千首坊寺の噂
ナツミ「うふふタクちゃん可愛いでしょ。ウサミミヘルメットだよ!」
あああ・・・なんてことを…でも僕はそんなナツミさんを不覚にも可愛いって思ってしまった・・・。
だんだんとナツミさんの小悪魔的な魅力に憑りつかれて行きそう。
邪念を振り払い僕は設計図と睨めっこした。
ダメだ僕は水平対向カブエンジンにチャレンジするんだ。
設計図を書きながらも、どうにもならない部分も見えてきた。シリンダーヘッドやピストンは2基のカブエンジンを使い内部の部品も流用するにしてもクランクケースはどうすれば良いのだろう・・・。
ナツミ「ふ~ん。この設計図凄いね!ナツには何がなんだかわからないけど絵が上手過ぎる。タクちゃんの隠れた才能だねえ。」
タクミ「このクランクケースって言う部品だけは手に入らないんです。他のバイクからの流用も出来ないし・・・」
ナツミ「それは作れないの?」
そうか・・・神さんも良く言ってるな。「無い物は造るしかない!!」って。でもこんなのどうやっても作れる気がしない。
完全にお手上げだ。
一先ず鉛筆を置き、一点を見つめたまま考え込んだ。
ナツミ「タクちゃんまた行き詰まってるの?気晴らしに遊びに行こうよ!!ナツまだこの辺り良く知らないしさ。」
ナツミ「観光出来る様な場所はこの辺りには無いの?」
タクミ「えっ観光・・・・こんな山奥だからナツミさんが好きそうなテーマパークなんかは無いけど・・どんなとこ行きたいんですか?」
ナツミ「う~ん・・・。涼しくなれそうなとこ!!」
タクミ「涼しくなれる所ですかあ・・・・。あ!!心霊スポットなら知っています。」
ナツミ「キャー!!面白そう!!でもやっぱり怖いかも・・・どんなとこ?」
タクミ「僕もまだ行った事が無いんですけど・・・ここから25キロほど山道を走った所に古寺があるらしいんです。廃寺なのかはわかりませんが・・・最近は人が近寄る事も無く。千首坊寺と言われています。噂では戦国時代に大きな合戦があり、あまりにも多くの死者が出たため討ち取られた兵たちの首を集め丁重に弔った寺だと言う言い伝えが有ります。」
タクミ「噂なんですけど昼間でも鬱蒼とした山奥にあり・・・夜中に鐘の音が鳴るとか・・首の数を数える声が聞こえるとか・・・本堂の仏像は毎年少しづつ顔つきが変わるとか・・・誰も居ないはずなのに仏像の装飾品が変わるとか・・・供え花だけは新しいとか・・肝試しに行った若者がキーン・・・キーン・・・と奥から金属を叩くような不思議な音に逃げ帰ったって言う話を聞いた事があります」
ナツミ「なんか怖いけど・・・・探検気分で行ってみない?ナツ・・御朱印巡りとかも興味あるし・・・御朱印もらえるかな?」
タクミ「幽霊から貰えるかもしれませんよ!!」
ナツミ「キャー!!貰えたら日本初だね!!行ってみようよ!!」
しまった・・・心霊スポットって言えば怖がって遊びにいくのは止めになると思ったのに・・・そもそも僕も怖い物は苦手だ・・・・。でも、もう後には引けない。
タクミ「ちょっと神さんに言って来ます!!でもダメって言われたら行けません!!」
ナツミ「私も一緒に頼んであげる!!」
僕たちは二人で母屋で原付をばらしている神さんに声をかけた。
ナツミ「神さん!ちょっとタクちゃん借りてもいい??肝試しに古寺に行くんだけど。」
神「何処まで行くんだい?」
タクミ「千首坊寺です・・・。」
神「あそこかあ・・・昔は住職が居たんだけど住職が亡くなってからは・・・人も寄り付かなくなったらしい・・・・」そう言うと神さんはニヤリと笑った。
神「まあ・・・俺も詳しい事はわからないけど行って来な!」
ナツミ「幽霊が出て来たら御朱印もらう~~~!!」
神「ギャハハ!!なっちゃん俺の分も貰って来てくれ~~~!!気をつけて行って来いよ!!」
ナツミ「じゃーん!今日はこれで行くよ!」
ナツミさんを見るとさっきのウサミミヘルメットを被ってる!
神「ぶはははっ!!なんだよそれ肝試しに行く恰好じゃねえな!」
ナツミ「え~?可愛いじゃん!」
タクミ「ぷぷぷ・・・可愛いけど肝試しの雰囲気が台無しです・・ぷぷぷ・・・」
ナツミ「怖いからこそ可愛いのが大事なの~~~~!!」
神さんに爆笑されながら見送られ・・僕も笑いを堪えながらボルティーに跨った。
ナツミさんもタンデムシートに跨り出発だ!
「ブォーン!ボロロロロン!!」
幾重ものつづら折れの山道を超えた。
路面は荒れ・・・対向車が来たらすれ違えない程の山道を進んだ。
枯れ枝や苔・・・道路を横切る沢水・・・。
もうすぐのはずなんだけど・・・・・。
首の無いお地蔵さんを超えた。
何やら空気が変わった・・・。
昼でも暗い細道の先に廃寺のような千首坊寺が見えて来た・・・。
ナツミ「タクちゃん・・・なんか予想以上に不気味だね・・・。」
つづく。




