scene4 不協和音
そんなやり取りをしている一方、中庭では...。
田中がベンチに座りまったりとしていた。
金澤が不思議そうに効く。
「ねえ...早くいかないと先越されちゃうよ?」
「大丈夫、問題ないわ」
「何が大丈夫なのよ」
「大本命が出てから動けばいいわ」
「大本命?何よそれ」
「待ってればわかるわ。大物を釣り上げるわよ」
その時。
ドン!!
大きな音が聞こえた。
「何、この音?旧校舎のほう?」
「ほら、待ってたかいがあったわ」
「さっき言ってた本命?」
「そうよ」
田中は立ち上がりゆっくりと歩き始めた。
旧校舎では人気のない廊下を佐々木健吾は1人で歩いていた。
「変だな...」
佐々木は異変を感じていた。
いつもなら低級な悪魔がその辺にうようよいるはずなのに今日に限って一匹もいない。
それなのに悪魔の気配だけが感じられた。
佐々木はゆっくりと音楽室の扉をあけた。
薄暗い室内に古びたピアノが置かれている。
その横に...。
「あら?佐々木君、どうしたの?」
担任教師の湊かえで(みなとかえで)が立っていた。
「探し物?」
「いや...ちょっと...」
何か嫌なものを感じた。
背筋がぞくっとする感覚を佐々木は感じた。
確かに悪魔の気配がある...。
「...先生ってさ、何者?」
「あなたのクラスの担任で音楽教師よ」
「じゃあさ何でそんなに悪魔臭いんだよ!」
佐々木の手に刀が握られる。
湊は笑った。
「ふふ、気づいちゃったの?楽に死ねなくなったわね」
湊の口が裂けた。
耳元まで裂けていく。
「悪魔狩りをする高校生...あなただったのね」
指が伸びた。
骨がギシギシと音を立て軋み、鋭い爪に変わっていく。
「くそっ悪魔に憑かれていたのか…」
「間違った認識ね。憑かれるんじゃないわ」
「…っ事は…」
「悪魔そのものよ」
無数の伸びた指がヘビのようにうねり佐々木に襲いかかる。
「おい!俺今、仕事時間外なんだけど!!」
「関係ないわ」
「ちっ、かわしきれねえ」
手に持った刀で攻撃を受けた…その時。
音が鳴った。
不協和音、
「ーーーっ!!」
音の波が空気を揺らし衝撃波となっていく。
佐々木の体が吹き吹き飛んだ。
「がぁっ!!」
壁に叩きつけられる。
視界が揺れ、耳鳴りが止まらない。
「いい音でしょう?」
誰も触れていないピアノが鳴り始める。
不気味な旋律が空間を埋め尽くす。
佐々木は歯を食いしばる。
「先生...ちょっと強すぎないか…」
佐々木はぐらつく体を無理やり起こした。
耳鳴りがおさまらない。
視界が揺れる。
それでも悪魔から目を離すわけにはいかない。
「くそっ」
佐々木は港を睨みつける。
無数の指が視界の中で絡み合い揺れる。
「触れた瞬間か...」
刀が触れた瞬間に衝撃が発動していた。
「だったらよ」
佐々木は呼吸を整え意識を集中する。
湊が笑った。
裂けた口がさらに歪み指のうねりが大きくなる。
次の瞬間。
ぶわっ!!
指が伸びる。
無軌道に絡み合いながら空中を這う。
そして一斉に佐々木に襲い掛かる。
「終わりね...」
「っ!」
佐々木は床を蹴る。
右へ!左へ!
指の間に滑り込む。
爪が頬をかすめる。
触れれば衝撃波が来る。
だったら...佐々木はすべてをかわしていく。
「指に触れなければどうってことない!」
深く踏み込み一閃!
剣先が湊の体に触れる。
がぁぁぁあん!!
不協和音が響く。
「ぐあっ!!」
佐々木は吹き飛び、譜面台を巻き込みながら床に転がった。
譜面が舞う。
「なんだよ...指だけじゃねえのかよ...」
湊は楽しそうに笑う。
「音楽教師だからね。音はどこにでもあるのよ」
ピアノの音がさらに激しく狂ったように音をかき鳴らす。
「くそが...」
佐々木の視界が消えかける。
その時だった。
「佐々木君!」
音楽室の扉が勢いよく開いた。
金澤実花...そしてその後ろには田中。
金澤は倒れている佐々木を見て目を見開く。
「倒れてる!」
田中は冷静だった。
周りを見渡し。
「苦戦してるわね」
「見りゃわかるだろ...って言うか心配しろよ!」
田中はしばらく考えてから答えた。
「でも...予想通りだから...多分...佐々木君やられるかな...って」
「予想してんならもっと早く助けに来いよ!」
「確かに...それはそうね...佐々木君死にそうだし…」
金澤はあきれた顔をしながら言った。
「あなたたちも...死んじゃうのね」
湊の指がゆらりと三人の方へ向けられる。




