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俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


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scene3 悪魔は自由

「出られないってどういう事よ!!」

金澤の声が空間に響き渡る。

「だってこの空間作った本人しか解除出来ないわ」

「そんな力もってんの?あいつ」

「力というか管理者だからね。この空間は佐々木君のものなのよ」

金澤が田中にすがりついた。

「でも田中さん空間壊せたよね!?」

「外からはね」

「内側からは?」

「無理よ」

「ええええっ!!じゃあ閉じ込められてるじゃない!」

「そういう事になるわね」


金澤の顔が青ざめる。


「佐々木ぃぃぃ!!」


佐々木に駆け寄り肩をつかんだ。


「起きろ!起きろ!起きろ!」


反応はない。


「起きなさい!」

頬を叩いた、

…が反応はない。


「起きろこの野郎!!」

今度は拳だった。


「ぐっ...」


わずかな反応。

佐々木の口から声が漏れた。


金澤は止まらなかった。

「起きろ!解除しろ!ここから出せ!」


右、左、右。


金澤の拳が佐々木を殴り続ける。


「起きろー!!!」


魂の叫びだった。


殴られるたびに佐々木の口から変な声が漏れていた。

田中がひいていた。

「金澤さん...それ以上やったら本当に死んでしまうわ」

「今生きてるなら問題ない!解除よ!!解除してから死んで!」

「金澤さん意外と危険思想ね…」

「いや意外じゃないだろ。悪魔欲しがってる時点で」

「たしかにそうね」

田中は相良に同意した。


その会話を聞いていた北条が顔をひきつらせた。

「ちょっと絶対いやなんだけど...って言うか嫌すぎる!」

佐々木が死ねばこの空間に永遠に...それだけは絶対に拒否だった。


「天使!あいつを確保して」

北条が命じると佐々木の身体がふわりと浮いて北条へと近づいていく。

佐々木が光の悪魔に襟首をつかまれ持ち上げられていた。

悪魔がにやりと笑った。

「あそこにいるじゃねえか」

「ま、待て!佐々木が人質になってる」

「ちっ」

悪魔の舌打ち。

「確かにこの状況で佐々木を盾にされたら最悪だな」

志水が冷静に状況を見る。


北条は冷たい声で佐々木に命じた。

「今すぐここから出しなさい」

「う…」

「う...じゃない」

光の刃が佐々木を囲む。

「死にたくなければ今すぐ解除よ」


光の悪魔にぶら下げられたまま佐々木は必死に刀を握った。

「わ、わかったよ...」

刀が淡く光り白い空間に色が戻る。

ガラスが砕けるような音とともに白が崩れ景色が戻る。


「ふー...あぶなかったわ」

北条は胸をなでおろした。


しかし状況は一変していた。

光の悪魔を挟み込むように二つの影が立っていた。

志水と相良の右手の悪魔だ。


「見えればどうってことないな。この程度の敵」

志水が拳を鳴らした。

「当然だ。俺たちは無敵だぜ」

悪魔もニヤリと笑った。


二人は同時に飛び出した。


拳。


拳が光の悪魔を貫いていく。

光の悪魔が防御する間もなく殴り飛ばされる。

激しい打撃音が響きわたる。


「おら!」

「まだまだ!!」


不良漫画でしか見たことが無い光景が目の前で繰り広げられていた。

相良は完全にひいていた。

「いつの時代の光景だよ...」


弱った光の悪魔が膝をついた。

田中はその隙を逃さない。

田中の右手に不気味な手が浮かび上がる。

その手が光の悪魔をつかんだ。


「ちょうどいい感じね」


光の悪魔をつかんだ田中を見て相良は焦った。

「待て!俺は...」

相良が拒否するより早く田中の前に赤峰が立ちはだかった。

「ダメです!その悪魔は相良君に相応しくありません」

「そうよ!」

今度は金澤が割って入る。

「それは私の悪魔よ!」

「何を言ってるの!私の天使よ!取らないでよ!」

北条が反論した。


「だから俺は食べたくないんだってば!!」


相良は叫んだ。

そこには相良の明確な意思があった。

しかし誰も聞いてない。

「私の!」

「食べなさい!」

「返して!」

「食べちゃダメです!」

「だから私のだって!」


主張が四方八方から飛び交い収拾がつかない。

ただ光の悪魔だけが田中の手につかまれたまま置いてけぼりだった。


その時だった。

「やれやれ...」

低い声が響く。

振り向くとそこには志水が立っていた。

そして弱った光の悪魔を肩に担いだ。


「えっ!?」

全員の声がそろった。

志水は深いため息をついた。


「悪魔はお前らのおもちゃじゃない」


静かに言った。

しかしその声には妙な説得力があった。


「悪魔は自由だ...こいつは俺が預かる」

「先生、待って!」

「私の天使!」

「私の悪魔!」


抗議の声が飛んだ。

しかし志水は振り返らない。


「知らん」


一言で切り捨てる。


そのまま光の悪魔を担いで歩き出した。

夕陽に照らされた背中は妙に格好が良かった。


「…行っちゃった」

金澤は茫然とする。

「私の天使...」

北条は膝から崩れ落ちる。

佐々木はため息をついた。

「結局何だったんだ...」

「知らん」

相良も同じ気持ちだった。


こうして天使と悪魔の騒動は志水によって強引に幕を閉じたのであった。




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