんやな」

 後輩の言い草に少し凹む。

「やあ」

 琉嬉が手を挙げて挨拶する。

「…一気に大人数になりましたね…」

 さらに肩身が狭くなった気分になる御琴。

静かに端っこの椅子に座る。

「あとは…柚羽が元気になって退院してくれればいいんだけどね」

「そうですね」

 気になるのは柚羽の状況。

近いうちには退院出来るとは言っていた。

まだ痛々しい包帯姿ではあったのだが。

「取り敢えず……旧校舎の件だけど」

「おー、いきなりやねえ」

「え?旧校舎の件って何?」

 生徒会はともかく、他の部員達は詳しい事は知らない。

「んーと、旧校舎に來魅と同じくらいヤバイ妖怪が封印されてるって話」

「…來魅ちゃんと同じくらい…ヤバイ…?」

「そ」

 少しざわつく部室の中。

「柚羽の話はおそらく、本当の事で、10月の1日に封印が解かれる。それまでに、僕らが対処法を考えておかないといけない」

「…封印解かれる前に倒すのは?」

「それはリスクが高いので却下」

「えー?」

 残念がるみゆ達。

「無闇に封印を解いてみろ?現段階で対処法なかったら…死ぬよ?」

 まるで脅しのように言う。

少し静まり返った時に

「結界を解いた時点で柚羽さんは死にかけました。それ程の霊力を持ってるのです」

「耿助さん!」

「やあ」



 耿助は今までの経緯を説明した。

旧校舎の封じられている妖怪の事。

「ま、10月まで猶予あるし。柚羽が登校出来るようになってから大きな対策考えよう」

 琉嬉の一言でまとまる。

「ああ見えても普段無口で喋らないんだよね」

「…護。うるさい」

「へいへいー」

「あはは」

 笑いが起きる。



 帰りの道中。

琉嬉とまどかは二人で会話していた。

他の部員達とは、駅で別れてそれぞれの自宅方向へ。

しかし琉嬉はまどかを呼び止め、二人で会話したいと言う事にして駅近くの喫茶店に入った。

「まったく…私は何を勘違いしてたんでしょうね…」

「何を?」

「…私は琉嬉さんが旧校舎の妖怪の封印を解くのかと思ってました」

「まさか。さすがの僕も慎重に行くよ。そういうの早とちりって言うんだよ」

「そうですね…。私とした事が…、こうも焦ってるなんて」

「…同じ仲間があんな大怪我してるし、いろいろ焦る気持ちなんて出てくるさ」

「………」

 しばし無言になる二人。

少し重苦しい空気になる。

そして話し始めたのは琉嬉の方だった。

「ともかく、だ。僕らみたいな術者が何人もいるこの学校、この地域でまとまってないのは勿体なさすぎる。

かと言って、規律に厳しい組織化するとも言わない。

だったらみんなで楽しくやろうよ?せっかく学生なんだし?

だから僕は「ふかしぎ部」を作った。みんなで楽しくやりたいから。」


 楽しくやりたい。

ふかしぎ部を作った根底にはそういう部分もあった。

自分自身、寂しい小中学生活を送っている。

だったら、自分から動けばいい。

そう思ったからだ。

「……そう、なんですね」

 琉嬉の本音。

こうして簡単に本音を見せてくれる琉嬉に感心する。

「琉嬉さん…あなたは、気遣いが出来る優しい人ですね」

「褒めたって何も出ねーぞー」

「うふふ。私も先にこういう事してれば良かったかな~」

 景色の方を見て黄昏るまどか。

「お前さん程の人間だったら作ろうと思えば作れたんじゃないの?」

「いえ、リーダーは琉嬉さんが適してると思いますよ?」

「リーダーねえ…そんな柄じゃないんだけどなー」

「でもふかしぎ部はあなたが中心で回ってますよ。いや、学校自体がかも」

「昔からなんだよねぇ。前の学校でもどこでも有名っぽいんだよね」

「ふふ、でしょうねぇ」

 にやつくまどか。

いつもの笑顔とは違う、少し本気の笑顔。

「なーんかバカにされてる気がするー」

「さあどうでしょう?」

 落ちかけてる夕日の明かりが眩しい。

まどかはカップを戻す。

「さて、そろそろ帰ります」

「そだね。帰らないと來魅がうるさいし」


「ん」

 琉嬉が右手を差し出す。

「え?これは?」

「握手」

「なるほど。そういう事ですか」

 まどかも右手を差し出して握手をする。

(わ、手ちっちゃい…)

「これで僕らは「ふかしぎ部」として、正式に「仲間」だ」

「……なんていうか、琉嬉さんずるいですよね」

「ずるい?なんでだよ」

 不服そうに言う。

「その力といい、行動力といい、その可愛らしさといい…」

「最後のが余計な気がするけど、褒めてるんなら素直に受け取っておくよ。じゃ、また明日ね」

「ええ。明日」

 ぺこりとお辞儀するまどか。

そしてそのまま二人も帰路のつく。




「どうも腑に落ちない」

「何がだ?」

 來魅はずーっとパソコンのディスプレイと睨み合ってるかのように見ている。

「まどかのやつ…本心をまだ見せてないような気がする」

「まどか?窓?」

 部屋の窓を指さして言う。

「アホか。お約束のボケはいらないんだよ」

「ハッハッハ。冗談だ冗談。で、何か得たものはあったのかの?」

「…学校の生徒会長。宮森まどか……。あの女は強い。元の技量、動き、術力、人間ながら幻術も使う。

非の打ち所がない。

何より…あの精神能力」

「ほほぅ」

 多分、総合的に生徒会の中では一番強いんじゃないだろうか?

そう思うほどだ。

龍翔や叉羅沙はおそらくまだ全部の手の内を見せてないだろうし、寧音もあんだけ無茶苦茶な強さだったが。

全ての総合値は…学校の中でも上位…と考える。

「一番ムカつくのはあのほわほわ雰囲気とムッチリしたエロい体つきだ!あれは僕に対する宣戦布告だね!」

「よくわからんが…他の女子も大人顔負けのぷろぽーしょんだったのう」

「う………みんなそこの部分だけ嫌いだ!!」

 琉嬉が逆に気にくわなかったのはそこの部分であった。


 こうして、琉嬉の策略(?)通りに生徒会のメンバーの術者達をふかしぎ部に引き入れた。

結局は大多数は戦ったのだが。

とはいえ、どれもかなりの手練。

「真霊気」を使わざるを得なかった。

どの道、表でも裏でも有名になるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