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俺の右手に悪魔がいる件  作者: 南蛇井


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scene5 暗闇の悪魔の力

音楽室は地獄と化していた。

ピアノの不協和音が響き渡り無数の指が空中を這いまわっていた。

佐々木が起き上がる。


「田中…ちょっと時間稼いでもらって良いか…」

「何をする気?」

「空間を閉じる...あいつの力を半減させるぞ」

「無理よ」

「?…なんでだよ」

「私は非戦闘員よ」

田中は悪びれることなく堂々と答えた。

「じゃあ何しに来たんだよ!!だったら金澤!!」

「無理に決まってるじゃない。今私悪魔持ってないし」

「役に立たねえな!」


空中を這いまわる指の動きが止まった。

「おい!来るぞ!」

佐々木が叫んだ!


「逃げるわよ」

「田中さん!逃げるってどこによ!?」

「とにかく動いてもうすぐ来るはずだから」

「来るって何がよ!」

「戦闘要員よ」



襲い掛かる無数の指。

机が裂けピアノが砕けた。


「うおぉぉ!!やべえぞ!!」

「きゃっ!」

必死に逃げる三人。


音楽室の扉が開かれる。

「相良君!こっちですわ」

勢いよく飛び込んでくる赤峰の後をやる気なく頭を下記ながら入って来る相良...その顔はやる気ゼロである。

「そんなに慌てなくても...」

言いかけて固まった。

目の前に広がる荒れ果てた光景。

見慣れた音楽室とは別のものだった。

荒れ狂う悪魔と逃げ回る三人。


「…なにこれ...どういう状況?」


茫然とする相良に赤峰が言う。


「相良君!先!越されてます!!」

「...むしろ終わってくれててよかったんだけど...」

「やる気が低すぎます」


その時、田中が相良の姿に気づいた。

「遅い!!たるんでるの?」

「そもそもやる気がないんだが...なんで俺怒られてんだよ」


佐々木が攻撃をかわしながら叫んだ。

「いいから助けろ!!」


湊の顔が相良たちに向いた。

「残酷に殺される子供が増えたわね」

「素敵...なんか陰湿で危険な感じがします。相良君、食べましょう」

「危険なテンションの上がり方するなよ」


そして相良の右手が大きく脈打つ。

「なあ...行くのか?面倒くさいけどやってやっても良いぜ」

「気が乗らないな...」

相良は右手が赤黒い炎を纏った悪魔へと変わっていく。

湊が目を見開いた。

「相良君...悪魔だったのね。だったらなんで悪魔狩りの味方をしてるのかしら…?」

「俺は悪魔じゃない...悪魔を食べただけです!」

「相良君...悪魔より悪魔ね」

「そんなんじゃないんです」

「あなたから殺したほうが良さそうね」

湊の指が一斉に相良に向いた。

右手の悪魔と湊がにらみ合う。

その時佐々木が剣を床に刺した。

「相良!援護するぜ!」


床に白い光が走り、空間が白く染まった。

佐々木が作り出した閉鎖空間。


「これは...?」

動揺する湊に対してにやりと笑う佐々木。


「さあ空間は閉じた。閉鎖領域じゃあ悪魔の力は半減だぜ」

刀を突きつけポーズを決める佐々木。

それに対して相良は不服そうな顔をする。

「どうした相良?」

「いや...これってさ...俺の力も半減してない?」

「あ...」

佐々木は気づいた。

「お前も悪魔だった...」

「俺が悪魔なわけではない...右手に悪魔がいるだけだ」

「やっぱり悪魔じゃねえか」

「本体は完全に人間だよ」

「どっちでもいいから早く倒してよ!」

金澤が叫んだ。

「でも相変わらず悪魔のやる気半減だぞ」

右手の悪魔はうなだれている。

「あーなんか急にやる気ねえ。だりぃし右手に戻せよぉ」

