(39)エリンの追憶
――いま思えば、いつの間にか好きになってたなぁ。
ふと、そんなことを考える。
過ぎ去った、けれど決して色褪せない、愛おしい日々のことを。
あれは、サイが「歩く練習をしたい」って言い出した日だった。
ぽかぽかした陽だまりの中、私とサイは、柔らかい土の地面に向かい合って座っていた。
私は木の枝を握り、地面に文字を書いた。
『どうしてサイは、あんなにボロボロだったの?』
少し考えてから、いたずらっぽく笑って付け足す。
『危うくヴェラに、“ボロボロ君”って名付けられるところだったんだよ?』
サイは、ぱちくりと目を丸くして私を見た。
その顔には、はっきりと「……ヴェラ、まじか」と書いてある。
それから、慌てたように木の枝を奪い、地面にガリガリと文字を書いた。
『“サイ”でよかった』
『でしょ?』
私はふんすと胸を張り、ちょっと得意げに文字を返す。
『それ、私が考えたんだからね!』
サイは一瞬きょとんとしてから、何かを噛み締めるように、ゆっくりと書き足した。
『……エリン、助かった』
(あ)
その、たった一言が。
思ったよりもずっと真っ直ぐで、素直で。胸の奥が、ほんの少しだけくすぐったくなった。
(なんだろ)
(サイをからかうの、楽しいかも)
つい、調子に乗ってしまう。
『で、そのボロボロの原因は?』
カサッ、カサッ……と、枝が土を引っ掻く音が響く。
筆談は、ぽつぽつと続いた。
『角が現れた日に、村の連中に殴られて、袋に詰められて』
その一文に、私は思わず顔をしかめた。
「……酷い」
『一週間、馬車で運ばれて、水も食事もなし』
言葉が、喉の奥につかえた。
「……」
『で、荒野の真ん中に捨てられた』
「……それは」
『災厄の子は餓死しない。でも、死なないだけ』
『死の苦しみを、ずっと味わい続ける』
淡々とした文字。表情も変えずに書いているのに、枝を握るサイの指先が、少しだけ白く震えているような気がした。
……あー。なるほど。
想像以上の、地獄。それは、ボロボロにもなる。
『大変だったね。……今は、苦しくない?』
私がそう書くと、少しだけ間を置いて、返事が来る。
『うん』
『ふたりのお陰だ』
……そう言われると、なんだか調子が狂う。
空気が、しんと静かになってしまった。
このままだと、重くなりすぎる。サイが、また暗い顔になってしまう。それは、私たちらしくない。
少し考えてから、私は「えいっ」と正直に書いた。
『それで怪我して、衰弱して』
『……すっごく臭ってたんだね』
……やっちゃった。
でも、もう私の枝は止まらない。
『告白するとね』
『あの日のサイ、本当に臭ってて』
文字を追っていたサイが、また目をまん丸にする。
あっ、その顔。その顔は反則だと思う。さっきまでの暗い影なんて、どこかへ吹き飛んでしまった。
『一週間袋詰めなら、仕方ないよね』
慌ててフォローを書き足す。フォローにはなってない気もするけど。
『でもさ』
『ヴェラ、平気でおんぶしてたよ』
『えらいよね?』
文字を見たサイの肩が、わなわなと震えだす。
(あ、これは)
(ちょっと、やりすぎたかも……?)
『……おんぶ?』
『昨日もおんぶだったじゃない』
「!!」
……あ。今、気づいたの?
ぷぷっ。これは、面白い。サイはしばらく石像みたいに固まっていたけれど、やがて、耳まで真っ赤にしてすごい勢いで文字を書いた。
『……歩く練習がしたい』
ぶはっ。
(笑っちゃだめ、笑っちゃだめ……!)
