僕らは皆ポンコツだ!
軽トラに荷物を全て積み込み帰路につく。
僕だけまた荷台だ。しかもガス台やらテントやらに紛れガラクタの様に積み込まれた。
神 ♪「祭りの後の寂しがあ〜嫌でもやって来るのなら〜祭りの後の寂しさは〜死んだ女にくれてやろう〜!もう帰ろう。もう帰ってしまおう節待月の出るぅ頃は〜。」
ナツミ「神さんその歌って何の歌?」
神「昭和の名曲さあ。吉田拓郎の祭りのあとだ。」
ナツミ「何だか悲しい歌だね。」
神「なっちゃんよう〜。そう言えば何で夜なのにサングラスかけたままなんだい?」
…。
ナツミ「私ね…人にじっと見られる事が多くてさ…何だか人の視線が苦手でさ…」
神「…そうかい。美人さんだからな!まあいろいろ有るわな。」
僕は荷台でお尻が痛くなりながら揺られてた。
早く鰻重食べたい!
20分程走るとギリギリまだやってた鰻の名店「鰻光」に到着した。
暖簾はまだ出てる。
引き戸を開けて神さんを先頭に店内へ。
店員さん「いらっしゃいませ!!」
神「まだ、大丈夫?」
着物を来たお姉さんが直ぐに案内してくれた。
店員さん「いらっしゃいませ。まだ大丈夫です。直ぐにラストオーダーですけど」
神「おう!そうかい!じゃあお邪魔するとしよう。三人ね。」
店員さん「3名様ご来店でーす!」
大将「いらっしゃいませー!」
もう普段外食なんて滅多にしないから緊張してしまう程に立派な老舗の鰻屋さんだった。
神さんだってこんな高そうな店に入る事なんて滅多に無いだろうに何故か堂々としている。
神「2人とも好きなもん頼め!金は持ってんだ!」
メニューを開いて僕は固まった。
鰻重 (並)3500円
鰻重 (上)4500円
鰻重(特上)5500円
いくら今日は儲かったからって大丈夫なのかな?神さん無理してないのかな。
何だろこの申し訳無い気持ち。僕は遠慮気味にこう言った。
タクミ「鰻重の並で…」
ナツミ「ナツも並かなあ…でもどうしよう…」
神「お姉さーん注文いい?鰻重の特上三つ頂戴!」
ナツミ「キャー♡神さん男前!」
神「迷ったら高い方って事だオマエら覚えとけー!」
やった!!特上食べれる事なんてもうこの先一生無いかも…。喜びながらも僕は心の中でちょっと心配になった。明日からペンペン草を齧って飢えを凌ぐとか無いよね?
30分ぐらいは待ってるかなあ…
そろそろ出来るかなあ…
タクミ「まだかなぁ…」
そんなソワソワした様子を見て神さんが言った「鰻を急かす奴は野暮だぜ!美味いもんは時間がかかるんだ!」
店員さん「お待たせしました。」
神「おっ!来たね肝吸いも付いてんのかい?やっぱり特上だねえ。」
そこでナツミさんは初めてサングラスを外していよいよ鰻と御対面!
お重の蓋を開けると芳ばしい香りと程よい焼き目のついた鰻が御飯が見え無いほどに乗っている。
三人「いただきまーす!」
…!…!…!
三人共、無言になる…。
更に食べ進めばご飯の間にもまた鰻がひいてある!鰻の2段構造だ。
無言で食べていたナツミさんがやっと喋り始めた。
ナツミ「ナツね…今まで仕事で接待されたり美味しい鰻はいっぱい食べて来たけどね…今日の鰻が一番美味しい。」
ナツミ「皆で汗水流しながら頑張って働いて食べた今日の鰻が一番美味しい!なんだか涙出ちゃう」
そう言うや否や目頭を押さえてる。
なんだか僕も神さんも鰻が美味しいやらナツミさんの話しやらで貰い泣き。
泣きながら鰻を食べる我らZZカンパニー
御一行。
閉店間際で鰻を食べながら泣いてる怪しげな三人に店員さんも大将も注目している。
神「そう言えばさ、なっちゃんて何の仕事してたんだい?」
そのタイミングだった店内につけっぱなしになっていたテレビからニュースが流れてた。
「先日からバイクで出かけると言ったまま行方不明となっているモデルでタレントの立花ナツミさんの消息が依然わかっていません。
所属事務所から警察へ捜索願いが出ていて事件、事故両面から捜索していますが依然手がかりは見つかっていません。」
画面に映る立花ナツミ。
目の前で鰻を頬張るナツミさん。
もう1度テレビを見る。
そしてナツミさんを二度見した。
「え…!!」
ナツミさんの箸が止まった・・・。
画面の中の立花ナツミとナツミさんが同じ人だった。
大将も店員さんも固まった。
「…!」
そしてナツミさんがバツが悪そうにこう言った。
ナツミ「ごめん…なんか言えなくてさ…」
ナツミ「2人は私の事知らないみたいだったし。」
何しろZZカンパニーにはテレビも無ければラジオも無い。スマホも無ければ電波も無い。
一瞬の沈黙の後に神さんがこう言った。
神「何だか俺には良くわかんねえけど、この鰻旨えなあ!天下一品だぜ!なっちゃんよ。気にすんな!好きなだけ家に居てもいいんだぜ!」
神「居候が一人増えようが二人なろうが、どんと来いだ!」
神「俺達はみんなポンコツだ!俺もタクミもなっちゃんもな!みんな傷だらけでガラクタみたいなもんだ!ボロボロのバイクみたいに最後に家に辿り着いたんだ。でもな。寄せ集めのガラクタだって、一つになりゃあ走る1台になるんだぜ!!」
神「一人じゃポンコツでも仲間がいりゃあ何処までも走れるポンコツだ!」
うう…流石だ…神さんの言葉に僕は完全にノックアウトされて言葉も無かった。
確かに僕はポンコツだ。神さんに拾われて整備されてなんとか動いてるポンコツだ。
ナツミさんは、その場で声を出してわんわん泣き崩れた。
でも泣きながら鰻は食べてる。
ナツミ「ナツは…ナツは…ナツは…ぐすっ…この鰻美味しい…ぐすっ…。」
僕も一先ず鰻をまた食べ始めた。びっくりしながらも食欲が勝つ!食べてから考える。まずは食べる!
三人共食べ終わり神さんがカッコ良く立ち上がった。
むんずとポケットから一万円札を取り出しこう言った。
「大将!お釣りはいらねぇ!」
店員さんが申し訳無さそうに言った。
店員「あの…6500円足りません…。」
神「あーー!ごめんラーメン屋じゃねえもんなあガハハハ待ってて今、車から取ってくる!」
ギャー!恥ずかしい…。
ナツミ「キャー!神さんそりゃ無いよー!」
でもナツミさんに笑顔が戻ってる。
ナツミさんが背筋を伸ばして満面の笑顔で言った。
ナツミ「ナツこの家族の一員になる。やっと…ナツの帰る場所見つかった。」
ナツミ「2人とも、これからも宜しくね♡」
つづく。




