scene4 生首
光の悪魔の攻撃は圧倒的だった。
悪魔は散り志水は砕けた。
絶望的な状況に相良は膝から崩れ落ちる。
「圧倒的じゃないか...悪魔も先生も...」
絶望する相良。
その前を転がるものがある。
ころころ、と。
相良はぎょっとする。
そこに転がってきたのは生首、志水の生首だった。
「うわっ」
驚き立ち上がる相良。
佐々木の顔も引きつり一歩下がった。
この状況を田中は冷静に評価する。
「完全にホラーね」
「先生!」
相良が叫んだ。
しかしその横で赤峰が無造作に志水の首を拾い上げた。
そして観察する。
「これ…相良君の部屋に飾りたいです」
「絶対に要らないよ」
「部屋の雰囲気にピッタリだと思います」
「俺の部屋知らないじゃん」
生首の目がぎろりと動きため息をついた。
「赤峰...」
「はい」
「飾るよりも先生の心配をしたらどうだ?」
「嫌です」
「嫌とはなんだ!」
「だって相良君のほうが大事です。この状態、相良君の生活の彩にピッタリなんです」
「そ...そうか…」
「でも、もういいです相良君が飾らないなら要らないです」
興味を失った赤峰が志水の頭を地面に捨てた。
「おいっ!なっ!」
地面に転がる志水の頭。
「畜生お前ら!こんなもんな...すぐに復活して…」
そこで言葉が止まった。
「身体が...戻らないぞ。どういう事だ!」
頭だけのまま地面に転がり叫んでいた。
相良は右手を前に出す。
「悪魔!!」
しかしなんの反応もない。
右手は右手のままである。
「おい!悪魔!」
呼んでもなんの反応もない。
困惑する相良と志水に北条が満足そうに腕を組んだ。
「当たり前よ」
背後に従えた光の悪魔が神々しく輝く。
「天使の光を浴びた悪魔は滅するのみよ」
志水の顔が青ざめる。
「なんだと...」
相良も驚きゆっくりと自分の右手を見る。
腕に出ていた赤と黒が混ざった模様が少しづつ薄くなっている気がする。
「……ってことは」
その声は希望に満ちていた。
「もしかして...俺、悪魔から解放されてる…?」
悪魔が滅したのであれば、それは自由。
誰にも振り回されることはない。
悪魔がいない普通の生活。
赤峰から「もっと悪魔を食べてください」等と要求されることもない。
田中を悪魔から守るなんて意味不明な事もしなくていい。
素晴らしい世界。
相良の顔が少し明るくなる。
しかし佐々木が冷静に状況を見る。
「でもよ目の前のピンチは去ってないぜ」
「それはそうだけど...でもさ、もう俺悪魔じゃないし解放だよね」
転がる志水を見る。
「先生こんなんだし」
北条を見る。
「勝手に暴れてるけど悪魔いなくなったし」
田中を見る。
「ロクな事しないし悪魔いなくなったら他人だし」
金澤を見る。
「悪魔欲しいとか狂ってるし」
赤峰を見る。
「怖いし」
「怖いって何ですか!」
赤峰が抗議したが相良は無視した。
「とにかく俺を縛るものは無い!!」
解放感に浸っていたその時。
「ダメです!」
赤峰が転がる志水の頭を見つめながら叫んだ。
「そんなのダメです」
「何がだよ」
「食べなおしです」
「は?」
赤峰は志水の髪をつかみ生首を持ち上げる。
「おい!赤峰何してるんだ」
慌てる志水。
「これです。とりあえずこれを食べてください」
「嫌だよ。せっかく解放されたのに...」
「待て!俺を食う気か!相良!この悪魔!」
「だから食べないって言ってるのに!悪魔に悪魔って言われたくない。もう右手に悪魔はいないんだ。俺は普通の人間だ!」
田中がそっと相良の肩に手を置いた。
相良は何か心にヒヤリとした寒気を感じた。
田中の顔を見る。
嫌な予感しかない。
田中は首を振る。
「相良君…悪魔は死なないのよ」
その瞬間右手が大きく脈打つ。
ドクン、ドクン。
不気味な鼓動とともに右手が勝手にうねる。
黒い煙が上がり赤黒模様が混ざり炎が生まれる。
「おい...」
ぐにゃりと黒い影が伸び形を作る。
そして...。
「あー...だりぃ...」
聞きなれた声が聞こえた。
「おいっ...これって…」
「あーだりぃ、あいつ...あいつの白い空間みてえだな」
悪魔が佐々木を指さす。
「えっ...ふ、復活したぁぁぁ!」
相良の叫びが響いた。
「うるせえな」
「だって死んだんじゃねえのかよ。解放されたと思ったのに!!」
「何言ってんだ相棒。ここから長い付き合いだろ」
「それが嫌なんだよ。せっかく解放されたと思ったのに」
「勝手に期待して勝手に落ち込むのは良くないわよ」
「おまえが言うなよ」
田中が納得したようにうなずいていた。
「なるほどね。そういうことか」
佐々木が腕を組んだ。
「なにがだよ」
相良が聞き返す。
佐々木は光の悪魔を見上げた。
「同じ原理だ。俺の閉鎖空間とあいつの光、だから悪魔の復活にも時間がかかった」
「ほう、なるほど...それがそうだとして...」
「そうなんだとすればよ。こっちだけ力が半減するのは不公平だろ」
佐々木が構える。
刀が出現する。
空気が裂ける音。
空間が裂け白い閉鎖空間に構成され閉じられていく。
周囲の景色が消えすべてが白くなった。
佐々木は刀を肩に担いだ。
「これで条件は一緒だ」
悪魔が拳を鳴らしニヤリと笑った。
「いいじゃねえか」
北条も身構える。
そして志水が叫んだ。
「誰か俺の身体を探せ!そして持ってこい!」
誰も探さない。
放置だ。
右手の悪魔は復活した。
しかし志水は未だ生首のままだった。




