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(4)開拓村

「――という感じで、ヴェラが塔の壁ごと、悪い錬金術師をぶっ飛ばして、塔から脱走できたんだ」


 話を締めくくったエリンが、どや顔で胸を張る。


「ねっ、ヴェラって、すごーく格好いいでしょう!」


 肝心の壁を吹き飛ばした本人であるヴェラはというと、サイを背負ったまま顔を引きつらせていた。ふっと小さく、溜息に近い息を吐く。


「……そして、あなたはわたくしのずっと後ろで、口をぽかんと開けて見ていただけだったわね」


「うう……そういうのはいいのっ!」


 今日一日、エリンはサイの隣で、かつて自分たちがどうやって塔を脱出したかを、事細かに語り聞かせていた。

 サイはというと、依然として何の反応も返せないままでいた。けれど、それでもいいとエリンは言う。彼が何も話さずとも、ただ声を聞かせるだけで、心の奥に何かが届くかもしれないから、と。


「だったら、明日は開拓村の話ですわね。――わたくしたちが、いかに『人間』の真似事をして、無様に、それでいて必死に生きていたか。その滑稽な記録をね」


 今夜の野営地を見つけたタイミングで、ヴェラはエリンにそう告げた。


「あはは、ヴェラったら言い方! でもそうだね、あの時は本当に必死だったもんね」


 エリンはヴェラの毒を軽快に受け流し、楽しそうに話題を選び始める。


「任せて。どの話をしようかな。あの時の酒場の話か、テントを譲ってもらった話か……」


 相変わらず楽しそうに話題を探すエリンを横目に、ヴェラは土魔法で簡易なシェルターを構築した。風除けと外敵への目隠しを兼ねた、岩壁のような魔法の殻だ。

 サイをテントに敷いた寝袋へと休ませ、彼女たちも一枚の毛布にくるまって身を寄せる。種火を少しだけ残したまま、夜が静かに更けていった。


 そして、翌朝。

 テントの入口をそっとめくると、サイがすでに目を覚ましていた。昨日とは違い、はっきりとした視線でこちらを見ている。

 目が合った――その小さな変化に、ヴェラは思わず息を呑んだ。


「サイ、おはよう」


 声をかけると、彼は微かに眉を動かした。反応らしきものを示したのは、これが初めてだった。


「ヴェラ……! 今、何か反応しなかった?」


 エリンがテントに顔を突っ込んできて、サイの横顔を覗き込む。昨日はただ目を開けているだけだった彼が、今はヴェラの声に、わずかに眉をひそめたのだ。ゆっくりとこちらに視線を移し、首が微かに動く。


「わからないけれど、昨日よりは確かに……表情に生気が宿ってきた気がするわ」


「じゃあ、やっぱり効いたんじゃない? ほら、話しかけてた甲斐があったってことだよね!」


 嬉そうに笑うエリン。その屈託のない笑顔につられて、ヴェラも思わず微笑んでしまう。サイはまだ立ち上がることも、言葉を発することもできない。彼女たちの声がどこまで届いているのかも不明瞭だ。


 ただ、音としては認識しているようで、彼は彼女たちの口元を不思議そうに見つめている。そんな彼を再び背負い、彼女たちは今日も荷造りを終えて旅の続きを始めた。


 出発の支度を整えたエリンが、大きな荷物を担ぎながら振り返る。


「じゃあ、今日は脱出してからの話ね! 開拓村に行くまでの道のりとか、いろいろあったんだ――」


 今日も一日、エリンのお喋りが続く。

 無反応の相手に向かって、まるで風に語りかけるように、けれど一言一言を慈しむように。ヴェラはそんな彼女の横で、ただ静かに歩を進めながら、空を仰いだ。


(少しずつでいい。少しずつ、取り戻していければ)


