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俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


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scene2 血塗られた十字架

佐々木が作り出した閉鎖空間の中、壮絶な殴り合いを終えた悪魔と志水の間には何故か妙な友情が芽生えていた。

床に転がったままの志水が口を開いた。

「今回は、こいつに免じて見逃してやる」

そう言って隣に倒れている悪魔を見る。

「だってよ」

悪魔が面倒くさそうに手を振った。

「良かった。これで無駄な戦いから解放される…」

相良は胸をなでおろした。

しかし次の瞬間。


「湊先生のところへ行ってこい」

志水の放った一言で相良の表情が曇る。

「えっなんで?俺たちが?」

「そうだ。行ってこい」

「なんで」

「湊先生がお前たちを待っている」

「いやいや、それは志水先生が責任もって...」

「何か言ったか?」

志水がぎろりとにらんだ。

「何も言ってないです」

反論できない圧があった。


志水はゆっくりと立ち上がる。

「見逃してやるのは今回だけだ。悪魔社会確立のためにお前たちには必ず死んでもらうからな」

「悪魔社会とか話の規模が大きすぎないですか…せめて補習ぐらいに...」

「補習は...ある」

「あるんですね」

「そして世界は悪魔のものになる」

「その辺は、よくわかりませんが」


その時田中が前に出る。

志水を指さす。

「そんなことは絶対にさせないわ!」

「田中...」

相良は田中を見ながら少し感動しかけた。

しかし...。

「この、相良君が!!」

「俺がやるのかよ」

期待を裏切られた。いや、ある意味期待通りというべきか。

「そうですよ。あなたも相良君の食事です」

「赤峰!食べないぞ俺は!」

「じゃあそういうことで」

金澤が肩をすくめる。

佐々木は刀を構える。

そして。

「佐々木家の名においてお前を…」

ポーズを決めた。

しかしその瞬間全員歩き出していた。

誰も佐々木の言葉を聞いていない。

佐々木だけがその場に取り残された。

「...討つ!!」

志水と佐々木だけが取り残された。

志水が少し同情した目を向ける。

「佐々木」

「なんだ」

「お前、可哀想だな」

「うるさい!待てよお前ら!」

佐々木は全力で走り出した。


数分後。

佐々木が体育館裏に到着する。

相良たちが先に到着している。

夕暮れが体育館を照らし静けさを演出していた。

しかしそこに湊先生の姿はなかった。

遅れてきた佐々木が周りを見渡す。

「あれ?先生は?もう帰った?」

「それなら平和で良いんだけどな」

相良がつぶやいた。

田中が一点を見つめていた。

「どうやら違うようよ」

その声に全員が振り向く。

「あれよ」

指さす先にあったもの…それは。

巨大な十字架。

赤黒い血痕がべったりと付着していた。

誰かが張り付けられていたような跡。


佐々木が近づいていく。

「なんだこれ?学校らしくないオブジェだな」

「そこ?」

相良は呆れたような声で言う。

その横で赤峰が少し考えてから

「そうですね。こういうものは学校じゃなくて相良君の部屋に置きたいです」

「置かないよ」

「映えますよ」

「なにがだ!」

「素敵なのに」

「もうすでに陰湿とか陰険とかの領域超えるだろ」

「陰湿は認めるんですね」

「それも認めない」

十字架に近づいた田中が何かに気付いた。


「これを見て」

血塗られた十字架に刻まれた文字。


「湊先生の命が惜しければ明日またここに来い」


と刻まれている。


沈黙...そして佐々木が真っ先に叫んだ。


「また志水か!あいつ!!」

「違うぞ」

佐々木の背後から声がした。

振り返るとそこには志水が立っていた。

「そして先生を呼び捨てにするとは良い度胸だな」

「ああ、そこは気にするんだ」

相良はつぶやいた。


志水は十字架に近づき文字を見る。

無言だった。

無言で十字架の文字を見つめる志水。

しばらくの沈黙。

こめかみに青筋が浮かび唇が震えた。

十字架を叩き叫んだ。


「お前らぁぁぁ!!!何しやがった!!湊先生はどうした!!」

全員が一瞬ビクッとなったが金澤が冷静に返す。

「どうしたもこうしたも...先生がやったんですよね」

「俺は何もしていない!」

「そんなわけ...」

田中もうなづきながら答える。

「だって先生がさらったんですよね」

「そうだがこれは違う!」

「これは?」

「そうだ!湊先生は昨日からずっとここに貼り付けられてるはずなんだ」

「それはそれでひどいな」

「ひどくない!ひどいのはお前だ相良!」

「なんでだよ」

「湊先生を見捨てたお前らが本当にひどいんだ...そして今さらなる犠牲が...」

志水は本気で驚いていた。

その表情からは余裕が消えていた。

それはつまり...。


「別の何かが動いているわね」

田中の一言がみんなの心に刺さった。


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