表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/48

第二話 闇の女子高生 scene1 空腹


朝の教室は昨日の火事騒ぎなどなかったかのように、1-Bはいつもの空気を取り戻していた。

…ただ一人を除いて。


相良は自分の右手をじっと見ていた。

昨日より赤と黒が不気味に混ざり合い。

いまだに色が動き続けていた。


「なあ...完全に俺の意志とは関係なく動いてるんだけど...これ俺の右手だよな」

低い声でつぶやく相良を見ながら田中がテンション高めに答えた。


「熟成されてきてるのよ。二つの悪魔の力が混ざり合っているわ」

「わくわくすんなよ。そもそも熟成ってなんだよ。すごく心配なんだが...」


田中は真面目な顔で話し始める。

「しょうがないわね。説明してあげるわ。

 今ね悪魔と悪魔が混ざり合って咆哮な香が漂っているわ...良い感じよ」

「ワインみたいに言うな!なんの臭いもねえし、なんの説明にもなってない」

「なかなか伝わらないわねこの感覚」

「伝える気ないだろ」


相良が頭を抱えたその時。


「責任取って欲しいんだけど」


声と同時に二人の前に金澤実花が立ちはだかった。

その声は静かだが確実に威圧感があった。


相良が少し恥ずかしそうに答えた。


「せっ責任...って...結婚?」

「そんなわけないでしょ!それだけは絶対にないわ」

金澤は即答した。

「こっ、こっちだってないわ!」

相良は自らの発言を必死で否定した。

「だったら選択肢に出さないでよ」


田中はそのやりとりを完全に無視して話に入ってくる。

「で、責任って?」


金澤はため息をつき当然のように答えた。

「新しい悪魔捕まえてきて」

「は?」


相良の思考は追いついていなかった。


「当然でしょ?人の悪魔とったんだから、新しい悪魔を捕まえて返すのは当然でしょ」

そしてびしっと田中を指さした。

「田中さん!悪魔つかめるでしょ」

そして自分を指さす。

「私が食べるから」


沈黙...。


唖然としながらも相良が答える。

「待て...おまえ今なんて言った...?昨日の感じだと悪魔要らない感じだろ」

「いえ、学校は燃やさなくても悪魔はいるわ」

「なんに使うんだよ」

「いざって時の為に持っておきたいの」

「いざってなんだよ」


その話を聞きながら田中が首を横に振った。


「残念だけど...食べられるのは相良君が特異体質だからで普通の人が食べたら死ぬわよ」

「ええっ!?そうなの?」

金澤の目が見開かれた。

そして同時に相良が叫んだ。

「食べたら死ぬのか!?なんで俺が特異体質だってわかった?!」


田中はひょうひょうと答えた。


「勘よ。多分、この人食べられるんじゃないかなって思ったからよ」

「多分じゃねえ!危うく死ぬところじゃねえか!」

「死ななかったし問題ないわよね」

「問題しかない!」

肩をすくめる田中に相良は激しく抗議した。


「食べなくていいから悪魔を憑けてよ」

「なんでだよ。憑いてないほうがいいだろ。普通」

「良くないわよ」

相良の発言は赤澤に即座に否定された。

「あーもう意味がわかんねえ」

その様子に田中は楽しそうに笑った。


「よし、じゃあ金澤さんにふさわしい新しい悪魔を探しに行こう」

「お前ら絶対おかしいだろ。なんで悪魔に積極的にかかわってくんだよ」

「私の悪魔を右手に持ってる人に言われたくないわ」

「たしかに説得力はないわね」

「好きで持ってるわけじゃない」

「相良君言い訳は不要よ。そうと決まれば今から探すわよ」

「そうよ私の悪魔速攻で見つけるわよ」

「俺の意志は!?」

相良の言葉は完全に無視され校門前で悪魔探しが始まった。


「絶対ろくなことにならない...」

相良は深いため息をついた。

そしてその予感にだけは自信があった…。



校門へ向かう通学路。

塔越してくる生徒たちを監察しながら相良は腕を組み不満そうにしていた。

「悪魔捕まえるって言ってもさ、そんな簡単に捕まるもんじゃないよな」

「そんなことないわ。悪魔なんてその辺にいくらでもいるわよ」

「いくらでも..って.世の中不安だな」

「いくらでもいるなら早く見つけてよ」

金澤が腕を組んだまませかした。

田中は周囲を見回し言葉を濁した。

「いる...だけならいくらでもいるんだけどね...」

「何よその言い方は?」

金澤は眉をひそめ田中を見る。


その時だった。

相良が校門前を行き交う生徒の一人に違和感を感じる。


「おい!あれって」

相良の指さした先にいた女子生徒。

その背後には丸いぷよっとした物体が浮遊していた。


「確かにあれは悪魔ね。どうする金澤さん?」

田中の問いに金澤は即答した。

「なんでもいいわよ。早く取ってきてよ」

「じゃあ、取るわよ」


田中は女子生徒の背後に回り込み、ふくよかな球体をへと手を伸ばした。

半透明な手が悪魔をつかんだ。

「よいっしょっと...」

女子生徒から悪魔を引きはがそうとしたその瞬間。


「ちょっと何するんですか!?」


女子生徒が振り返り田中を見た。

田中の手の中で球体がバタバタと暴れる。


突然の反応に空気が凍った。

女子生徒は田中を睨みつける。


「あなた泥棒ですよね!」

「違うわよ」

田中は即座に否定した。


「じゃあなんで人の悪魔取ろうとしてるんですか?」

「…え?認識してる…悪魔を…」

「認識も何もここにいるじゃないですか」

女子高生はきょとんとした顔で当然の事として主張した。


田中は手の中のそれを見る。

ぷにぷにしている。

妙に幸せそうな顔をしている。

「これ...悪魔だし...つけてても良い事ないわよ」


女子生徒は首を振った。

「そんな事ないわ。このペコリンちゃんは、とっても役に立つのよ」

「ペコリン…?」

「そうよ。いつでも私を空腹にしてくれる素敵な子よ」


沈黙...。


相良がぽつりとつぶやく。

「……空腹...の悪魔…?」

田中が顔をしかめる。

「食べ過ぎて太らせる悪魔...絶対に要らないわよね」


女子生徒はびしっと親指を立てた。


「必要よ。女子高生フードファイターの私には!いつか双子のユーチューバーより食べて、有名になってやるのよ!」

熱い宣言だった。



その横で、ペコリンと呼ばれた悪魔が「ぐぅ〜」と鳴いた。

金澤は冷静だった。

「田中...私その悪魔要らないわ。別にそんなに食べたくないし太りたくもないわ」

「そうよね」

田中はあっさり納得し、ペコリンを女子生徒の肩へ戻した。

「じゃあ他で……」

女子生徒は満足そうにうなずく。

「次からはちゃんと声かけてくださいね」

「検討します」

「しないだろ」

相良が即ツッコミを入れる。

三人はその場を離れ、再び校門へ向かう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