 そう願いながら、大陸の果てを目指す三人の旅は続いていく。


 ◇◇◇◇◇


 塔を出て最初に感じたのは、風の匂いだった。

 湿った苔と落葉の香り。塔の中の、あの消毒液のような無機質な臭いとは違う、生臭くも鮮やかな「自由」の味がした。


 ヴェラとエリンは、深い森に囲まれた細い道を辿り始めた。地図も目的地もない。ただ、あの忌まわしき塔から一歩でも遠ざかることだけが、唯一の指針だった。


 しばらくして、小さな川を見つける。「水があれば、なんとかなるかもね」というエリンの提案に従い、彼女たちは川沿いに進むことにした。

 塔を飛び出した時のままの格好で、荷も火を熾す手段もありはしない。太陽が傾き、森の空気が冷え込み始めると、身体の芯から絶望的な震えが這い上がってきた。


「ねえ、ヴェラ。私、火とか噴けないかな?」


 エリンが突然そんなことを言い出し、口を尖らせて何かに集中するような顔をした。次の瞬間、小さな炎が、ぽっと彼女の口元から舞い上がった。


「……やった!」


 エリンは目を見開き、ぱぁっと笑った。


「ほら、私って半分、竜のようなもんだし!」


 さらりと言って、彼女は得意げに胸を張る。『竜神の鱗』から生まれたという自身の出自を、彼女は少しも重く捉えていないようだった。

 ヴェラが呆気にとられて固まっている間に、エリンは手早く枯れ枝をかき集め、嬉々として焚き火を起こしていく。


 炎の暖かさは、想像を絶するものだった。彼女たちはその夜、焚き火のそばに身を寄せ、剥き出しの地面に直接身体を横たえた。


 それからの日々は、さながら野生動物のような暮らしだった。

 昼は川沿いを歩き、夜は火を焚いて眠る。時に飢えた獣に襲われることもあったが、ヴェラが土の壁を築いて応戦し、エリンがその炎で追い払った。


 野宿には限界がある。ヴェラは地面に掌をつけ、土魔法で簡素なシェルターをこしらえた。雨風はしのげたが、それでも夜の森は不穏だった。


 何日そうして歩いただろう。視界が開けた先に、小さな集落が見えた。


「村……だね」


 エリンがぽつりと呟いた。けれど、彼女の頭に生えた角を見られるのは危険だ。


「……あなたはここで待っていなさい。わたくしが様子を見てくるわ」


 ヴェラは一人、ふらつく足取りで村へと向かった。

 門を見張っていた二人の門兵が、彼女の姿に気づく。一人が慌てたように走ってきた。


「おい、大丈夫か? 寒かったろう、何か羽織るものを……」


 泥にまみれ、今にも倒れそうな状態でありながら、ヴェラは無意識に背筋を伸ばした。

 塔の中、あの男の機嫌を損ねないため、いつの間にか身体に染み付いてしまった「人間としての」立ち居振る舞いなのか。それが、外の世界の人間と対峙した瞬間、本能的に発動してしまったのだ。


「……ご配慮、感謝いたします。実は、すぐ近くに“妹”を待たせているの。……恐縮ながら、もう一着、いただけないかしら?」


 言葉を返すと、門兵はなぜか一瞬呆気に取られたように目を丸くし、それから何かを察したような顔で、彼女と背後の暗闇を交互に見た。


「あ、ああ……もちろん。すぐに持ってこよう」


 門兵たちはどこか恐縮したように快く頷き、上等なローブを二着持ってきてくれた。

 ヴェラは川辺に戻り、フードを深く被ったエリンとともに、村へと足を踏み入れた。


 案内された小屋で、彼女たちはまず、湯気の立つ木皿を差し出された。具材もまばらな、何の変哲もない野菜のスープ。けれど、口に含んだ瞬間に広がったのは、塔の中の栄養食とは比べものにならない、不格好な「生」の味だった。


