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俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


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第九話 潜在的リスク scene1 犠牲

昼休み

相良たちは教室の一角に集まっていた。

そしていつものように田中がロクでもないことを言い出す。

「この状況非常にまずいわね」

田中の表情はいつになく真剣である。

しかしそんな田中の真剣さを感じ取ることなく気だるそうに返事をする相良。


「何がだよ」

「潜在的リスクよ」

「だから何がだよ」

もう相良は面倒くさくなっていた。

しかし田中は気にしない。

周囲を警戒し声をひそめる。

「湊先生の存在よ」

「なんでだよ」

「だって悪魔なのよ」

「でも担任だし普通にしてたらいいんじゃないか?」

「無理よ。だって悪魔なのよ」

「たしかに悪魔だけど...」

「いつ襲われるかわからないわ」

「まあ...でも...だ」

「でも何よ」

「まずは佐々木からやられるんじゃないか?」

「なんでよ?」

「だって元々先生は悪魔ハンターを殺したかったんだからさ」

「確かに…まずは佐々木君から犠牲になるわね」

そのやり取りを聞いていた佐々木が机を叩いて立ち上がった。

「待て!待て!待て!」

その声は教室中に響いた。

「なんで俺の犠牲が前提になってんだよ!」

田中は冷静に答える。

「それから対策をしても遅くはないってことよ」

「遅せえよ!!」

「でも犠牲は佐々木君だけよ」

「俺の犠牲を前提に物事を進めるな!」

相良もうなずく。

「そもそも悪魔ハンターなんだから何とかしてくれ」

「そうね。そうすれば安心ね」

「全然安心じゃねえよ!!」

田中の一言に机に突っ伏し佐々木は嘆いた。

どうしてこいつらは自分の命を軽く扱うのだろうか。

理解できないし理解したくない。

その時、赤峰が手を上げた。

「相良君」

「なんだ」

「ついに食べる気になったんですね」

「今の会話からなんでその結論が出るんだよ」

赤峰は嬉しそうに言う。

「湊先生を何とかするって聞こえましたよ」

「何にもしないよ。何とかするのは佐々木だよ」

「ダメです」

「何がだよ」

「佐々木君に任せちゃダメです」

「なんでだよ」

「相良君が食べてください」

「なんでそうなるんだよ」

「より良い相良君になるためです」

「いい意味がわからん」

佐々木が机を叩き起き上がった。

「よし!相良!一緒にやるか!」

「やらないよ」

相良は即答した。

「そもそも先生はいた方が良いし」

赤峰がびっくりした顔をする。

「ええ?あんなに邪魔なのに!?」

「だから必要なんだよ」

相良がため息交じりに答える。

「意味が分かりません」

「学校に先生がいなかったら困るだろ」

「うーん...別に困らないです」

「困れよ」

「どうしてですか?」

「いや...どうしてって…」

困る相良。

金澤が会話に加わってくる。

「テストとかなくなって助かるわ」

「私もそう思う」

田中もうなずく。

「お前らは学校を何だと思ってるんだ」

相良は頭を抱えた。

教師がいなくなれば授業がなくなる?

授業がなければテストもなくなる?

そんな発想の奴ら...。

行動を共にしていいのか不安になった相良は机に突っ伏した。

そんな相良を佐々木が引き起こす。

「来週は決戦だ!」

拳を握りしめ気合を入れる。

「相良!対策を練るぞ!」

相良は机に突っ伏して答えた。

「なんで俺を巻き込むんだよ」

「だってさお前...悪魔か?」

「違うよ」

「そうだよな!違うよな」

「だからなんだよ」

「じゃあ人間の為に戦うよな」

「急に飛躍するなよ。途中端折りすぎだろ」

「何言ってるんだよ!そのための右手だろ」

佐々木は相良の右手を掴んだ。

「絶対違うし、出来ればお前の右手と交換したいぐらいだ」

「そうか...俺、トイレの後洗ってないけど...良いかな?」

「それは絶対にヤダ。今すぐ洗ってこい」

金澤が笑顔で会話に参加する。

「やっぱり先生殺すんだよね?」

「殺さないよ」

「学校壊す?」

「壊さないよ」

「だったら協力するわよ」

「出来れば止めてくれ」

金澤は肩を落とした。

「えー、残念」

「残念な要素はないよ」

「学校嫌いだし期待したのに」

「相変わらずの危険思想だな」

「そうよ」

金澤は自信たっぷりに胸を張った。

「堂々と言うことじゃないよ」

「ブレなくていい感じでしょ」

「悪いよ」

佐々木は相良の肩に手を置いた。

「こいつこんな事言ってるけど来週は俺と一緒に決戦だ。先生殺すぞ」

金澤の目が輝いた。

「ウソ!?」

「本当だ」

「マジ!?」

「マジだ」

「見たいそれ」

「見たい要素が一個もないよ」

相良はツッコんだ。

金澤は首を傾げた。

「でもそういえば悪魔って死なないんじゃないの?」

その言葉に佐々木は腕を組んだ。

「そうだな。あくまで一時的な排除しか出来ない」

「じゃあ意味なくない?」

「いや」

佐々木はにやりと笑った。

「出来なかった、だ」

「かった?」

金澤が聞き返した。

佐々木はゆっくりと相良を指さした。




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