必死に唇を噛み締めながら、私は震える手で枝を動かす。
『もちろん、手伝うよ』
そうして、サイの歩行練習は始まった。
――結局あの後、私は我慢できずに、お腹を抱えて大爆笑してしまったんだよね。
いま思い出しても……うん、やっぱり面白い。サイ、ごめんね。
*
あれは、険しい山を越えた日。
サイはまだ本調子じゃないはずなのに、それでも――“ヴェラにはもう抱えられない!”って、そんなところだけ、やけに男の子だった。
そんな必死な顔を見たら、つい、またからかいたくなってしまう。
『お姫様だっこの感想は?』
サイは、土をえぐるような勢いで文字を書いた。
『もう二度といやだ』
即答だった。しかも、字がちょっと震えてるのがもう可愛くて仕方ない。
『えー? ヴェラの腕の中、よかったじゃない』
サイはぶんぶんと首を横に振って、目だけを真っ赤にして私を睨んでくる。
(あー……この反応、ほんと好き)
『えー、嬉しくなかった?』
『ほら、あの山に入る前――』
わざと意地悪な間を置いて、私は指先で地面にさらさらと書く。
『見てたよね? ヴェラの綺麗なおしり』
『サイのえっち』
サイの肩が、びくっ!と跳ねた。
『おしりの話し始めたのはエリンだ! 君が悪い!』
ものすごい勢いで書き殴られた文字。
怒ってる……というより、“羞恥心が限界です、助けてください”って顔をしている。
ぷぷっ。
(やっぱりおもしろい)
でも――ちょっといじめすぎたかなと思って、私は慌てて書く。
『ごめん』
サイは一瞬動きを止めてから、少しだけ小さく、丸い字で書いた。
『怒ってない』
(あ、ほんとに怒ってないんだ。よかった……)
ほっとした、その時。
つい、手が勝手に動いてしまった。本当に、無意識だった。
『……ヴェラのこと、好きになった?』
サイの動きが、ぴたりと止まった。
凍りつくって、ああいうのを言うんだと思う。
ぎこちない動きで、ゆっくりとこちらを見るサイ。顔は真っ赤。耳まで、茹でダコみたいに真っ赤。
(あ、これ、図星だ)
『おや? 図星?』
『もう怒った!』
やけくそのように大きめの字で書かれたそれに、私は思わず吹き出した。
『ごめんって!』
サイはもう、ぷいっとそっぽを向いて、視線を合わせてくれない。でも、私に向けられた耳だけは、ずっと赤いままだった。
(あはっ、この反応……)
(やっぱり、楽しい)
からかうのも、笑わせるのも、困らせるのも。
全部、私だけが知っている彼の素顔で。
でも――。
なぜか、そのとき胸の奥が、ちくんと小さく痛んだ。
ヴェラを見つめるサイの横顔を思い出した時、急に息が苦しくなった。
――私、いまなら分かる。
きっとこのときに、気づいちゃったんだね。
私の一番大切な人を好きになった、目の前の不器用な男の子のことが。
いつの間にか、大好きになっていたことに。
*
あれは、サイが『災厄』になった日。
そう言葉にするとすごく大げさに聞こえるけど、実際の始まりは、びっくりするくらい静かだった。
東の水平線に、かすかな光が差し始めて。海はまだ眠たそうで、風もちょっと冷たくて。
(ああ、朝だなぁ)
私は、そんなことをぼんやりと考えていた。……静かすぎる、と思った。
この瞬間に、こんなに穏やかな朝を迎えていいはずがないのに。空も、海も、世界も――私たちがこれから迎える結末なんて、何も知らない顔をしている。
(……やだよ、サイ)
だめ。何も考えないようにしていたのに。
ちゃんと受け入れて――自分のすべきことをしないと。頭では分かっていた。
でも――サイは、静かだった。逃げようとも、泣こうともしていなかった。
静かに地面に指を這わせ、文字を書く。
『ありがとう。ここまで来られたのは、君たちのおかげだ』
(違うよ)
『君たちが霊力を操る方法を見つけられますように。そう願っている』
(そんなの、どうでもいい)
『さようなら』
(行かないで)
(サイ、生きてよ……!)
