【花の乙女】リアのデビュタント
「ローゼリアお嬢様、ローゼシアお嬢様。本日の講義はおしまいにございます。お二人共、たいへん筋がよろしいので本日の夜会も安心してくださいませ。」
ダンス講師のレアラス子爵が褒めてくださいました。
「本当ですか?お兄様にエスコートしていただくのです。」
双子の姉、ローゼリアが嬉しそうに答えます。この国では15歳と半分で社交界デビューします。
しかし………
「わたくしはまだ出られないのです……リアが少し羨ましいです。」
そうわたくしはまだ出られないのです。
「何をいっているの。シアも明日デビュタントじゃないの。」
「ですが。聖子さまは明日、いらっしゃらないでしょう?」
そう。リアのデビュタントには聖子さまがいらっしゃるのに明日のデビュタントには御公務でいらっしゃれないそうなのです。
「ええ。でも明日は第一聖女さまがいらっしゃるでしょう?」
「むぅー。そういうことではないのです。」
第一聖女さまはコラリア公爵家のエミリア嬢のデビュタントにもご出席なさったと伺っております。
「おや。ローゼシアお嬢様はリィステ殿下にお熱ですか?」
レアラス子爵に問われた。
「そういうわけではごさいませんわ。わたくしはどちらかというとユリティス兄様の方が好みです。」
「そうなのですか?まあユリティス様もご令嬢受けがよろしいですからね。ではそろそろお暇させていただきますね。」
「ご機嫌よう。また後ほど。」
「ご機嫌よう。」
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「それでは、行ってくるわね。」
リアが青いドレスを来て廊下に立っています。腰の絞りまでが綺麗なグラデーションになっていてスカートは満開の薔薇のような形をしています。まるでリアが青薔薇の妖精のように見えますわね。
「行ってらっしゃい。
ファーストダンス頑張ってね。」
「ええ。」と残し、リアはダンスホールヘと向かって行きました。
「さて、
わたくしはどう致しましょう?」
まだ日が沈み終わる前です。勿論晩餐には早いですし。この屋敷にある本は大体読み終わってしまいましたし、刺繍の課題も終わらせてしまいました。
「お嬢様。
お散歩なんていかがでしょうか?」
わたくし付きの侍女、ミアが散歩を進めてくれます。
「そうねぇ。他にする事もないですからお散歩に致しましょう。」
日が沈むと肌寒いかしら?
「リン、あのポンチョを。」
もう1人のわたくし付きの侍女、リンにお気に入りのポンチョを持って来て貰います。
「ありがとう。お屋敷の中だけだからミア達は来なくていいわ。その間、休憩していて構わないわ。」
「ありがとうございます。」
「行ってらっしゃいませ。」
「行って参ります。」
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この屋敷には庭の他に森があります。森の中には泉が湧いていて庭の小川に繋がっています。その泉の畔に野生でしか花が咲かない花々が群生している場所があり、そこがわたくしのお気に入りの場所なのです。ここで有名な童謡を歌うことがわたくしの日課です。
「昔々
神様達が人と住んでいた頃
一人の少女と一人の神様が恋に落ちた
神様は少女の幸せを祈り加護を与えた――――」
いつものようにこの歌を歌っていると……ガサッ!
「っ!誰ですか!」
背後で音がして振り向くとわたくしより年上ですが、まだ十代だと思われる少年が
「歌、上手だな。」
と言って立っていた。
「今の『【乙女】の詩』だろう?」
綺麗な金髪に直系聖族だけに生まれて来るとされる淡い紫の瞳の少年は………
「………おうじ、さま?」
「うん。今晩は、ローゼシア公爵令嬢?」
「……今晩は。あのっ聖子さま。」
「うん?どうした?」
「リア…姉のデビュタントにいらっしゃったのです…よね。こちらにいらしてよろしいのでしょうか?」
「少しなら。それに明日、行けなくてごめんねって貴女に伝えたくて。」
――――ここまで
「えっ」と思わず声をあげてしまいました。そして首を緩く振りながら答えます。
「そんなっ。勿体ないお言葉です。
わたくしなんかに………」
「しかし。
ユリティスのデビュタントにも
ローゼリア嬢のデビュタントにも出席したというのに……」
「構いません。
聖子さまがご多忙なのは存じておりますから。」
本当は来てほしかったけど我が儘をいう訳にはいかないのです。
「そうか…………。」
少し寂しそうにしつつも
「また来る。
今度は『【乙女】の詩』最後まで歌ってくれよ。」
といって聖子殿下は会場に戻って行きました。




