scene4 呼び出し
翌日の放課後。
相良たちは全員職員室に呼び出されていた。
廊下を歩きながら全員が首をかしげていた。
「数学か…この間のテストの件かな…」
金澤が深いため息をつく。
「ああ、あり得るな。俺も悪かったからな...」
佐々木も遠い目をする。
「俺は別に悪くなかったのに」
相良の言葉に赤峰がうなずいた。
「そうですよね相良君成績良いですからね」
「そういう赤峰はどうなの?」
「...赤点...ではないです」
「微妙な表現だな」
「そういう意味では私も問題はないはずよ」
「田中は勉強できそうだもんな...」
「できるわよ」
うらやましそうに見る佐々木に田中は即答した。
その場にいた全員少しだけ腹が立った。
そんな話をしながら職員室に到着した。
扉を開け中に入る。
「あれ?誰もいない?」
静まり切った職員室に相良は違和感を感じた。
「なんだよ。呼び出しておいて」
「本当よね。わざわざ来てあげたのに」
佐々木が文句を言い、金澤が同意した。
その時背後から声が聞こえた。
「何か文句でもあるのか?」
振り返るとそこには細身で銀縁眼鏡の神経質そうな男が立っていた。
「しっ志水...先生」
「佐々木、なにか先生に文句でもあるのか?」
「な、ないっす。ありません」
「ならいい。全員奥へ来い」
職員室中央にある志水のデスクへと移動する。
志水は椅子に座ると全員を見て深いため息をついた。
「お前らなんで呼ばれたのかわかるか?」
「さあ?」
全員が顔を見合わせ綺麗にハモっていた。
志水の眉間にしわが寄った。
それでも五人は不思議そうな顔をする。
なぜ呼ばれたのか...その理由が全く浮かんでこなかったのである。
「おまえらな...」
そういいながら志水は机の引き出しを開け一枚の紙を取り出した。
「これに見覚えはないか?」
バン!と机の上に置かれる。
相良たちはのぞき込んだ。
そこに書かれていたのは...。
湊の命が惜しければ放課後体育館裏に来い!!!
沈黙...そして数秒後に田中が口を開いた。
「...ああ、そういえばそんなものありましたね」
「忘れてたのか...」
「ええすっかり」
「即答すんなよ」
相良は完全にあきれ果てていた。
佐々木も相良同様にあきれ顔になる。
「お前、昨日の事件だぞ。しかも結構衝撃度の高い」
「昨日だった?結構前な気がしたんだけど」
「昨日だし結構前に起きてるんだったら大問題だよ!」
金澤も頭を抱える。
「...信じらんないわ」
「お前、その感じ絶対に忘れてたよな」
「...覚えては...いたわよ。興味を失ってただけで」
「あんまり変わんないな」
相良は金澤を田中と同じカテゴリーとして処理した。
「相良お前そんなこと言ってお前だって忘れてただろ」
「覚えてはいる。ただ行かなかっただけだ」
「おう...」
「行かなかっただけだぞ」
「二回言うな!」
志水の眉間のしわがより深くなり、こめかみを押さえ
そして低い声で話し始めた。
「つまり...お前らは、脅迫状を受け取った...そうだな」
「はい」
「その内容は教師誘拐を示唆するものであり湊先生は命の危機にさらされていた」
「はい」
「…にもかかわらず誰も報告しなかった...そういう事か」
「そうなりますね」
田中がさらっと答えた。
「そうなりますじゃない!命の危機だぞ!」
志水の怒号が鳴り響くが田中は気にしない。
「そうですね...でも、先生は知らないかもしれませんが湊先生に命の危機はないので大丈夫です」
「それでも普通報告とかするだろ!」
「でも悪魔ですし」
「悪魔だとしても!」
「だとしたら助ける義理ないし」
と佐々木。
「先生嫌い」
と金澤。
「天罰だと思いました」
と赤峰。
「面倒くさかったので」
と相良。
全員が思い思いの理由で港を助けにはいかなかった。
そして今それを正直に告白した。
志水の教師生活にあってかつてない問題発言の連発に志水はぽつりとつぶやいた。
「湊先生が可哀そうになってきたな...」
重苦しい沈黙がしばらく続き、志水は五人の顔を交互に見た。
「おまえら、湊先生ずっと待ってたぞ」
「待ってた?」
「そうだ。夜中もずっと待ってたぞ」
「え...?先生がなんでそれを...?」
相良は嫌な予感しかしなかった。
「その手紙を俺が出したからだ」
「誘拐犯じゃん先生」
「違うぞ」
「違わないよ!」
腕を組みながら見ていた田中が口を開いた。
「…と言う事は悪魔関係者ってことかしら?湊先生が悪魔って言うのもさらった受け入れてたし」
志水は不敵に笑う。
「ふっ、そうだやっと気づいたか」
その瞬間金澤が声をあげる。
「うっそ!志水先生に憑いてもらったら数学のテスト楽勝じゃない」
全員が金澤を見た。
発想が正気じゃない。
赤峰が呆れたように言う。
「でもずっと一緒にいることになりますよ」
金澤の表情が固まり志水を見る。
「…え…それはきつい...無理」
「おい!何を勝手な事を言ってる!!」
志水の額に青筋が浮く。
そして机をバンバンと叩いた。
「まずは!!先生を待たせたことを謝れ!!」
「…!」
驚き硬直する五人。
「そして今なお体育館裏で拘束されている湊先生に深くお詫びしろ!!」
沈黙...そして相良は恐る恐る口を開いた。
「拘束したの先生じゃ...」
志水はじろりと相良を睨んだ。
「相良...言い訳は良くないぞ」
「事実です」
「言い訳をするな」
「いや...事実...」
「言い訳をするなと言ってる」
「いや...だから事実...」
そんな小学生みたいなやり取りに田中が割って入った。
「それで先生は私たちを呼び出して何をするつもりですか」
その瞬間、志水の顔から表情が消えた。
職員室の空気が重苦しく冷たくなる。
確実に何かがそこにいる。
眼鏡をはずした志水の瞳が怪しく光る。
「ここで死んでもらう」
ガチャリと職員室の鍵が閉まる音がした。




