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俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


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scene3 脅迫状

朝の喧騒が消えた放課後。

夕焼けに染まる街を湊かえでは一人で歩いていた。

私服姿の彼女はどこから見ても普通の女性だ。

中身は悪魔だとしてもだ。


「全く...近頃の高校生は油断も隙もないわね」

脳裏には問題児たちの顔が浮かんでいた。


悪魔を食べる男子高校生。

悪魔を倒そうとする男子高校生。

学校を燃やそうとする女子。

悪魔を食べさせる女子。

そして同棲しようとする女子。

ロクな連中ではない。

特に同棲だなんて...。


「まったく、教師なんてもっと楽な仕事かと思っていたのに...」

その時だった。

ぞくりとした。

背後に気配を感じる。

同じ...自分と同じ匂い...悪魔。

振り返る。

そこには一人の男が立っていた。

長身。

黒いスーツ。

銀縁の眼鏡。


「なんの用かしら?」

「わかってるだろ。なぜ見逃した」

「見逃したわけじゃないわよ」

「佐々木家の抹殺、それは俺たち悪魔の悲願」

「わかってるわ今日は時間外だっただけよ」

「時間外...?俺たち悪魔に時間は関係ない」

「向こうにあるのよ」

「いつからそんな人間臭くなったのか...失望たよ」


夕暮れの中に不気味な笑みだけが浮かんだ。


翌日。

1-Bの教室では。


「湊先生休みらしいよ」

「え、マジ」

「めずらしいね」


等と会話が飛び交っていた。


そんな中赤峰は腕を組み勝ち誇った。

「天罰ですね」

「なんのだよ」

相良が嫌そうな顔をする。

「私を邪魔した天罰です」

「絶対違うよ」

「天は見ているのです」

「天もそんな理由で教師一人を消したりしないよ」

「教師の前に悪魔です。あれ」

「悪魔だけど...」


その時、田中がそっと近づいてくる。

そして一枚の髪を持っている。

「下駄箱にこんなものが入っていたわ」

「ラブレターか?」

相良が興味なさそうに聞いた。

「そんなつまらないものではなさそうよ」

そういうと田中は封を切り紙を広げた。

広げた紙をのぞき込む

そこには大きな文字でこう書かれていた。




湊の命が惜しければ放課後体育館裏に来い!!!



赤峰が口を開いた。

「…やっぱり天罰です」

「違うよ。完全に誘拐だよ」

「いい気味です」

「悪い部分が全開で出てるぞ」


田中が紙を見ながら言う。

「で、どうするかよ」

「どうすると言われても...」

相良は返答に困る。

「放っておきましょう天罰を思う存分食らえばいいんです」

「そういうわけは...」

「どうせ死なないんですよ」

「いや...まあ...」

困り果てる相良の横を佐々木が通り過ぎる。

「あ、佐々木!これ...これを見てくれ」

「ん...?」

しばらく見てから佐々木が答えた。

「放っておけばいいじゃね?だって悪魔だし」

「そうよね」

田中がすんなり同意する。

「待て!お前ら人として」

「人として人は助けるが悪魔は俺の範囲外だ」

「だよね」

「確かに!うざい時もあるし変な先生だし悪魔だけど俺たちの担任だぞ!もうお前らじゃ話にならない。ねえ金澤さん」

相良は金澤に紙を見せた。

「うーん別に助ける義理ないし先生嫌いだし」

「お前もか…嫌いだとしてだよ」

佐々木がじっと相良を見た。

「なんだよ」

「なんか...お前意外といいやつなんだな」

「そうねやさしい所はあるようね」

田中が関心した風に言う。


「みんな俺を何だと思ってるんだ」

「悪魔泥棒」

「金澤さん...」


そんな中、赤峰だけが微笑んでいた。

「大丈夫です」

「何が...?」

「相良君が優しい事...知ってます」

相良の手をそっと握った。

「あ、赤峰さん...」

相良の顔が少し赤くなった。


「だから悪魔として大成できないんです。もっと陰湿を取り込んでいきましょう」

「全然褒めてないなそれ」

「当たり前です。成長するまで厳しくします」

「なんでだよ」


うんざりする相良に田中が言った。

「そこまで言うならさ相良君が助けに行ったら?」

「俺が...?」

「そうよ」

その言葉に佐々木が反応した。

「確かにそうだな。お前が行けば十分だ」

「え?ひとり?」

「あっそれいいわね。私にもなんの害もないし」

金澤もあっさり同意する。

しかし赤峰は。

「相良君が行くというのならついていきます。気乗りしませんが...」

「いや...二人だけはちょっと...」

「え?行くの?行かないの?」

田中は突き詰める。

「いや...みんな行くなら...って」

「行かないわよ」

「私も行かない」

「行くわけないだろ」

「相良君次第...行きたくないけど」

「やっぱり...面倒くさいかな...」

「一緒ね私たちと」

「田中と一緒か…ちょっとやだな」

「じゃあ行くの?」

「行かない」

「一緒ね気が合うわ」

「合いたくないな」

「じゃあ決まり全員助けに行かないってことで」

「まあ妥当だな」

「じゃあ私帰るね」

教室を出ていく金澤。

こうして教師誘拐事件は未解決のまま、翌日を迎えることとなった。



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