第三話 不協和音の悪魔 scene1 佐々木
相良が最後に見たのは右手を差し出した田中の姿。
その後はひたすら闇だった。
今、自分が浮いているのか、落ちているのか全く状況がわからなかった。
必死にもがきながら叫んだ。
「うおぉぉぉっ!!何だこれは!!ここはどこなんだよ!!」
相良の声だけが闇の中で響き渡る。
返事はない。
ただ、この空間何故か落ち着いた、
そう…学校などという日常よりも何か心穏やかに過ごせる感覚はあった。
しかし…それは暗闇の中に光る一筋の光によって打ち砕かれた。
「滅せよ悪魔!」
暗闇の奥から声が聞こえた。
闇は引き裂かれ白い光の空間が現れる。
その広い空間にはツンツンヘアの男子が一人立っていた。
目つきが悪いその少年は相良を見ると驚いた様子だった。
「相良!!お前が悪魔だったとはな!」
「俺を…知っている…だと?お前…何者だ…?」
「待て!俺を知らないだと!!」
「知らんぞ」
「そんなわけないだろ同じクラスだぞ!」
少年の言葉に相良は愕然とした。
「同じ…クラス?ウソだろ…知らないぞ」
「佐々木健吾!!俺はクラスでも目立つほうだぞ!出席番号も近いし」
「佐々木...?」
相良は首を傾げた。
その名前は記憶に全くなかった。
本当になかった。
「存在...してるのか...?」
「存在してるよ!俺をUMAみたいに言うな!おまえクラスに興味なさすぎだろ!」
「無いんだからしょうがない」
「開き直るなよ!」
相良は悪びれることなく当然の事として平然としていた。
「これは...悪魔に脳を蝕まれているという事か...」
佐々木は頭を抱える。
「蝕まれてねえよ。興味がないだけだ」
「胸張っていう事じゃねえよ」
佐々木のツッコミが真っ白な空間に響いた。
相良は周りを見渡した。
「って言うかここはどこなんだよ」
佐々木の表情が変わる。
「ここか...ここは閉じられた空間、俺の領域だ」
「おまえ意外と厨二臭いな」
「そんなんじゃねえよ。事実なんだよ!悪魔を封印するための俺の精神領域だ」
「なんだかわかんないけど結構病んでるんだな」
「だからそういう事じゃねえ」
佐々木が刀を抜く動作をする。
一筋の光が走りその右手には刀が握られていた。
「おお...」
相良は目を見開く。
「俺は退魔師の一族、佐々木家の人間!悪魔!!お前を殺す!!」
「あーもうまた面倒臭いやつが!」
「この世界から消えてなくなれ!」
佐々木が振りかざした刀をかろうじてかわす相良。
「おまっ、危ないだろ!!」
「危なくしてんだよ!」
佐々木の主張はもっともではある。
「待て待て、俺は悪魔じゃない!」
「嘘をつくな!お前からは悪魔の臭いしかしないぞ!」
「しかって事はないだろ。悪魔を食っただけだぞ。だいぶ人間の部分あるぞ」
「悪魔を...食っただと...悪魔を食べる悪魔」
「だから悪魔じゃねえ」
「悪魔中の悪魔じゃねえか」
「だからなんで悪魔前提なんだよ!」
襲い掛かってくる佐々木の刃。
「仕方がねえ。やるしかないのか...おい悪魔!」
相良の右手がドクンとなり形を変えていく...が。
「だりぃな...ここ...やる気が出ねえよ」
右手の悪魔は肩を落としうなだれている。
「おい!どうした!」
「なんかこの場所だりぃんだよ」
佐々木が勝ち誇ったように言う。
「本性を出したな悪魔が!俺の空間はな!悪魔の力を半減させんだよ!弱って死にやがれ!」
佐々木の刃が右手の悪魔に襲い掛かる。
刃にり刻まれる悪魔。
相良は叫んだ。
「悪魔!あいつを焼き尽くせ!」
炎と刀がぶつかり合う。
その時。
白い空間にビシッという音とともに亀裂が入った。
黒く割れたそれはミシミシという音とともに大きくなっていく。
「相良!お前何をしやがった!」
「何にもしてねえよ」
「くそ!得体のしれない力を使いやがって!この悪魔野郎!」
「だから何もしてねえんだよ」
パリィン!!
空間と砕け飛び散った。
相良と佐々木は放り出され床に落ちた。
見上げるとそこは見慣れた教室の景色。
相良は頭を押さえながら立ち上がる。
「いってぇ...何なんだよ」
「な、なんだと...俺の空間を破るなんて...」
佐々木の視線の先には田中がいた。
その手には半透明の手が重なるように存在していた。
佐々木は田中を睨みつけた。
「なんだお前は...何をしやがった!」
「私?私は田中よ」
「そんなことはわかってる!同じクラスだろ!」
「同じクラスかどうかはわからないわ」
「おまえもか!少しは他人に興味を持てよ!」
「無理ね興味がないわ」
「って言うか何しやがった」
「壊しただけよ。私の手を使って」
ゆらりと半透明の手が揺れる。
「何なんだその手は…」
「DevilHand…とでもいうのかしらね」
「名前ダサいな...」
「うるさいわよ相良君」