「不安しかねえ」

「相良君なら半減してても大丈夫です!」

「赤峰さん根拠ないよね」


「ごちゃごちゃとうるさいわよ」

ばきばきっ!とした音が鳴り爪が伸びる。

無数の爪が槍のように壁や床に突き刺さる。


「そんなもんじゃ俺の空間は破れないぜ」

「俺も半減してるから意味のない空間だけどな」


右手の悪魔が、のそりと歩き湊に近づいていく。


「あーだるいだるいだるい...ガキどもよぉ。この程度の敵お前らでなんとかしろよ」

「出来るわけない、出来ないから呼び出してんだよ」

「まったく...」

悪魔がため息をつく。

「いいから早くやれよ!!」

必死で攻撃をかわしながら佐々木がキレた。

「あ?おまえやんのか...こら」

悪魔ににらまれる佐々木。

その様子を見た赤峰はつぶやいた。

「やっぱり暗さが足りませんね。口ばかり悪くなってます」

「あっ?おまえ燃やすぞ」

「ほら、そういう短気なところも陽キャっぽいです」

「短気と陽キャは関係なくないか…まあいい...結局ロクな事がないってことだけはわかったよ」


悪魔が地面を蹴り黒煙をまき散らしながら湊に拳を叩き込む。

佐々木が目を見開いた。

「待て!そいつは!」

「問題ない!触れちゃいけないなら...焼き尽くす!」


轟音とともに爆炎が白い空間を埋め尽くし湊を包み込んでいく。


だが次の瞬間、炎の中から不協和音が響く。


ぎぃぃいいいん!


音が炎を震わせる。

炎が崩れ消えていく。

湊がゆっくり現れ笑った。

裂けた口が広がっていく。


「残念だったわね」


相良の表情に焦りの色が見えたその時。


「相良君!違います!!」

赤峰が叫び真剣な目で相良を見る。


「相良君の本質...炎じゃない闇です!」


そして相良を指さす。

「あなたの心の闇を表した暗闇の悪魔の力を使うのよ!」

「いや、俺そんなに病んでるつもりはないんだけど...」

「赤峰さんの言うとおりね」

田中は感心したようにうなずいた。

「お前まで闇路線に乗っかるのか...?」

「相良君あなたの闇を出すのよ」

佐々木も叫んだ。

「そうだお前の本気を見せろ!」

「それがあなたにピッタリよ」

金澤も声を出す。

「みんなして俺を陰キャ闇落ち人間みたいに扱うなよ。そんなに病んでるつもりはないんだけど...」

そう言いながら右手を見る。

「おい悪魔!闇だ闇の力を使え」

「俺に命令すんじゃねえぞ。余計にだるくなるだろが」

「じゃあどうすんだよ」

「俺の好きにやらせてもらうぜ」


悪魔の炎が揺らいだ。

揺らいだ炎がそっと色を失う。

そして黒くなった。


黒い闇はゆらりと湊へ近づき覆っていく。

闇が空間を支配していく。


「無駄よ!」


音が爆発した。

しかし音は響かない。

湊の顔がゆがんだ。

そこには音がなかった、

何もない真っ暗闇だった。

光も音も...全手の存在を飲み込む闇の世界。

湊の声が震えた。

「...これが...相良君の...世界…」

悲鳴を上げることすら出来ないまま飲み込まれていく。


数秒後闇が消えそこにはぐったりと倒れた湊がいた。


相良が慌てて駆け寄る。

「お、おい!」

湊は薄く目を開けかすれた声でつぶやいた。


「……あなたの闇……深すぎるわ……」


そのまま、がくりと首が落ちた。


沈黙。


「謎の言葉残して死んでくなー!!」


田中は冷静に状況を見る。

「これは殺人事件よ佐々木君」

「し、死んだ!?どうすんだよ金澤!なあ!?」

「え、部活から殺人事件!?」

湊の死に反応する三人に対して赤峰だけ反応が違った。

「素敵な闇ですわ……」

「感想がおかしいんだよお前は!」


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