scene3 赤峰
翌日の学校は昨日の闇の悪魔の騒ぎが嘘のように平和だった。
生徒たちは普通に登校し雑談していた。
いつも通りの日常...そしてこの男もまた日常へと帰っていた。
相変わらず右手は赤黒く渦巻きうねっていたがほとんど気にならなくなっていた。
「慣れって怖いな…」
そうつぶやきながら廊下を歩いていた。
そんな相良の平和な日常は長くは続かなかった。
「ちょっと待ってください」
凛とした声に肩をビクッとさせ振り向く相良。
振り返ると昨日のショートカットの女子生徒が立っていた。
相良はとっさに後ろに下がる。
「…まっまさか悪魔返せって言うんじゃないだろな…?」
「そんなことは言いませんわ」
「お、おう...なら何だよ…?」
女子生徒は相良に近づき指さした。
「あなた、私に取り憑きなさい」
「は?」
「私の悪魔食べましたよね!だからあなたが私に憑けば元通りですよね」
「ちっ違うぞ!?俺は悪魔じゃない!」
「似たようなものです」
女子生徒は当然であると言わんばかりに即答した。
「さあ」
「さあ...と言われても...」
相良は困惑し混乱した。
女子生徒は顔を赤らめながら恥ずかしそうに続けた。
「日々...私と一緒に過ごすのですよ。朝も昼も夜も...ずっと一緒ですわ」
「はあ!?」
相良の脳内に不適切な映像が浮かんでいく。
湯気、風呂、部屋、ベッド。
そして不自然なぐらい近い距離。
……相良は首を振り現実へと帰る。
「無理!!」
全力、全力で廊下を走った。
「あ、待ってください」
「嫌だ!」
「責任を取ってください」
「責任の意味が違う!」
相良の叫び声が廊下中に響き渡った。
教室へ駆け込んだ相良は勢いよくドアを閉め息を切らした。
「はぁ...はぁ...助かった...」
相良は教室の中央でのんびりと牛乳を飲んでいる田中を見つける。
「おい!田中!大変だぞ!昨日の女子が...」
そこまで言って田中の視線が自分の後ろを見ていることに気づいた。
「そうね。そこにいるけどどうしたの?」
「えっ?」
嫌な予感とともにそっと後ろを向いた。
そこにはにっこりと優雅にほほ笑む女生徒が立っていた。
「うわっ!教室までつけてきたのか!?」
「違いますわ。ここ私のクラスですから」
「え...うそ...マジ?」
「マジですわ」
「ずっと一緒にいられますね」
女子生徒は上品にほほ笑み相良の顔からは血の気が引いていった。
「田中!どうにかしてくれ!」
「どうにか?むしろ良かったんじゃない。手をつなぐ相手が出来たわよ」
「良くない!」
「でも特に問題ないし...」
「問題しかないだろ」
「ないわよ。だって相良君が毎日悪魔を食べて右手の悪魔が最強になってくれさえすればプライベートの事なんて気にならないわ」
「全然プライベートじゃないし、って言うか最強の悪魔ってなんだよ」
「あなたを導いているのよ」
「怖い怖い怖い。どこに導こうとしてるんだよ」
「まあまあ、まずは最強になるところからよ」
「いや、最強になりたいなんて一言も言ってないんだが」
それに対して女子生徒が深くうなずいた。
「そうですわ。私も最強とかどうでも良いですわ」
「いやいや、なんかお前も違う方向で怖いぞ」
女子生徒は相良の隣の席に自然と座った。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。赤峰玲奈って言います。不束者ですが、とりあえず今日からよろしくお願いします」
「待て!なんで隣に座った?」
「悪魔が近くにいたほうが安心ですわよね」
「不安材料だろ」
その様子を田中は楽しそうに観察していた。
「とても良いね。絆が深まるわ」
「深めたくないんだけど!」