声にしたらすべてが壊れてしまいそうで、私は何も言えなかった。言葉を吐いたところで、運命が変わる気もしなかった。
それなのに。
太陽が昇った、その瞬間。サイの額にある角が、ゆっくりと――ひどくおぞましい黒に染まった。
「……!」
振り返ると、サイの身体から濃密な黒い霧が立ち上っていた。じわじわと。まるで、ずっとそこにあったものが、ようやく外へ滲み出してきたみたいに。
風が強くなって、海が荒れ始める。黒い雲が、あっという間に空を覆っていく。
(運命からは……逃れられないの?)
(サイも……私も……)
そう絶望しかけた、そのときだった。
――いま思えば。
あのとき、私の内側で思いがけないことが起きたんだ。運命の形が、ひっくり返ってしまうほどの。
《――おおっ! あの黒い霧……紛れもなく“あのお方”の霊力ではないか!》
突然、胸の奥で知らない誰かの声がした。
(え? 誰!?)
《ん? ようやくこの声に気づいたようじゃの。わしは、お前の心臓に宿っていた霊力じゃ》
(私の心臓……ってことは、私が持ってた『竜神の鱗』の意思?)
《違う、違う。竜神のものではないぞ! お前の心臓は別の竜の鱗。我が本体、『白き竜』にあった鱗じゃ!》
(え……? えっ?)
《サイとかいう小僧の角、あれこそが『竜神の鱗』じゃ!》
(サイの角が竜神の鱗!? ちょっと待って、説明が急すぎない!?)
《ええい! 今はお前と話している場合ではない!》
ズクンと、私の胸が、信じられないほど熱くなった。鼓動に合わせて、眩い光が脈打つ。
《“あのお方”――竜神の霊力が、あんなに外へ漏れ出ているではないか!》
私の体から放たれた光は空へと伸び、サイから立ち上る黒い霧のまわりを、くるくると螺旋を描くように舞い上がっていく。
(ちょっと待ってってば!)
《ああ、これはまさしく“あのお方”の……! 全部回収するのじゃー!》
(えええ!? このおぞましい黒い霧を全部回収!? それってつまり、私が『災厄』になっちゃう流れじゃないの!?)
――一瞬、迷った。
ヴェラの顔が浮かんだ。でも。
(サイが助かるなら……それで、いいか)
黒い霧が、ぐるりと方向を変える。
サイを包んでいた死の霧が、一直線に私のほうへ向かってきた。
(サイは『災厄』にならなくて済む……。そしたら、ヴェラと幸せになるかもしれないのね)
(でも、ヴェラに悪いな……。私のために、ここまで来たのに……)
《ああ!“あのお方”の霊力……! 回収! すかさず回収!》
ズズズンッ! と、重い霧が私の身体を包み込む。
重くて、冷たくて、でも……なぜか、どこか懐かしい。
「……ヴェラ、ごめんね」
声に出したら、ようやくそれが現実になった気がした。
「私が悪いの。今ごろになって、この胸の……“鱗”の声に気付くなんて」
ヴェラが、目を見開いて私を見る。
「なに……? エリン、どうしたの?」
《ぜーんぶ回収! ああ……“あのお方”の霊力……残してはならぬ……!》
(ちょっと静かにして!)
