scene3 光との闘い
体育館裏に沈黙が流れる。
白く輝く人型を背負った生徒会長北条佳奈。
白く輝く悪魔と田中を交互に見る相良。
「田中...田中の身内悪魔に憑かれてるのか…」
「そのようね」
「そのようね。じゃないだろ他人事過ぎるだろ」
「他人事よ。他人だし」
「血縁者だ」
「知らない人よ」
「話にならんな」
一方で赤峰は北条をじっと見つめる。
「なんだか、さっきから明るくて眩しい。相良君と真逆です」
「その発言要らなくないか」
「必要です。重要です」
そして金澤は聞いた。
「田中さん、あれって天使の悪魔...的な?」
「なんか説明がややこしいな」
佐々木が頭をかいた。
「悪魔って最後についてるんだから、やっぱり悪魔だろ」
しかし田中は相良の発言に首を振る。
「違うわ」
「違うのかよ」
「そもそも天使の悪魔じゃないわ」
「じゃあなんだよ」
みんなの視線が田中に集まる。
田中は北条の背後で光り輝く存在を指さした。
「あれは光の悪魔よ」
「光の悪魔?」
「そうよ。ただ光ってるだけよ」
「えーっめちゃくちゃ神々しいわよ」
「でも光ってるだけよ」
「それだけ?」
「そうよそれ以外の要素はないわ」
相良は呆れかえった。
「なんだぞの雑な説明、あいつなんの力もないじゃん。っていうか何で、あいつは天使の悪魔だって言ってんだよ」
「勘違いじゃない?」
「勘違いで済ませるのかよ」
その時、金澤の目がギラリと光った。
「でも、あれ綺麗ね」
「ん?」
「相良君、取ってきて」
「俺が?」
相良は自分を指さし、すぐにその指を田中に向けた。
「取るのは田中だろ」
「どっちでもいいわ。あれが欲しいわ。私の悪魔にピッタリよ」
「ペット感覚で欲しがるなよ」
赤峰が金澤の発言にうなづいていた。
「そうですね。そのほうが良いですね」
「なんでお前も乗るんだよ」
「万が一です。万が一相良君の口に入ったら大変です」
「何が大変だよ」
「明るくなります。陰湿な成分が薄れちゃいます」
「別にいいだろ。そもそも俺陰湿じゃないし」
「とにかくダメです。ですから金澤さんに差し上げましょう」
「いや、食べたくないから良いけど...」
「いいえ食べるべきよ。強さには前向きさも必要よ」
田中が反論する。
「相良君は前を向いてはダメです。常に後ろか下を見て欲しいです」
「それはそれで問題だろ」
田中と赤峰がにらみ合う。
その会話を聞いていた北条が眉を吊り上げた。
「さっきから、ごちゃごちゃとうるさいわね!悪魔のくせに!」
白い光が強く輝く。
「瞬殺よ」
ビシッと相良たちを指差す。
その挑発に一人の男がのった。
「やれるもんならやってみろ!」
志水である。
一歩前に踏み出し北条の前に立つ。
拳を握った。
「俺の拳は無敵だ!!」
高らかな宣言。
教師の発言としては不適切。
しかし志水の姿勢に一点の曇りもない。
「教師の癖に拳で戦うなよ」
相良がつぶやいたその瞬間右手が熱くなった。
「あっ」
ぐにゃりと赤と黒が混ざった炎が伸び人型になる。
「なんだなんだ?殴り合いか?」
炎が拳を鳴らした。
「出るな出るな。まだ呼んでない」
相良は悪魔を右手に収めようとする。
しかし...。
「俺もやるぜ。ガチンコだろ?」
悪魔の目が輝き、その表情には怪しい笑みが浮かんでいた。
「最高じゃねえか」
「全然最高じゃない」
しかし悪魔は相良の言葉を聞いていない。
志水の横に立ち拳を鳴らす。
ゴキゴキッ。
「おい教師!」
「なんだ」
「どっちが先にぶっとばすか勝負だな」
「面白い」
志水は拳を握り答えた。
「待て待て待て待て待て」
相良が二人の間に入る。
「何で悪魔と教師が仲良く盛り上がってんだよ」
悪魔が相良を見る。
「何言ってんだよ。この状況でやらねえって選択肢はねえだろ」
「あるよ」
「相良...無いぞ。男の魂ってやつだ」
志水は熱く語った。
もはや何を言っているのか意味不明だった。
悪魔と教師は同時に拳を構える。
「行くぞ!」
「おう!先手必勝だぜ!」
二人の男の熱き戦いが始まった。
悪魔が地面を蹴り間合いを詰める。
赤と黒の炎を纏った拳が唸りをあげる。
その拳に迷いはない。
光の悪魔へ一直線。
「待て落ち着け!」
相良の静止は全く聞こえていない。
豪快に繰り出される拳。
その瞬間、光の悪魔が眩く輝く。
視界を焼くかのような閃光。
「なにっ!?」
悪魔の拳がわずかに逸れる。
本来なら光の悪魔を吹き飛ばしていたはずの一撃は空を切った。
悪魔が舌打ちをする。
「何を、何をしやがった」
光の悪魔は答えない。
ただその場で静かに光る。
その隙を志水は見逃さなかった。
「甘いな!!」」
鋭く踏み込み放たれる拳。
拳。
拳。
拳。
強烈な連打。
しかしその全てが光に包まれる。
軌道がそれる。
拳が届かない。
避けられたのとも違う。
当たる直前で世界が歪んでいるような感覚。
「なっ!?」
志水の目が見開かれる。
「俺の拳が...」
「だから言ったのに、これだから武闘派は考えなしで困るよな」
相良が呆れた顔で言う。
その時だった。
北条が両手を広げた。
「天使!」
その声に光の悪魔が空へと浮かんだ。
同時に無数の光が空に現れる。
無数の光は刃となる。
光の剣。
光の槍。
光の刀。
数え切れない光。
「浄化して!!」
北条が勢いよく腕を振りおろす。
数え切れない光が降り注ぐ。
悪魔が天を見る。
「おいおい無茶苦茶だな」
志水も目を見開く。
「せっかくの殴り合いを…」
地面を蹴り回避する。
が間に合わない。
ズドォォォォン!!
轟音が鳴り響き光が地面に突き刺さる。
光は悪魔の体に刺さり、志水の体を貫く。
「ぐあっ!?」
「うぉ!?」
肉体が砕け炎が散った。
そして静寂...煙が晴れたその時。
悪魔の体は粉々になっていた。
志水もまた同様だった。