「あの……。どうして、これほどまでに目をかけてくださるのですか?」


 震える手で皿を抱え、ヴェラはたまらずに尋ねた。何か裏があるのではないか。この後に、またあの塔で味わったような痛みが待っているのではないか。

 だが、門兵の男は、焚き火に薪をくべながら事もなげに笑ったのだ。


「ここは開拓村だからな。元々、災厄で行き場を失った連中が集まってできた場所だ。昨日まで死にかけてた奴が、今日は隣で家を建ててる。……ここでは『生きてりゃいい』。それが唯一の流儀なのさ」


 差し出されたその言葉の無防備さに、ヴェラはつい口を滑らせてしまった。


「……開拓でしたら西の方へは、近づかない方がいいですわ。あそこにある塔は、とても危険な場所ですから」


 門兵たちは顔を見合わせ、それから少しだけ神妙な顔をして頷いた。


「ああ、あの塔な。近づこうとした連中が、野獣やら見えない壁やらに散々追い返されたって話だ。忠告ありがとうよ、お嬢ちゃん。……無理はするもんじゃない。もう誰も近づきやしないさ」


 深追いしてこないその声音。自身の出自を悟られるのではと身構えたが、それ以上の詮索は、夜の闇に吸い込まれるように消えていった。


 村には、語れぬ過去を持つ者が大勢いる。互いの「昨日」を問わない。それが、この過酷な開拓地での、精一杯の優しさだったのだ。


 その晩、ヴェラとエリンは、村の小さな小屋で寄り添って眠った。焚き火のない、静かな夜。けれど、窓の外に広がる星空は、塔のレンズ越しに見たものよりもずっと近く、彼女たちの明日を照らしているように見えた。


 翌朝、ヴェラはエリンに提案した。


「しばらくここに滞在して、装備を整えましょう。食べ物も、道具も、まだ何も持っていないもの」


 エリンは二つ返事で頷くと、さっそく村の酒場に顔を出し、その日のうちに働き口を見つけてきた。その交渉の速さと、驚異的な馴染みっぷりには、ヴェラも少し唖然とした。


「え、もう決めてきたの……?」


「うん。ご飯も出るって! 服も用意してくれるって!」


 用意された使い古しの服の中には、幸運にもメイド帽のようなものがあり、それを深く被ることで彼女の角をうまく隠すことができた。

 エリンは酒場での仕事を始め、あっという間に店主や客たちの人気者になっていった。弾けるような笑顔、誰の懐にも飛び込む気さくな振る舞い。彼女は、まるで最初からこの村の娘だったかのように景色に溶け込んでいった。


「……順応が、早すぎるわ……」


 ヴェラは少し遅れて、木こりの仕事を手伝うことにした。山に入り、間伐された薪を集め、それを一人で背負って運ぶ彼女を見て、村の男たちが口をあんぐりと開けていた。


「お、お嬢ちゃん……そりゃあ、助かるが、すごい力だな……!」


 驚愕する男たちの視線を背に、ヴェラはさらに太い薪を軽々と肩に乗せた。


「……身体を動かすのは、得意なの」


 彼女はそう短く答え、少しだけ口角を上げた。それは、愛想笑いなどではない。ふと、滑稽さに襲われたのだ。


(……あの三流魔術師が、わたくしを頑丈に作りすぎたおかげで、今の暮らしが成り立っているなんて)


 憎んでやまないあの男の「設計」が、今、自由を掴むための糧になっている。その皮肉な有用性が、おかしくて仕方がなかった。自嘲というよりは、もはや復讐に近い、乾いた愉悦。ヴェラはこの「異質な力」を、今度は自分のために使い切ってやるのだと、心の中で密かに毒づいた。


 ……思えば、この「力」だけではなかった。


 塔という檻しか知らなかったはずの彼女たちが、なぜこうも容易く村に馴染めているのか。人との距離の取り方、仕事のやり方。まるで、かつて遠い昔にそうしていた記憶が、血の中に最初から書き込まれていたかのように。

