【花の乙女】と悪魔のお茶会
「憂鬱だわ。」
「お嬢様、お気持ちは分かりますがお受けしたのはお嬢様です。」
「当然でしょう?あの子は何を仕出かすか分からないのだからせめてわたくしの前で仕出かしてくださる方が後始末が楽ですわ。」
そう彼女はすぐに問題を起こすので定期的に監視しておかないとろくなことにならないのです。わたくしはサーシャは悪魔だと思っています。彼女は天使のような笑みを浮かべながら悪魔の所業としか思えないものを考え出すのです。
はっきり言って怖いです。お母様も大概ですが…………もしかしてわたくしの家系は悪魔の血を引いているのでしょうか?…………さすがにそんなことは無いですわね。わたくし達が【乙女】に選ばれていることが証拠です。
【乙女】は他宗教でいう聖女や神子のようなものです。悪魔の血を引いていたら神々に気に入られにくいでしょう。その神様が高位の神様であればあるほどです。私達、【花の乙女】の祀神は最高神の姪にあたる神様で【森の乙女】であるお母様の祀神は最高神の妹さんです。かなり高位にあたるのでまず悪魔の血は引いていないでしょう。
さて、3週間後の夜会のこともありますしこのお茶会はさっさと終わらせてしまいましょう。
「ミア、あのドレスをお願い。」
殿下色のドレスと揶揄された例のドレスです。
「………リィステ殿下の、色なのかしら。」
自分で呟いて恥ずかしくなりました。そんなドレスをわたくしが着るのです。どういたしましょう?……とても嬉しいですが気を引き締めなくてはなりませんわね。
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「ご機嫌麗しゅう。ローゼシア様。ようこそおいでくださいました。」
「ご機嫌よう。サーシャ。本日はお招きいただいて光栄ですわ。」
この国は基本的に身分の低い者が話しかけなくてはなりません。定型の挨拶を行い、わたくしは辺りを見回しました。
「あら?エミール嬢はお越しじゃないのね。」
エミール嬢は伯爵令嬢であるサーシャの取り巻きの1人でわたくし達のダンスの講師であるレアラス子爵の再従姉妹にあたる伯爵令嬢です。
「ええ。エミール嬢は本日ご実家のご都合でいらっしゃれないそうなのです。」
「そう。今回は彼女の周りなのね。」
わたくしがそう言うとサーシャはクスッと笑いました。そして声を潜めてこんなことを言います。
「なんのことですか?わたくしはまだ何もしておりませんわよ?」
「まだでしょう?
貴女がわたくしを呼ぶときは大抵何かあるときだわ。それに何も疚しいことが無いのなら、声を潜める必要があって?」
わたくしも小声で返しました。
「さあ?盤上に駒が出揃ったところとでも言いましょうか。」
「そう。なら今回も貴女の邪魔をして差し上げるわね。さて、貴女は何を賭けるのかしら?」
「わたくしの商会とお抱えの旅商人を。」
彼女はスニアシス商会という交易の商会を立ち上げたと聞きます。わたくしのシアティール商会の方が業績も規模も上ですが。
「なら、わたくしのブランド<レイニードロップス>を賭けるわ。」
「あら、それは1番小さなブランドではなくて?わたくしは商会全てと旅商人を賭けるのに……せめて<ハニー・ローズ>か<サクラ・サウンズ>を賭けてくれなくては割りに合わなくてよ。」
シアティール商会は3つのブランドと105人の従業員を抱えています。わたくしが直接手掛けているブランドが
<サクラ・サウンズ>で<ハニー・ローズ>はシアティール商会の中でもトップレベルのお針子と商人として実績がある者を中心にしたブランドです。そして今回わたくしが賭けた<レイニードロップス>は新人お針子達や駆け出しの商人達をまとめたブランドです。
実績は少ないですが将来性のあるわたくし達の世代が多くいます。
「あらそうかしら?わたくし貴女の商会と<レイニードロップス>は同じぐらいの価値があると思いましてよ。」
「わたくしにはそう思えないけれど………まあいいわ。勝てば損はしないのだから。」
甘いですわね。わたくしなら仮に負けたとしても痛み分けまでなら
もっていけますのに。まあ負けるつもりもございませんが。
わたくしが7年もかけて育てた大事な商会を削られる訳には行けませんから。
しかしわたくしはそれを顔に出すことはなくニコッと微笑みました。
少し前にシアもリアに悪魔認定されてますよね………。
自覚がないことが恐ろしいです。




