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俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


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第六話 悪魔対天使 scene1 田中の目的

体育館の屋根の上で高らかと名乗りをあげる女子生徒。

そしてその女子生徒は生徒会長である北条佳奈。

そしてその正体が田中の姉であるとして...相良は一つの疑問にたどり着く。

「でもさおかしくない?」

「何がだ?」

聞き返す佐々木。

「だって名字違うじゃん」

その場の全員が振り返り固まった。

確かにその通りだ。

田中は田中だし北条は北条。

姉妹なら普通名字は同じはずだ。

金澤もうなずく。

「そうね。確かに変ね」

相良は田中を指さした。

「なるほどね。最初から怪しかったが”田中”は偽名だな」

「違うわよ」

「じゃあなんでだよ」

田中が少しうつむく。


「両親が死んで、二人別々家に引き取られただけよ」


その言葉に空気が変わった。

相良の表情が固まる。

「…え?」

屋根の上の北条が静かに続けた。

「そうよ。私たちの両親は悪魔に殺された」

「そんなことが...」

相良は田中の顔を見た。

ふざけてるだけかと思っていた田中にそんな過去が...。

今までの悪魔との戦いも両親の仇…。

田中は続ける。

「だから悪魔を研究したわ」

「そうか...両親を殺した悪魔を探すために...」

「違うわ」

田中は相良の言葉を即座に否定した。


「え?」

「そもそも両親の記憶ないし」

「ないのかよ」

「ないわ」

あっさりしている。

「と言う事は姉の記憶は...」

「ないわ。一緒に過ごした思い出もないし勝手に姉妹だからと名乗られてちょっと迷惑しているわ」

「姉に向かって迷惑とは何よ!記憶になくても姉妹には変わらないのよ!」

北条は叫んだ。

「ね、迷惑でしょ」

「まあ今回は気持がわからんでもない」

「悪魔に恨みもないし勝手に姉を名乗る人物のほうがよっぽど厄介よ」

「じゃあ何で悪魔の研究してんだよ」

「あのね相良君ちょっと考えればわかるでしょ」

「何が」

「両親が悪魔に殺されたって事は、私も狙われる可能性があるってことよ」

「なるほど...」

「だから...相良君には私の命を守るために最強jの悪魔になってもらう必要があるのよ」

「完全に自己都合じゃん」

「当然でしょ」

「当然じゃねえよ」


相良は一瞬でも同情し一瞬でも納得しかけた自分を恥じた。

そうだ田中とはこういう人物だ。

絶対に油断してはいけないと。

一方田中は悪びれることなくむしろ誇らしげに言葉を続ける。

「私は私の命が大事なの」

「最低だな」

「合理的と言って欲しいわ」


その時赤峰が一歩前に出る。

「そんなことに相良君を巻き込まないで下さい」

赤峰の表情はいたって真剣。

相良も少しだけ感動していた。

(俺に...味方してくれるのか)

だが次の瞬間そんな感動は完全に砕け散る。

赤峰は胸に手を当て力説する。

「相良君には、ちゃんと暗くてジメッとした生活を送って欲しいんです」

「そんなものは望んでいないんだけど」

相良は遠い目をした。

「陰湿で鬱々としていて、太陽の光を避け社会を呪い絶望し世界から孤立していく...そんな相良君であって欲しいんです」

「俺を何だと思ってるんだ」

「理想の悪魔です」

「やめろ」

田中も引かない。

「赤峰さんそれでは相良君役に立たないわ」

「立ちます。世界を絶望させます」

「それは最強じゃないわ」

「最強です最強に絶望です」


相良を間に挟み最強と絶望が交錯していた。

ただ、どちらも本人の意志はそこに存在していなかった。

北条はその様子を体育館の屋根の上から不満そうに見ていた。

「あなたたちちょっといい加減にしなさい!」

「なに?」

田中が面倒くさそうに答える。

「そっちで話をしないで私に注目しなさい」

北条に対して金澤はうんざりした顔をする。

「なんか主張が強いわね」

「だから生徒会長とかしてんじゃないか」

「ああそういう事ね」


「ちょっとそこ!悪口言わない!」

金澤と佐々木の会話に北条が割って入った。


「…聞こえてるみたいよ」

「しゃべりずらいな」

「ちょっといい加減にあなたたちのおしゃべりと止めて私を見なさい」

北条の必死に叫んだ。

叫ぶ豊穣を見た志水が教師としての一言を放った。

「いい加減にそこから降りてこい!」

至極まっとうな志水の発言に北条は腕を組んだまま答える。

「悪魔の命令は聞けないわ」

「教師として言っている!」

「それでも降りないわ」

「なんでだ!!」

志水のこめかみに青筋が浮かぶ。

北条は少し目をそらした。


「……降りられないの」


沈黙...そして全員が固まった。

相良が聞き返す。

「え?」

「降りなれないのよ」

「降りられないって...そもそもどうやって登ったんだよ」

「ハシゴよ」

北条は当然のように答える。

全員の視線が体育館横に向いた。

そこには見事に倒れたハシゴが転がっていた。

相良は叫んだ。

「天使なら飛べたりしないのか?」

「飛べるわけないじゃない。ハシゴを戻してよ」

志水は深いため息をついた。

「もういい早く降りてこい。相良!ハシゴをかけてやれ」

「俺が?」

「そうだ」

「関わりたくない」

「大丈夫だ」

「何が」

「あの感じの人間には大概の奴が関わりたくない」

志水の顔は妙に優しかった。


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