 彼女たちは戸惑うことさえなく、ごく自然に「人間」を演じることができていた。


 それが、失われたはずの「元の記憶」なのか、あるいは錬金術師が植え付けた「機能」に過ぎないのか。

 今のヴェラには知る由もなかったが、その「人間らしさ」さえも利用して、彼女はエリンとの明日を繋いでいくつもりだった。


 * * *


 一週間ほど、穏やかな、これ以上ないほど穏やかな日々が続いた。

 その間に、彼女たちは食器や鍋、予備のローブなどを買い揃えた。長旅を終えてこの村に定住を決めた家族からは、不要になった古びたテントや寝袋を譲ってもらった。


 そして、ヴェラは決めた。


「明日の朝、村を出ましょう」


 彼女の言葉に、エリンは荷造りする手を止めて、窓の外の村の灯りを見つめた。


「……うん。この村、みんな優しかったし、みんなの笑い声も大好き。……だから、あいつに見つかって、壊されちゃうのは……もっと嫌だもんね」


 寂しそうに、けれど自分に言い聞かせるように、彼女は笑った。


「行こう、ヴェラ。私たちがここにいないことが、この村への『恩返し』になるんだよね」


 その言葉は、あまりにも純粋で、鋭い刃のようにヴェラの胸を突いた。彼女も分かっていたのだ。自分たちが「居てはいけない異物」であることを。


 ――けれど。

 深夜、空気が不自然に淀んだ。湿った夜風に紛れて、粘土が擦れ合うような、不快な音が聞こえる。


 ヴェラはすぐに目を開けた。


「エリン、起きて」


「ん……? なに、その音……?」


 次の瞬間、村の奥で大きな破裂音が轟いた。

 彼女たちは顔を見合わせ、夜の闇へと飛び出した。


 村の中央に、月光を浴びて異形の影が屹立していた。濡れた土塊を積み上げたような巨体。感情を削ぎ落とした、虚無の眼窩。

 ――土のゴーレム。あの男が放った、塔の追手だ。


「……やはり、逃がしてはくれないのね」


 ゴーレムが軋む音を立てて腕を振り回した。一撃で木造の家屋がなぎ払われ、地面が悲鳴を上げる。


「ヴェラ……あれ……!」


「エリン、下がって。わたくしがあれを止めるわ」


 ヴェラは即座に詠唱を開始したが、ゴーレムは彼女の魔力に反応し、エリンに向かって踏み出した。


「逃げてッ!!」


 エリンは走りながら振り返る。彼女の鮮やかな赤い瞳に宿った光が燃え上がり、深く息を吸い込んだ。


「やぁーっ!」


 竜の息吹を模した赤黒い火炎が、一直線にゴーレムの頭部を貫いた。

 だが、焼け焦げすらしない。


「……効いてない!? 嘘でしょ!?」


 ゴーレムは煙を物ともせず、一直線にエリンへと迫る。その腕が、まるで巨大な鉤爪のように伸びて――。


「やめなさい!」


 ヴェラの魔力が噴き上がる。地面が鳴動し、巨大な岩塊の壁を出現させた。

 ゴーレムは立ち止まり、次の瞬間、腕を振り下ろしてその壁を粉砕する。


 土くれが飛び散り、視界が遮られる。


「くっ……!」


「いやっ……! 助けて、ヴェラ!」


 悲鳴を頼りに視界を抜けると、ゴーレムの泥の指先が、エリンの細い左腕を掴み上げた瞬間だった。


「――っ……離してっ!!」


 彼女の身体が軽々と浮き上がる。

 ヴェラは反射的に、地面に両手を叩きつけた。


「……穿て」


 地下から走る、裂けるような震動。次の刹那、地割れから鋭く尖った無数の岩槍が飛び出し、ゴーレムの胴体を根こそぎ貫いた。


 バキィッ!!という、命の通わぬ物体が砕ける音が響く。目の奥の魔力が霧散し、ゴーレムはただの土へと還り、崩れ落ちていった。


「……ふう……」


