終章 真実のデーター
隠れ家の薄暗い室内。カズヤとアイゼンハワードは、解析用の端末を前に息を詰めていた。伊藤ハルカが提供したデータを基に、織田哲夫の持っていた端末を解析していたのだ。
「この端末……本当に全ての証拠が入っているんですね」
カズヤは画面を凝視しながら呟く。
「はい。織田さんが福田恒夫さんの死に関与した全計画が、ここに記録されています。」
伊藤ハルカは落ち着いた口調だが、その目には緊張が走る。
端末の中には、織田の手で仕組まれた一連の計画が詳細に残されていた。
福田優子を操り、福田恒夫の死を偽装させる指示
ペースメーカーを遠隔操作するための技術的証拠
財産や権利をせしめるための契約書類や口座情報
「磁力の結界」の鈴木一郎に指示を仰ぐ通信記録
「つまり……鈴木一郎は、福田さんの死を利用して、三神建設と『磁力の結界』の争いを激化させるための陽動を行った。そして、織田哲夫はその計画を内部から操っていた……」
アイゼンハワードがゆっくりと頷く。
「そうです。そして、福田優子さんの関与が疑われたのは、まさにそのため。明白すぎる証拠を残すことで、我々を惑わせようとしたんです。」
伊藤は続ける。「織田さんは、優子さんをそそのかし、福田さんを殺害して財産を手に入れる計画まで立てていました。しかし、その全てが端末に記録されていたおかげで明らかになったのです。」
カズヤは深く息をつく。「この端末さえあれば、すべてを証明できる……」
翌日、テレビ画面には全国ニュースが映し出されていた。
画面には警察官に連行される織田哲夫と鈴木一郎の姿。手錠に繋がれ、背中を丸める二人の表情には、これまでの冷酷さは消え、どこか虚ろな余韻が漂っていた。
アナウンサーの声が冷静に流れる。
「本日未明、福田恒夫氏殺害事件の首謀者として、織田哲夫容疑者と、談合グループ『磁力の結界』首謀者・鈴木一郎容疑者が逮捕されました。警察によると、織田容疑者は被害者の福田優子氏を操作し、ペースメーカーを遠隔操作する形で事件を実行したとのことです。」
カズヤは画面を見つめ、静かに言った。
「これで……やっと、全ての真実が明らかになったんだな」
アイゼンハワードは端末の画面を最後に閉じる。
「伊藤さん、あなたのデータがなければ、ここまで辿り着けなかった。感謝する。」
伊藤ハルカは微かに微笑んだ。
「私も……事件の真実を明らかにすることができて、少し救われた気がします。」
だが、画面のニュース速報の隅には、小さな文字で次の報告が流れた。
『鈴木一郎の背後に、未だ不明の組織が存在する可能性。警察は調査中』
カズヤは眉をひそめる。
「完全には終わっていない……」
アイゼンハワードは窓の外を見やる。夜空に浮かぶ都会の灯りが、まるでこれからの新たな戦いを予告するかのように瞬いていた。
静かに、しかし確実に、物語は次の章へと動き出す。
織田の端末にあった真実のデーターは完全に解明かされ、事件は解決した。しかし、「磁力の結界」の全貌と、その残党の暗躍はまだ、影の中に潜んでいる。
『カズヤと魔族のおっさんの事件簿:磁力の結界 リニア新幹線殺人事件』
ー完ー




