ワシの名は番匠銀!!
不意に現れたお爺さん!!
足音も気配も一切無く現れた・・・痩せた小柄なお爺さんながら眼光はやけに鋭い・・・。
ナツミ「わあ・・・ごめんなさい。私達、肝試しに誰も居ないお寺って聞いて来ちゃいました!」
タクミ「スミマセン勝手に、こんなとこまで入ってしまって・・・」
お爺さん「そうかい!!わしゃあ今、炭焼き用の枝を拾いに行ってたんじゃよ。」
ナツミ「炭?バ―ベキューするの・・・?」
お爺さん「わしゃ一人だからバーベキューはせんわい。鉄を溶かすのに使う炭じゃ!!」
お爺さん「お姉ちゃん可愛いヘルメット被ってるな!!兎かや?」
ナツミ「えへへ。肝試しだからお化けに負けないように被ってるの。これなら侍の霊に刀で切りつけられても大丈夫だし!」
タクミ「鉄を溶かすって?」
お爺さん「まあ立ち話もなんじゃ。あがって茶でも飲んでいきんさい」
そう言うと松ぼっくりを模したドアノブを捻り重厚な木製の扉を開けて中に案内してくれた。
ナツミ「わあ!」
中はわりと広くトンネルの様な空間だ。手前の部分が土間になっていて土間には石を組んで作った竈もある。竈には年季の入った羽釜が乗っていた。
その奥が一段上がって大きな平らな岩がテーブルの様に鎮座していて岩を囲むように、ござが敷いてある。端にはきちんと畳んだ布団もありお爺さんの居住スペースになっていた。
更に奥がまた土間となり何やら壁には芸術的な鉄の装具や蹄鉄などがぶら下がっている。
最奥には大きな炉の様な物があり煙突が伸びている。
お爺さんは手前の土間にある竈に薪をくべて火縄の様なもので火をつけると隣の水瓶から柄杓で水を掬い羽釜に入れた。
お爺さん「まあ湯が沸くまで待っとりな・・・そこに座布団あるから。敷いてな。」
指さされた方向には何やら動物の毛皮で作った座布団が重なっている。
ナツミ「これって何の毛皮の座布団?熊?」
お爺さん「ここいらには熊は居ない。キョンじゃよ!鹿を小さくしたような動物じゃ。最近増えててのう・・・罠でわしが捕まえてるんじゃよ。捕まえれば報奨金をもらえるんじゃよ。」
そうこうしている間に羽釜の湯がぐらぐらと沸くとその中に乾燥した植物を放り込んだ。5分程煮出して火から下ろすと木製の蓋をした。
タクミ「それは、何のお茶ですか?」
お爺さん「わしが摘んで来たヨモギじゃ。ヨモギは体にええんじゃ。昔から薬草として使われとる。わしは毎日飲んどるからか風邪一つひかないでもう90歳じゃ!!」
タクミ「90歳!凄い。ずっとここに住んでるんですか?」
お爺さん「いやワシは20年前まで町工場をやっておった。鋳物をやっていてな、お寺に収める鐘やら装具作ったり農具の鋤や鍬・・・足踏みミシンの土台やアイロン・・・郵便ポストまで何でも作ったわい。」
お爺さん「ここの亡くなった住職とも長い付き合いじゃった梵鐘を見たかい?あれもワシが造った鐘じゃよ。」
お爺さん「今はもう大きな物は造れん。趣味で装飾品作ったり風鈴作ったりじゃな。そこにあるダルマストーブも昔ワシが作ったもんじゃ!!」
お爺さん「もうヨモギ茶がいい具合に蒸らされたから飲みんさい。」
そう言うとお爺さんは竹を輪切りにした湯呑みにヨモギ茶を入れて差し出してくれた。
一口すすれば清涼感のあるヨモギの香りがふわりと鼻を突き抜ける。美味しい・・・!!
お茶をすすりながらダルマストーブの芸術的な曲線を見ていたらハッと閃いた!!
この技術が有れば水平対向カブエンジンのクランクケースが作れるのでは無いか?
タクミ「これだ!!」
僕は思わず叫んだ。
お爺さん「んん!!どうしたんじゃ?」
タクミ「お爺さんバイクのエンジンって作れませんか?」
お爺さん「バイクのエンジン・・・はて?」
タクミ「クランクケースです。」
お爺さん「う~~んクランクケースかあ・・昔は車の部品なんかも頼まれればやっていたけど・・わしゃあもう目が悪くてのう・・・精密な工業部品は今はもう造れないのう・・・・」
タクミ「僕が造るんで鋳物の技術を教えてくれませんか?」
お爺さん「なんと!!お主が自分で造る?お前さん鋳物って何かわかってるのか?」
タクミ「鉄を溶かして型に流したり・・・」
お爺さん「ほう・・・まあ簡単に言えばそうなんじゃが・・・エンジンを組み立てた事はあるのか?」
タクミ「組み立てはやりましたが2回壊しました!!壊れちゃったからもう自分でクランクケースを造るしか無いんです!失敗しても構いません。どうしても自分の手で造ってみたいんです。」
お爺さん「…その手を見る限り、口だけでは無さそうだな。」
僕の油に汚れタコや傷が出来た手を見てお爺さんはそう言った。
お爺さん「ハッハッハ!!お主なかなか面白いのう。」
お爺さん「お主!気に入った!!若いもんは挑戦せないかん!!」
お爺さん「形を鋳るとこまでは教えてやれる。じゃがクランクベアリングが入るとこは別じゃ。最後は機械できっちり仕上げにゃならん」
お爺さん「ワシも、もう90じゃ。あと何年、鉄を溶かせるかわからん。覚えたい若いもんがおるなら、わしの知っとることぐらい全部置いてってやるわい。」
お爺さん「お主!名前は何ていう?」
タクミ「タクミです。お爺さんは?」
お爺さん「ワシは鋳物師の番匠銀って言う爺さんだ。タクミか!匠の技を受け継ぐにふさわしい良い名前じゃ!!」
ナツミ「う~~ん♡なんか面白そうだねナツも作る。銀ちゃんの弟子になる!!」
お爺さん「銀ちゃん!?参ったなそりゃ。」
お爺さん「お姉ちゃんは名前はなんてんだ?」
ナツミ「ナツミだよ!夏に生まれたからナツミ。」
ナツミ「ナツは指輪作ったりピアス作ったりしてみたい!!」
え・・・。
ナツミさんアクセサリーって・・・目指してるとこがナツミさんらしい・・・。
ナツミ「銀ちゃん♡宜しくね!」
つづく。