「ヴェラ、すごい……!」


「怪我はないのね? あなたが危なっかしいから、本当に……気が気じゃないわ。さあ、すぐに出る準備をしないと」


 ヴェラは、しりもちをついたエリンを抱きしめるようにして立たせると、そのまま震える彼女の肩を包み込むように抱いた。


 周囲には、騒ぎに気づいた村人たちが集まりつつある。そして、あの門兵の一人が、彼女たちを鋭く見つめた。彼は小さく頷き、目で合図を送る。


 ――詰所へ来い、と。


 ヴェラとエリンは、軋む古びた戸を押し開け、詰所へと足を踏み入れた。室内には、あの門兵二人と、年嵩の村長がいた。ランプの火が爆ぜる音だけが、重苦しい沈黙の中で異様に大きく響いている。


「……あの泥の人形は、一体なんだったんだ?」


 最初にローブをくれた青年が、低い声で口を開いた。その視線には、かつての同情は失せ、隠しきれない「恐怖」が泥のように澱んでいた。

 ヴェラはエリンの手を握り、あえて冷徹なトーンで事実だけを告げた。


「……わたくしたちは、西の塔から逃れてきたのです。あれは、わたくしたちを連れ戻すための追手です」


 彼女の言葉に、彼らはあからさまに身を引いた。


「つまり、あれは君たちを追ってきたと? ……これからも、同じようなものが来るのか?」


 別の門兵が問いかける。その声に滲むのは怒りではなく、自分たちの安寧を脅かされたことへの「拒絶」だった。

 ヴェラは、それを責める気にはなれなかった。


「わたくしたちが村を離れれば、もうこちらに災いが及ぶことはないはずです」


 沈黙が流れた。


「せっかく、仲良くなれたと思っていたのに……」


 青年のその言葉は、優しさよりも「裏切られた」という落胆に近い響きを帯びていた。

 村長が重々しく目を閉じ、引導を渡す。


「……君たちが悪いとは思わん。だが、我々は戦うためにここへ来たのではない。朝には、ここを発ってくれるか」


 エリンは何も言わなかった。ただ、繋いだヴェラの手に熱いしずくが一粒落ちた。

 ヴェラはその感触を無視するように、立ち上がって深々と頭を下げた。


「……当然の判断だと思いますわ。短い間でしたが、お世話になりました」


 * * *


 小屋に戻り、もらったテントを手早くまとめ始める。


「泣くほどのことじゃないよね。……もともと、ちょっと寄り道してただけだもん」


 荷物を縛りながら、エリンが掠れた声で呟いた。にこりと無理に作った微笑みが、暗い室内で不自然に浮いている。

 ヴェラは彼女の頭に手を置くことも、慰めることもせず、ただ冷たく言い放った。


「……ええ。所詮は“人間の真似事”よ。長続きしなくて正解だったわ」


 そう吐き捨てなければ、ヴェラ自身が耐えられなかった。


 夜明け前、空が群青色に染まる頃。暖炉の火が完全に消えたのを見届け、彼女たちは荷物を担いだ。

 入口の机に、稼いだ給金の残りと短い手紙を置く。感謝の言葉など、呪詛と同じだと思いながらも、ヴェラは筆を走らせた。


 ――お世話になりました。


 震える手で書き残したそれは、二度と交わることのない者たちへの、せめてもの決別だった。あるいは、二度と戻れない場所への、未練を断ち切るための儀式だったのかもしれない。


 朝霧に包まれた門をくぐる時、太陽が地平線をなぞり始めた。振り返ることはしない。振り返れば、その温かさに足が止まってしまいそうだったから。

 ただ一歩ずつ、泥を噛むような確かな足取りで、彼女たちは再び「荒野」へと歩き出した。

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