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俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


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第十話 正義を食べた女 scene1 コンビ

「事件の匂いがするわ」

田中のその一言に嫌なものを相良は感じた。

相良は畳みかけるように言う。

「だとして…だ。事件の匂いがしたとして…だ。帰ることに何の問題がある」

すると赤峰が顔を明るくした。

「そうですね。ついに私の家に連れて帰ることが出来ます」

「それは問題があるだろ」

「ありません!」

帰ることには問題がない...ただし帰る場所には問題が発生しそうであった。

そんなやりとりを無視して田中は話を続ける。

「待って、帰る前にやることがあるわ」

「ないよ」

「湊先生を探すわよ」

「なんでだよ」

本当になんでだよ、である。

音楽室にいなかったというだけである。

無駄に戦わずに済んだ。

この状況は良い事しかない。

しかし田中は真剣な顔で言う。


「急に出てきて不意打ちを食らう可能性があるわ」

「不意打ち?」

「そうよ!行方不明を装って姿を隠して、一人になった所で奇襲......そんな手には乗らないわ!」

田中がファイティングポーズを取る。

完全に見えない敵と戦っていた。

しかしここに敵はいない。

いや、そもそもここじゃなくても敵なんてものは存在しないのかもしれない。

相良が呆れる。

「待て待て田中の勝手な想像だろ」

無視してシャドウをする田中。

そして佐々木が田中の言葉にうなずいていた。


「田中の言う事も、あながち間違いじゃないかもしれないぜ」

「間違っててくれ...っで根拠は?」

相良が面倒くさそうに聞く。

「俺とお前が組んだ。つまり最強のコンビが出来たわけだ」

「組んだ覚えはない」

「恐れをなして逃げた...そして俺たち二人が別れた所を襲う。あり得るな」

「だから組んだ覚えはないし、なんなら常に別行動だ」

「なんでだよ最強の悪魔ハンターだろ」

「悪魔ハンターになった覚えもない」


佐々木が真剣な顔で話を続ける。

「なんでだよ!かっこいいだろ!」

「別に...むしろちょっと恥ずかしい」

「男子なら憧れるだろ」

「全然」

「解散するとか言うなよ」

「解散の前にコンビを組んでない」

「なに?!俺たち...まだ始まってなかったのか…」

佐々木が膝から崩れ落ちる。

「そんなにショックを受けることじゃないだろ」

相良は呆れていた。

その横で金澤が落ち込んでいる。

「せっかく先生が食べられるところ見られるかと思ったのに...最悪の気分だわ」

「今の感想が最悪だよ」


佐々木が立ち上がった。

「悪魔ハンターコンビの今後については後で話そう」

「始まってないのに話も何もないだろ」

相良は即座に否定する。

そもそも一度も本人が受け入れていないのだから...。

そして田中はコンビの話は完全に無視した。

「そうよ。まずは湊先生を探すのが先よ」

「そうですね」

赤峰が真剣な顔で同意する。

「探し出して徹底的に殺った方がいいです」

「殺らなくていいんだよ」

相良がやんわりと否定する。


どいつもこいつも何かと言えば殺すの、倒すのと殺伐としすぎていた。

なぜもっと普通に生きられないのか。

相良が思う普通の学校生活はもう普通ではないのだろうか。

そんな訳ないと相良は思い返す。


金澤が窓の外を見ながら興味なさげに言う。

「また修行とかしてるんじゃないの?」

「確かにあり得る」

佐々木がうなずく。

「やっぱり俺たちコンビに恐れをなしたか」

「だから違う」

相良は反射的に否定する。

しかし佐々木が止まることはない。

「コンビ名決めるか?」

「決めないって言うか組んでない」

「デビルバスターズ的な」

「かっこ悪すぎる」

「そうか?じゃあ何が良い?」

「何も良くないよ」


すると突然赤峰が割って入る。

「そうです!良くないです」

何故か怒っていた。

「相良君は私とコンビなんです!」

「それも違うぞ」

赤峰がショックを受けたように目を見開く。

「なんてこと言うんですか!?相方じゃないですか」

「いつの間に相方になったんだよ」

「毎日一緒にいます」

「勝手についてきてるだけだ」


佐々木が何か納得したようにうなずいた。

「そうなのか...だから俺とは組めないと言うのか?」

「そういう話じゃない」

「俺は二股でもいいぞ」

「ダメだよ。そもそもコンビを恋愛みたいに言うないよ」

「固すぎるぞ」

佐々木は残念そうな顔をする。

しかし赤峰は止まらない。

「相良君!相良君には誠実でいて欲しいです」

「だから付き合ってないしコンビでもないし二股じゃない」

「私と言う相方がいるのに...」

「いない…」

「いますよ。ここに」

「物理的にいるだけだ」


その時田中が机をぱんと、手を叩いた。

「コンビ名の事はどうでも良いわ」

「最初からどうでもいいよ」

相良は疲れた声で答える。

田中はそのまま教室の出口に向かって歩き始めた。


「行くわよ」

「行くって何処に行くんだよ」

相良が聞いた。

田中は振り返らずに答える。


「ここにいない関係者」


その言葉に全員が顔を見合わせる。


「北条さんの所よ」


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