脳内でうるさく騒ぐ声を無視して、私は微笑んだ。
「もっと早く気付いていれば、違う道もあったのにね」
本当にそうだ。
「私だってね、こんなことになるなんて、思ってなかった……」
(でも、私。覚悟、決めたよ)
「でもね、ヴェラ。サイは助かるよ。もし、ふたりが無事だったら……また、私を産んでね」
(仕方ない――。次の人生は、二人の子供ってことで――我慢しよう)
「ヴェラ、少しの間、お別れだよ。また会おうね」
ヴェラの目が見開かれて、悲痛な顔で「意味が分からない」と訴えている。
(うん、意味分からないよね――ごめんね、私も今、よく分かってないんだ)
私はドンッとヴェラを突き飛ばした。
「エリーン!!」
遠くで、サイが叫んだ。ずっと失われていたはずの、彼の本当の声で。
「……サイ……よかったね……」
風雨に打たれながら、私は笑った。
「声、出るようになったんだ……。最後に聞けて……うれしいよ……」
(……やっぱり)
(覚悟なんて、全然できてなかった)
「ヴェラ、ごめんね」
「私、サイのことが好き」
その瞬間。世界が、完全にひっくり返った。
風が吠えて、海が暴れて。空が、まるで本気で怒っているみたいに唸り声を上げた。
(あー……私、完全に『災厄』になっちゃった)
《――だが、少しの間だ。どうか我慢してくれ》
(……え? 今度は誰?)
胸の奥で、また別の、低くて重い声がした。
《我は『竜神の鱗』、その霊力の一部。お前が先ほど、あの者から吸い上げた黒い霧――それが我だ》
(黒い霧の霊力……竜神の?)
《そして、わしが、“白き竜の鱗”、その霊力の一部。お前の心臓に宿っていた霊力じゃ。回収は完了したぞい!》
(シロ! ちょっと黙ってって!)
《“シロ”とはまさか、わしのことか……!?》
(クロ、“少しの間”ってどういうこと?)
《――ふむ……我は“クロ”であるか。まぁ、よかろう》
黒い声は、呆れたようにため息をついてから続けた。
《この世界を揺るがす災厄化は、我が起こしている『カモフラージュ』なのだ。とある女神の居場所を探るためのな》
(それが見つかったら、私、元に戻してくれるの?)
《ああ、元に戻すと約束しよう。……我らがすべきことが終わった後にはなるがな》
(約束だよ。だったら、協力する)
《うむ。では早速、あやつが加護する世界へと渡るぞ》
(分かった。でもどうやって行くの、クロ? 今私、超絶やばい『災厄』なんだけど)
《『災厄』になったからこそ行ける世界なのだ》
(え? どういうこと?)
《――よし……。予定よりだいぶ早いが。そら、お迎えが来たぞ》
そのとき。
低く澄んだ鐘の音が、世界に響き渡った。
荒れ狂う空が裂けて、神々しい光の剣が、ゆっくりと天から降りてくる。
(あ、知ってる。あれ、錬金術師が言ってたやつ)
(『天より降る剣』だ)
(あれ?……私、あれに貫かれて滅ぼされる流れ?)
《違うぞ》
クロが淡々と言う。
《――あれは、お前を“運ぶ”ためのものだ》
(運ぶ……?)
《――我には、旅立つ前に一仕事あるのでな。しばし話は出来ぬが、待っておれ》
(えっ、クロ!? ちょっと、行っちゃった……。仕事って何だろう?)
《ほう……あの剣、わしと同じ、“白き竜の鱗”に宿った霊力で編まれておるのう》
今度はシロが感心したように呟いた。
(シロと同じ? あの物騒な剣に?)
《……なるほどの。あの剣に貫かれることで、この世界を飛び越えるよう、大掛かりな術式が施されておるのか》
(貫かれることで、世界を飛び越える?)
《そうじゃ。竜や神の権能がなければ編むことの叶わぬ術式じゃがな》
(もしかして……あれに貫かれても、私、滅ばないの?)
《命を奪うようには施されてないのう》
とうとう、巨大な光の剣が、私の頭上まで迫ってきた。
(きゃああああぁ!! いくら死なないって言っても、あんなの絶対痛い!!)
《――待たせたな。では行くぞ!》
クロの声が戻ってくる。
(クロ、待って! ヴェラたちに「剣に貫かれても滅ばない」って伝えなきゃ!)
