scene4 天使
翌日の放課後。
志水先生の指示と言う名の脅迫により、全員が体育館裏に集合していた。
誰一人納得していない。
特に相良は面倒くさいという気持ちが全身からあふれ出ていた。
「あー面倒くさい」
口から出る言葉はそればっかりだった。
そんな相良の横で赤峰が腕を組んだ。
「相良君」
「なんだよ」
「ちゃっちゃと片付けて一緒に帰りますよ」
「一緒には帰らない」
即答だった。
もはや反射と言っていいレベルの即答だった。
赤峰が頬を膨らませる。
「もう!」
「なんで怒られてんだよ」
「将来的な計画があるんです」
「怖い事を言うなよ」
相良は少し距離をとる。
将来の計画の計画が全く見えない。
見えたくもないし、そこに希望があるようにも思えなかった。
その横で金澤がまわりを見回していた。
「ねえ、誰もいないんだけど」
体育館裏、十字架のあった場所。
そこには何もない。
人もいない。
「ここよね...?」
金澤が不安げに聞いた。
相良も周りも見回すが、昨日の十字架すら嘘だったかのように何も存在していない。
「これは...先生の誘拐はなかった...そういう事だな」
「絶対違うぞ相良」
志水が即否定する。
「とは言え何もないし誰もいない。することがないわ」
「田中、何か痕跡がないか調べたり、やるべきことはあるだろ」
「相良君、もう一緒に帰りましょう。今日は終わりです」
「赤峰勝手に終わらすな。帰るのは先生の許可が出てからだ」
「相良君の食事のくせになまいきです」
その時だった。
突然高らかな声が響いた。
「この学園に巣食う悪魔!!」
全員が振り返る。
「天使である私が成敗してあげるわ!」
突然の声に誰も反応できない。
相良がぽつりとつぶやく。
「誰だ今の」
田中が空を見上げた。
「あっ!あそこ!」
指を刺した。
体育館の上。
夕陽を背に長い髪をなびかせる。
制服のスカートが翻り、それはまさにヒーローの登場シーンである。
そこには一人の女子生徒が立っていた。
腕を組み、胸を張り顔は完全に決め顔である。
相良は目を細めた。
「あれは...誰だ?」
田中は首を振る。
「知らないわよ」
「お前が指さしたんだろ」
「見つけただけよ」
金澤が首を傾ける。
「でも、どこかで見たことがある気がするわ」
「曖昧だな」
赤峰は一切の興味を示さない。
「相良君以外はどうでもいいです」
「その考え方やめないか?」
赤峰は聞いていなかった。
そしてこのやり取りを屋根の上の女子生徒も聞いてはいなかった。
むしろ更にポーズを決めている。
完全に注目されている前提である。
しかし誰も彼女を知らないし興味を示さなかった。
数秒の沈黙。
そして呆れたような声が響いた。
「お前ら...あれ生徒会長だろ」
志水だった。
全員が一斉に志水を見た。
そして興味ゼロの反応をする。
「へーそうなんだ」
志水は頭を抱えた。
「お前ら生徒会長も知らないってどういう学校生活を奥ってんだ」
すると佐々木が腕を組んだ。
「お前ら本当に人に興味がないな」
その言葉に金澤が引いた目を向ける。
「えっ佐々木知ってるの?キモ!」
「キモい要素ないだろ!」
「あるわよ。縁もゆかりもない生徒会長の名前を知ってる時点で」
「普通は知ってるんだよ!」
そんな佐々木の叫びを無視して屋根の上の女子生徒は両手を大きく上げる。
「その通り!!」
ビシッとポーズを決める。
「私は生徒会長!!北条佳奈!!」
更に胸を張る。
「そして...天使!!)」
数秒の沈黙...。
相良は深いため息を吐いた。
「なんか...また面倒なのが増えたな...」
「まあ...」
田中が怪訝そうな顔で屋根の上の女子生徒を見た。
「どうした?」
「どこかで...見たことがある気が...」
「生徒会長だからだろ」
「いやそれ以外で...」
屋根の上の女子生徒は叫んだ。
「実の姉の顔を忘れるなんてどういう頭してんのよ!」
「姉...?」
田中は首をかしげる。
「そういえば...そういう感じの存在が存在していたようないないような...うん姉ね...そうよあれは私の姉よ」
「なんかすごく不安な答えだな」
「興味がないだけよ」
「興味のなさが異常すぎてちょっと怖えよ」
「でも姉妹なのに全然似てないわね」
金澤が呟いた。
確かにそうである。
姉のテンションが妙に高すぎる。
明らかに正反対である、
同じ遺伝子で作られてるとは思えない。
そんな周囲の反応を気にせず北条は高らかに宣言する。
「さあ悪魔ども!!まとめて浄化してあげるわ!!」
そんな北条を見て相良は思った。
早く帰りたい…と。




