scene2 天使
相良は結局押し切られ渋々、だいぶ渋々倒れていたハシゴを持ち上げる。
重い。
面倒くさい。
帰りたい。
相良の気持ちはそれだけだった。
なんとか屋根に、はしごをかけると北条は軽やかに降りてくる。
数秒後。
地面に着地。
そしてくるりと振り返る。
「さて悪魔ども!!」
高らかな宣言。
宣言に対して相良は即ツッコむ。
「まずはお礼だろ!助けてもらったことに対する感謝!人として!」
「天使よ」
「人としても悪魔としても天使としてもだ!」
北条は不機嫌そうな顔をする。
「小うるさい悪魔ね」
右手を相良に向ける。
「先に消すわよ」
「恩を仇で返すな!}
相良はイラついた。
「あーもうハシゴなんか捨ててくればよかったよ」
「相良君、口も態度も悪くなってます。悪い悪魔の食べすぎです」
「絶対違うぞ赤峰。絶対あいつが悪い」
その様子を見ていた佐々木がふと疑問を口にした。
「でもよ。田中が人間なんだろ。だとしたらこいつも人間だろ」
確かに二人は姉妹。
北条の見た目も完全に普通の女子生徒。
人間じゃないのがいるとすれば、よっぽど田中のほうが人間じゃない気がする。
相良は二人を交互に見た。
「田中が人間かどうかは疑問だが」
「失礼ね完璧な人間よ」
「完璧かどうかはわからんが...そもそも悪魔つかんだり空間破ったりその時点で人間じゃないだろ」
「人間よ。人間が研究に研究を重ねた成果よ」
「ああ自分の命を守る為のね」
「そうよ」
北条もうなずく。
「確かに妹は人間よ。でも私は違う!私は特別!!」
相良は唖然とする。
「田中、お前の姉ちゃん頭おかしいのか?」
「知らないわよ」
「実の姉だよな」
「興味が無いし接点ないし知らない人よ」
「興味は持てよ」
「ないわ」
そんな不毛な会話を押し流すように志水が前にでる。
「そんなことはどうでもいい!!湊先生はどこだ!?」
志水の怒号に全員がビクッとなる。
北条も目を見開いた。
「湊先生?」
「そうだ」
「知らないわよ」
「嘘をつくな!」
志水の顔が引きつる。
「ここにあった十字架に文字を刻んだろ!」
「十字架?」
「そうだ!十字架に湊先生の命が......って書いただろ!!」
「そんなの知らないわよ。何よ十字架って」
「何だと!?じゃあ何でここに来た!」
「ここに来れば悪魔が一網打尽に出来るって情報提供があったのよ」
「じゃあその情報提供者は!」
「知らないわよ。朝来たら机に手紙があっただけなんだから」
その場の全員が愕然とする。
開いた口がふさがらない。
そして相良はうんざりした。
「そんなあやふやな情報であんな所に登っていたのか...」
「そうよ」
「そうよ、じゃねえよ。誰も来なかったらどうするつもりだったんだ」
「来たから問題ないわ」
「結果論だろ!」
当然の事として答える北条に相良は呆れ果てていた。
全く会話にならない。
しかし北条は気にしない。
全員をびしっと指さした。
「さあ覚悟しなさい悪魔たち!」
その言葉に金澤が反論した。
「ちょっとちょっとこの辺の変な人たちと一緒にしないでよ」
「変?」
「そうよ」
金澤は指を折りながら数え始めた。
「陰湿で悪魔を食う奴」
「記憶が欠如した悪魔オタク」
「悪魔に恋した闇落ち変人」
「頭の悪い悪魔ハンター」
「陰険な教師の皮を被った悪魔」
「確かに淘汰するべき悪魔と変人ばかり、でも私は至極まっとう、ごく普通の女子高生よ」
金澤が胸を張った。
相良がぽそりとつぶやいた。
「学校を燃やそうとした奴が何を言っているのか...今も悪魔欲しがってるし十分危険人物じゃないか」
「過去は忘れたわ」
北条はこの会話を完全に無視した。
「言い逃れは認めないわ」
北条は両腕を広げる。
「覚悟しなさい!!天使の力見せてあげるわ」
その瞬間、白い光が渦を巻いた。
北条の背後に巨大な何かが現れる。
人の形。
しかし人ではない。
全身が白く輝き翼のようなものが生えていた。
その姿はあまりにも神々しくそして異様だった。
佐々木が目を見開く。
「なっ…何だあれは?」
志水も驚いていた。
「北条!ここは学校だ!関係ないものは今すぐしまえ!!」
「お前が言うなよ」
相良はツッコんだ。
悪魔として殴り合いをした教師が常識を語ってもなんの説得力もなかった。
「でもあれって...」
赤峰の声が震える。
「...天使」
田中が白い人影を見る。
そして静かにつぶやく。
「違うわ」
その言葉は確信に満ちていた。
「......あれは悪魔ね」
空気が凍り相良たちの表情が変わった。
「彼女、悪魔に憑かれてる」




