商売上手!!
タクミ「買ってって下さーい。ここでしか買え無いHONDA焼きでーす!」
神「タクミー!そんなんじゃ客は止まってくれないぜ!俺が手本見せてやるぜ!」
神「さあさあ、お立ち会い!!」
「腹が減ってる人も!財布が寒い人も!嫁さんに小遣い減らされた人も!」
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!」
「天下のHONDA焼きが、たったの三百円!!」
「三百円で腹いっぱいにはならねぇが!」
「三百円で笑顔倍増!」
「しかも一個食えば元気百倍!」
「二個食えば恋人が出来るかもしれねぇ!」
「三個食えば……そりゃ食い過ぎだ!!」
客「アハハハ…!それ美味しいの?」
神「旨えか不味いかなんて食って見なけりゃわからねえ天下無双のHONDA焼きだ!」
「味の秘密は企業秘密だ実は俺も食ってねえ!」
お客「ぎゃはは!笑っちゃうなあそれ。」
「おっとそこの兄ちゃん!その顔じゃ腹減ってるのが五十メートル先から分かるぞ!」
「姉ちゃん!彼氏にフラれたのか1個食ってけ!持ってけ泥棒ー!美人限定1個オマケだ!」
ナツミ「キャハハ!神さんの呼び込み面白〜い。」
お客「一つちょうだい!」
お客「私も買うー!」
あっと言う間に人だかりが出来て僕は必死で五つのフライパンにホットケーキミックスを流し込み神さんが頃合いを見てひっくり返し流れ作業でHONDA焼きを焼き続ける。
何故か今日もサングラスを外さないナツミさんはいつの間にかお会計係になっていた。
客足が途切れない…もうずっとHONDA焼きを焼くマシーンと化して手を動かし始めた。
隣の金魚掬い屋さんヤッチンの屋台も大盛況!!
ヤッチン「お姉さん!お客さんがデコクワは幾らか聞いてるよー!」
ナツミ「ちょっと待って今行くね!」
5歳ぐらいの弟を連れた小学2年生ぐらいの女の子がデコクワに興味津々。
女の子「このピンクのクワガタいくらですか?」
ナツミ「そうだなあ〜。500円!」
女の子「300円しか持って無いから買えないよ!」
女の子は残念そうに弟へそう言った。
ナツミ「うーん。やっぱり50円!」
女の子「えっ!50円!」
急に女の子は笑顔になり嬉しそうに50円を払い弟に手渡した。男の子もおっかなびっくりクワガタを触り誇らしげだ。
神「なっちゃん、流石だな!祭りってのはようー金儲けする場所じゃねえからなあ。皆を笑顔にする場所だからな!ガハハハ!」
次にやって来たのは金髪のイケイケ風な彼女を連れた金のネックレスを首に下げた強面のお兄さん。
お兄さん「凄えな!このクワガタ!スワロフスキー背負ってるぜ!!」
金髪のお姉さん「ええ〜何このクワガタなんか綺麗!」
お兄さん「おう!姉ちゃんこれ幾らだ!」
ナツミ「五千円ね!」
お兄さん「高えよ!」
ナツミ「でも!ほら可愛い彼女が欲しそうだよ。ねえー彼女さん欲しいよねえー?」
彼女「欲しい〜!」
ナツミ「こんな綺麗な彼女の笑顔、五千円以上の価値あるでしょ?」
彼女「きゃー♡」
お兄さん「おっ・・・おう。そう来たか参ったな。買うわ。」
ナツミ「お買い上げありがとうございまーす!!」
神「ククク。なっちゃん商売上手だな。」
ナツミさん凄い!時価ってそう言う事だったんだ。
祭りも終盤を迎える頃には、賑わっていて参道も少しずつ人影がまばらになって行く。
周りのテキ屋さんも鉄板を片づけたり暖簾をしまいゴミをまとめたり撤収作業に追われてる。
僕は残りのホットケーキミックスをフライパンに全部入れた。
最後に分厚いHONDA焼きを作り、お隣の金魚屋さんやっちんにプレゼントした。
ヤッチン「おー!タクちゃん毎年ありがとねえ。特別に1回のチャンスだ!!金魚掬いやってみろ!!」
タクミ「え?ホント?やります!!今年こそ一番でっかい琉金を掬います!!」
今年も百戦錬磨の客寄せの琉金は誰にも掬われる事も無く悠々と泳いでいた。
ヤッチンにモナカを渡されいざ!勝負だ!!
琉金と目があった。モナカをそうっと近づけると身をひるがえし離れて行く・・・。
手強い相手だ。塩ビ製のひょうたん池をひらひらりと優雅な尾びれを艶やかに振りながら逃げ回る。
端に追い詰めた今がチャンスだ!!
すうっと明らかにモナカより大きな琉金の腹の下にモナカを潜り込ませ手のひらを返した瞬間・・・
「バチャッ!!」
思いきり尾びれでモナカを叩き落とされた。
ヤッチン「はい!残念!!」「また来年!!」
くう・・・悔しい。今年も夢破れる。
ヤッチン「この琉金はうちのボスだからさ!!今年も良い仕事をしてくれたねえ!!」
神「タクミ―!!遊んでねえでかたずけるぞ!!」
ナツミ「タクちゃーんテント畳むからそっち持って!!」
神「今日は2人とも頑張ったな!!」
神さんはザルに無造作に入れた売上を海苔の缶に仕舞った。
神「たまには鰻でも豪勢に食って帰ろうぜ!!」
ナツミ「えーー!!わーいやったーーー!」
タクミ「鰻!!僕の大好物!!」
神「皆で稼いだ金だ!!今日は景気良く行こう!!」
提灯の明かりも一つ、また一つと消えて行く、さっきまでの笑い声に溢れていた参道は、蝉の声だけが響くいつもの山に戻って行った。
つづく。




