scene2 保護色
白い閉鎖空間の中で床に散らばっていた志水の身体はゆっくりと元に戻っていく。
腕が、脚が、胴とつながり一つになっていった。
ゴキゴキと不気味な音を鳴らし身体の状態を確認する志水。
「ふぅ...完全復活だな」
拳を握り身体に力を入れる。
「さて、強敵を助けにいくとするか」
そう言って立ち上がった。
その顔は不自然な位爽やかだった。
相良の右手の悪魔とは前回の殴り合いの後、妙な友情が生まれていた。
そんな志水を胡散臭そうに金澤は見ていた。
志水は歩きながら、ちらりと金澤を睨んだ。
金澤が視線に気づき震える。
「契約...ですよね」
恐る恐る確認するように言う。
「そうだ...今回は不問とする」
「はあ...」
金澤が胸をなでおろしたが志水の言葉は終わらない。
「だが次はないぞ」
「やっぱり助けるんじゃなかった」
小さな声で、ぼそりとつぶやく。
しかし。
「何か言ったか?」
「いいえ、なにも」
即答、そして満面の笑み。
それに対して志水はそれ以上追及しなかった。
今はそれどころではない。
志水は歩き出した。
強敵とともに戦う為に...。
「さて...」
一歩踏み出した志水はそこで固まった。
「...な、なんだと...どういう事だ?」
そこには強敵が倒れていた。
そして膝をついて茫然としている相良の姿。
そしてその奥には得意げな顔をした北条が立っていた。
しかし肝心の光の悪魔はそこにはいなかった。
「どういう事だ」
予想外の状況に志水に焦りの色が見える。
相良はうつむきながら疲れ切った声で答えた。
「佐々木のせいだ」
「どういう事だ」
戦いに参加していない佐々木のせい。
志水は言っている事の意味が理解出来なかった。
相良は白い空間を指差す。
「見ろよ」
「なんだ?」
「白いだろ」
「ああ」
「白い壁」
「だな」
「白い悪魔」
「...ほう?」
「完全に保護色なんだよ!!」
志水は白い壁を見る。
そして数秒後、理解した。
「あっ」
周囲を見返す。
白い床。
白い壁。
白い天井。
そして白く輝く光の悪魔。
見えるわけがない。
「どっどこだ!?」
「それがわからないから困ってるんだよ!!どこから攻撃が来るのか全くわかんないんだよ!」
その瞬間光の刃がどこからともなく飛んでくる。
「うわっ!」
かろうじてかわす志水。
頬に血が流れる。
「本当に見えん!」
「だろ!」
「ったく」
志水はゆっくりと振り返り佐々木を見る。
空間を作った張本人佐々木健吾は笑顔で頭をかいた。
「悪魔の力は半減したろ!」
「全員の力な」
志水は佐々木を睨みつける。
顔には青筋が浮かんでいた。
「佐々木!」
「なんだ?」
「おまえは北条の味方か!!」
「違う!あくまで善意だ」
「悪意しか感じないぞ」
「俺だってこんなことになるとはさ...あくまで俺の空間で光の悪魔の力を半減させようと...だな」
「白い悪魔を白い空間に閉じ込めたらどうなるか!考えればわかるだろ!」
「考えてなかったです」
「考えろ!!」
「いや...結果論です!」
「最悪の結果だぞ!}
その時、光の刃の気配。
三人は飛びのく。
床に刃が当たる。
床が砕け破片が散る。
「うわ!」
「危ねえ!」
「これはさすがにまずいぞ」
慌てる三人を見ながら少し離れた場所から見る北条が笑った。
「さすが私の天使」
「いや、だから悪魔なのよ。あれ」
勝ち誇る北条を見て田中が呆れた顔になる。
志水は目を凝らす。
しかし見えない。
志水は北条と佐々木を交互に見る。
「くそっ敵は二人か...」
二対一という状況に舌打ちをする。
「お、おい俺は敵じゃない」
佐々木の声を無視した。
それどころではない。
その時だった。
背後から声が聞こえた。
「おい」
聞きなれた不機嫌な声。
志水は振り返る。
口元がわずかに緩む。
「遅せえよ」
「何を言ってやがる少しは休ませろ」
黒い炎が燃え上がり志水の横に立つ。
志水がニヤリと笑う。
「敵が増えたぞ」
「問題ねえ。ちょうど二対二だ」
悪魔が拳を鳴らした。
「行くか」
「おうよ」
二人並んで前を向いた。
完全に長年連れ添った不良コンビである。
その光景に相良は呆れた顔になる。
「ヤンキー漫画か...」
その時佐々木は叫んでいた。
「俺は味方だー!味方なんだー!」
叫ぶ佐々木の横に金澤が立った。
「でもさ悪魔ハンターなんだから間違ってはないんじゃない?」
「確かに...」
佐々木は一瞬納得しかけた...が。
しかしすぐに首を振る。
「いや違う!!今は違う!」
「何が違うのよ」
「今は、今は時間外だ!だからお前らの見方だ!」
「…都合がよすぎないか…?」
相良は佐々木を冷ややかな目で見た。
「男らしくない」
金澤が追い打ち。
「仕方がないだろ!俺にも立場とか都合とかあるんだ!!」
「知らないわよ」
「くそっ」
佐々木が刀を握りなおす。
「今は時間外...時間外だけど...」
一歩前に踏み出す。
「仲間ってことを証明してやるよ!!」
全力で駆け出す。
相良が目を見開き
「おっ!?」
田中が呟く。
「珍しくやる気ね」
佐々木は一直線に北条へ向かって走り出した。
「うぉぉぉおお!!」
次の瞬間。
光が佐々木に刺さる。
佐々木は右に吹っ飛んだ。
空中で何度も回転し床に落ちた。
床に倒れ動かない。
志水が佐々木を見下ろし腕を組んだ。
「裏切り者は倒れた!これで敵は一人!」
拳を突き上げる。
「それはさすがに違くないか...」
相良が小さく突っ込んだ。
それでも佐々木はピクリとも動かない。
金澤が遅る遅る近づく。
「佐々木......」
つんつんと足で突いた。
反応はない。
「死んだ?」
その一言に田中が顔色が変わる、
「だとしたらマズいわね」
「なにが?」
金澤が首を傾げる。
田中が壁を指さす。
「ここから出られないわ」




