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俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


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scene5 対峙

相良は白い空間に立っていた。

右手を見る。

「悪魔!!」

右手が悪魔へと変化していく。

その姿はいつもと変わらない。

赤黒い身体。

荒々しい雰囲気。

しかしその全身からは何かが溢れ出していた。

空中には無数の数式が浮かび上がる。

耳の奥に響く不快でありながらどこか懐かしい不協和音。

さらにその輪郭に悪魔を倒すという強い意志が感じられる。


志水。

湊。

北条。

三人が確かにこの一体の中に息づいている。

相良は静かに息を吸った。

悪魔は無言のまま前に進む。


赤峰が巨大な闇となり空間に広がっていく。

「相良君...なんで出てきたのです...ゆっくり休んでください」

闇が笑った。

「俺は…ここで休んでるわけには…」

「無駄です。どうせ全部、闇に飲み込まれます」


その瞬間。

悪魔が拳を握る。


「行け!!」


相良の声と同時に拳が唸りをあげる。

一直線に闇に拳が刺さった。


拳は暗闇に深くめり込んでいく。

その瞬間。

拳の周囲に数式が浮かび広がっていく。

志水の不敵な笑みが一瞬だけ脳裏に浮かんだ。


「教師をなめるな!」


悪魔の拳が深く闇の中へ入っていく。

次の瞬間、拳が震え始める。


「なっ......?」


その振動は次第に激しくなっていく。

空間全体に不協和音が鳴り響いた。

耳障りな旋律。

あの音楽室で聞かされた悪魔の音色。

湊の笑顔が浮かぶ。

「悪魔は死なないのよ」

音が刃となり暗闇を内側から切り裂いていく。


「いや…」

赤峰の声が震える。

「そんな...」

そしてさらに拳が光った。

神々しく。

だけど決して神聖ではない。

偽りの天使、光の悪魔の力。

北条の得意げな笑顔が浮かんだ。

「私は天使よ!!」


光が、数式が、不協和音が。

三つの力が一つになって暗闇を崩壊させていく。


闇が崩れ落ち始めた。

「そんな...そんな顔…」


赤峰は信じられないものを見るように相良を見る。


相良は笑っていた。

今まで見せたことない前を向いた笑顔で。


「相良君...」


赤峰の瞳が揺れる。

「そんな…やる気に満ちた顔…」


闇が崩れる。


「ダメです...…」


暗闇の悪魔は音もなく崩れ落ちた。

残されたのは小さな黒い塊。

相良はゆっくりと歩み寄る。

誰も止めなかった。

佐々木も。

田中も。

金澤も。

ただ見守っていた。


相良は黒い塊を見下ろす。

赤峰は最後まで微笑んでいた。

「そんな笑顔の相良君は……嫌いです」

その言葉に、相良も少しだけ笑う。

「これで……ずっと一緒……だね」

赤峰は一瞬目を丸くすると、

ふっと優しく笑った。

「ふふ……そうですね」

その身体は黒い粒子となり、

ゆっくりと相良の口の中へ吸い込まれていく。

最後の欠片が消え静寂が訪れる。


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