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俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


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scene2 容疑者

田中が指さした先。

そこには佐々木がいた。

「こいつよ」

「なんでだよ!?」

佐々木が即座に叫んだ。

田中は冷静に続ける。

「だって湊先生に殺されかかってるわよね」

「それはそうだけど」

「今でも命を狙われている」

「それもそうだけど」

「殺意を抱くには十分な理由よ」

「待て待て待て」


佐々木の静止を無視して田中は続ける。


「そもそも悪魔ハンターだし」

「偏見がひどいぞ」

志水は腕を組んだ。

「なるほど...」

「なるほどじゃねえ!」


「佐々木!貴様!」

「だからなんで信じるんだよ!田中に騙されてんじゃねえよ」

佐々木は机を叩いた。


しかし志水は真剣だった。

「動機はある」

「ない!」

「悪魔ハンター!」

「ハンターであって誘拐はしない!」

「湊先生に恨みがある」

「向こうが先に攻撃してきたんだ!」

「そもそも怪しい」

「雑な理由だな!」


必死に反論するも職員室内の空気は佐々木不利になっていく。

「そもそも俺はずっと時間外だ!」


すると田中がうなずいた。

「なるほど」

「おお、わかってくれたか!」

「時間外を理由に湊先生を油断させたのね」

「違う!!」


志水が机を叩いた。

「佐々木!」

「なんだよ!」

「この卑怯者が!!」

「だから違うって言ってんだろ!」

「絶対に許さんぞ!」

「何もしてねえよ」

無実を主張する佐々木に金澤が言った。

「佐々木、サイテー」

「お前まで!?」

相良も腕を組む。

「まあ、確かに動機はある」

「相良ぁぁぁ!!お前までもか!」

「だって動機はある」

「あるけど...やってなねえ!」

「その動機が重要なんだが...田中、証拠はあるのか?」

「ないわ」

「ないんかよ」

田中は真顔だった。

「ええ、証拠はないわ」

「じゃあダメだろ」

「でも、佐々木を差し出したら解放されるかもしれないわ」

職員室が静まる。

相良は少し考えた。

「…確かに」

「確かにじゃねえ!!」

佐々木の叫び声が響く中、金澤がうなずいていた。

「合理的ね」

「合理的じゃねえ」

北条が腕を組んだ。

「生贄って大事よね」

「大事じゃねえよ」

赤峰がにっこり笑った。

「相良君が無事なら問題ありませんわ」

「問題あるだろ!」


とうとう佐々木は膝から崩れ落ちた。

そんな佐々木の肩を志水がぽんと叩いた。

「安心しろ」

「先生…」

「万が一犯人じゃなかったらちゃんと謝ってやる」

「万が一って犯人扱い前提じゃねえかよ!」

佐々木の叫び声が響く。

しかし相良たちはすでに別の事を考えていた。


「とりあえず縛っとくか?」

「賛成」

「檻に入れたほうが…」

「いい考えです」

「やめろ!お前ら!!」


「なるほど…」

志水はここまでの話を聞いてものすごく納得していた。

「お前らロープ持ってこい」

「いや。待て待てここまでの話で”なるほど”要素は無かっただろ!完全に田中の思い付きだろ!」


志水は真剣な顔で佐々木を見る。


「佐々木...」

「なんだよ」

「疑いを晴らしてければ見つけてこい」

「はい?」

「真犯人を探してこい」

「なんで俺が!?理不尽すぎるだろ」


確かにその通りだった。

証拠もない。

たいした根拠もない。

ただの思い付きで犯人扱いされている。

しかし周囲の反応は冷たい。

ただひたすらにこの場を終わらせたい。

佐々木はその為の犠牲。

そんな空気だった。

金澤があっさり言う。

「じゃあ、そういう事で佐々木、後はよろしく」

「よろしくじゃねえ!」

田中もうなづく。

「そうね。私たちは、もう用済みね」

「お前が原因だろ!」

完全に押し付けられている。


赤峰は相良の袖を引いた。

「相良君帰りましょう」

「だから一緒には帰らないよ」

「なんでですか」

赤峰は不満そうに頬を膨らませる。


「今なら邪魔者がいないんですよ」


相良は背筋に嫌なものが走った。

「まさか...」

赤峰は首をかしげる。

「なんでですか?」

「湊先生...」

「殺ってませんよ。殺りたい気持ちはありますけど...」

「あるなよ!」

相良は思わず叫んだ。

その時志水の目が光った。

「なるほど」

「何がですか」

「赤峰にも動機があると...」

「えっ」

赤峰は少し考えて素直に答えた。

「動機はあります。でも殺ってません」

「堂々というな!」

相良は思わず叫んだ。

志水は難しい顔をした。

「これで容疑者が二人か…」

そして指を折る。

「だとすると近しい関係にある相良も共犯の可能性が出てきたな」

「ないです!」

即座に否定。

「それに近しくない!」

「毎日一緒にいるだろ」

「勝手についてきてるだけだ!!」

「十分近しいな」

「そんな理屈あるか!?」

志水は聞いていない。

相良を見た。

そして指をさす。

「相良」

いやな予感しかない。

「探してこい」

「何を」

「湊先生を」

「なんで!」

「お前も容疑者だ」

「そんな...」

相良の肩が落ちた。

完全に巻き添えだった。


志水の追及はこれでは終わらない。

田中と金澤を指さす。

「それと田中、金澤」

「なにかしら?」

「なによ」

「お前ら二人も容疑者だからな」


二人同時に顔をしかめた。

田中が言う。

「無関係です。湊先生に興味ないし」

「お前の興味は関係ない」

「理不尽ね」

金澤も続く。

「先生嫌いなので関わりたくないです。ついでに学校も嫌いです」

「好き嫌いは認めない」

「なんでよ」

「教師だからだ!」

「横暴よ」

「そうだな」

志水はあっさり認める。

「だがそれでも探せ!」

「横暴なのは認めるのかよ」

相良がツッコんだ。


志水は机を叩いた。

「いいか!湊先生は大切な我々の仲間だ!」


誰も反応しない。


「心配じゃないのか!」


誰もうなずかない。


ただ微妙な雰囲気の中、目を合わせるのみ。

その空気に耐えられなくなった佐々木が小声でつぶやいた。


「先生の人望の問題じゃ......」

「違う!!」


志水は怒る。

職員室が揺れた。


そして数分後。

何故か?

本当に意味がわからないまま。

相良たちは全員で湊先生を捜索することとなった。


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