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俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


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scene3 職権乱用

夕暮れの体育館裏。

血塗られた十字架を囲み重苦しい空気が流れる。

血塗られた十字架をつかみ歯を食いしばる志水。

その表情に余裕はない。

そんな志水に佐々木が声をかける。


「じゃあ明日は先生が行くってことで」

そういいながらその場を去ろうとする。

志水のこめかみの青筋がさらに大きくなる。

「おい!お前は湊先生を見捨てるのか?」

「あ、俺そもそも悪魔倒す側の人間なんで...」

「だからなんだ」

「悪魔の救出なんて業務外なんで」

「業務とはなんだ!人の命だぞ」

「悪魔の命です。しかも死なないし」


志水は次のターゲットを見た。

「相良!お前は来るよな」

「来ません」

「どちらかと言うとお前悪魔だよな」

「違います。だから来ません。って言うか面倒なので行きません」

志水は絶句した。

「お前は!湊先生の命と面倒くさいのとどっちが大事だ!」

「面倒くさいです」

「最低だなお前」

「だってどうせ湊先生死なないし」

「それは...そうだが...」

志水は言葉に詰まった。


「だったらお前らは?」

その問いに金澤が答えた。

「でも先生きっかけの事件ですよね。先生が責任を取って明日来るのが正しいと思います」

「俺は来るよ!そのうえでお前たちも心配だから来るだろ普通」

「でも死なないから心配はないわ」

志水は頭を抱える。

「田中おまえは!」

「今回はパス。なんか興味がわかないわ」

「興味あるなしで動いてんのか」

「当然よ」

悪びれもしない。

赤峰も頷く。

「相良君が行かないなら行きません」

それに金澤も続く。

「みんなが行かないなら行かない」

「主体性がないなお前ら...」


全滅だった。

誰一人協力する気がない。

教師としての威厳は丸つぶれだった。

志水は黙り怒りに震えていた。

そして。

「お前ら...この...」

低い声が響き拳が握られる。

「人でなしがぁぁぁあ!!!」

怒号が響きわたり空気が震えた、

しかし相良は冷静だった。

「人じゃない人に言われたくないです」

「ぐっ...」

確かに志水自身悪魔でありその自負はある。

そして完全に事実でもある。

完全に痛いところをつかれた形になった。

志水は固まった。

しかしその表情には覚悟があった。

決して譲らないという覚悟。

「もういい...」

ああ、良いんだ...そう安堵したその瞬間。


「お前ら全員、明日の放課後ここに集合だ」

「嫌です」

「これは命令だ!}

「もっと嫌です」

相良は必死に抵抗する。


志水の笑顔が相良を威圧する。


「来ない奴は...」


「…全員赤点だ」


空気が凍った。


その場にいた全員の表情が変わった。


青ざめた相良が口を開いた。

「横暴すぎるだろ...」

田中は冷静に反論する。

「職権乱用ね」

「乱用?」

志水が不敵に笑った。

「大いに結構!!乱用?乱用してやるさ。お前らを従わせる為ならな」

「ぐっ、卑怯な!教師のやることじゃねえ」

「悪魔だからな」

佐々木の叫びに対して教師とは思えない。

いや悪魔として開き直った発言。

もはや志水を止められるものは誰もいなかった。

そんな中、金澤がふっと佐々木に言った。


「でもさ、あんた元々赤点だから問題ないよね」


佐々木の動きが止まる。

「……」

「問題ないよね」

更に追い打ち。

「失うものないんじゃない?」

「うっうるさい!」

佐々木の顔が引きつった。

「挑戦する権利だ!」

「...なにを言って...」

相良を含め全員が理解できなかった。

しかし佐々木は拳を握る。

「万が一がある!!」

「ない...佐々木...お前に万が一はない」

志水の即答。

完全否定だった。

佐々木は膝から崩れ落ちた。

「そんな...」

夕日とともに一人の少年の希望も消えた。

その姿を見た相良は思った。

悪魔よりも、よっぽど人間のほうが怖い...と。


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