《問題ない。あの剣は、お前を貫いてもこの世界に留まる。先ほどの“一仕事”はそのためだ。残された剣を使えば、お前を追って世界を渡ることができると、そう理解できるだろう》
(それで、あの二人に伝わるの!?)
《我が本体、“竜神”の計略は伝わるぞ。転移先の座標についてもな》
(そうじゃなくて! 私が死んでないって、ちゃんと伝わるの!? って聞いてるの!)
《うーむ。それは人間には難しいか……》
(ちょっとクロ!! そこ一番大事なとこなんだけど!?)
《ああ、ならばうってつけの者がお前の身体にいるではないか。“彼女”に伝言を頼むとしよう》
クロがそう言った瞬間。
私の胸の奥にあった“彼女”が、ほのかに白く輝きだした。
そして――するりと私の身体をすり抜け、まるでひらひらと舞う蝶のように、地上で泣き崩れるヴェラのもとへ舞い降りていった。
《――“彼女”に伝言を頼んでおいた。うまくいけば、お前を迎えに行くよう伝えるだろう》
(うまくいけば……って。待って? 今のって)
(“白き竜の鱗”!? "彼女"って私の心臓じゃない!! 心臓置いてきちゃったの!?)
ズンッ!!!
――降りてきた剣が胸を貫く痛みは、全くなかった。
ただ、圧倒的な光が私を包み込み、ヴェラとサイのいる世界が、猛スピードで遠ざかっていく。
(ヴェラ……!)
(サイ……!)
(絶対、絶対……迎えに来てね……!!)
私の意識は、光の濁流に飲まれ、別の世界へと落ちていった。
*
そして、私は今――。
どこかも分からない、薄暗くて気味の悪い場所で、指先一つ動かせないまま、ちゃんと待っている。
(クロさぁ……どうすんの? これ)
《むう……なんとも申し開きようもない》
気まずそうに黙ってしまったクロに代わって、もう一つの声が響く。
《クロよ、謝らなくともよい》
(シロ……?)
《こうして三人水入らずじゃ。エリンも本当のところは、我らとの語らいを喜んでいるはずじゃ》
(よ・ろ・こ・ん・で・な・い!!)
脳内で全力のツッコミを入れてから、私は改めてクロを問い詰めた。
(だいたいさ、さっきの“うまくいけば迎えに来る”って。それ、結局のところ完全に『運任せ』ってことだよね、クロさん?)
《――そうとも取れるが、我は竜神の霊力。世界の因果をも操ることができる、はずだ》
(……あなたのお陰で心臓をなくしたこの身体、今、全っっく動かないんだけど!)
(世界の因果は操れるのに、身体一つ操れないって……クロ、逆にすごいね?)
《むむっ、見事な皮肉がきいておるな。さすがは我ら竜の同族よ!》
(褒められても全然嬉しくない!)
《ふふっ。素直でないのう》
(もうやだ、この人たち……じゃなくて、霊力たち)
心の中で盛大にため息をつく私に、シロが穏やかな声で告げた。
《心配せんでよい、エリン。あれは、わしの半身でもある、お前の心臓だ。お前が生きていることは、必ずあやつらに伝える》
《うむ。待っておればよい。迎えは来る》
(はぁ……)
二つの声に呆れながらも、私は少しだけ冷静になった。
よくよく考えてみれば、状況はそれほど悪くないみたいだ。素直に、そう思えた。
(私、ものすごい『災厄』になっちゃったけれど。こうして身動き一つ取れないなら、誰のことも傷つけないし、誰にも迷惑はかけないもんね)
《そうじゃな》
目を閉じれば、二人の顔が浮かぶ。
(ヴェラは賢いし)
(サイは優しい)
(大丈夫。きっと、絶対に迎えに来てくれる)
私は、暗闇の中でそっと微笑んだ。
――悲観なんて、少しもしていない。
ほんの少しだけ一足先に、目的地に着いて待っているだけ。
(ほら)
(次は、ふたりの番だよ)




