【最終話】 凍てつく地平線の余韻
氷嵐が止み、南極の空にわずかな陽光が差し込んでいた。
破壊された基地の残骸の中、チームは疲労困憊の身体を引きずりながら帰還準備を進めていた。
セリーヌは狙撃銃を肩に担ぎ、遠くの氷壁を見つめる。
「……終わった、はずよね」
だがその声には安堵よりも、不安の色が滲んでいた。
ジャスパーは黒焦げのコンソールを操作し、オゾンホール拡大装置が完全に停止したことを確認する。
「兵器は無力化した……だが、これで全てじゃない」
氷上の吹雪を背に、アイゼンハワードがゆっくりと立ち上がる。
胸の裂傷はまだ癒えず、血が滲んでいた。
その瞳は遠くの水平線を睨みつけている。
「アリシア……生き延びている。あの女の影を感じる」
冷え切った声で、アイゼンは告げた。
沈黙が場を覆う。
セリーヌが小さく息を呑む。
「じゃあ……これで終わりじゃない?」
「終わったのは“最後の審判”にすぎん」
アイゼンは漆黒の剣《断罪ノ刃〈ギロティーナ〉》を氷に突き立てる。
「だが、世界の危機は、まだまだ続いている」
氷原の果て。
海面に反射した太陽が、血のように赤黒く染まり、波間に異様な影が揺れていた。
それは人の形にも、獣の形にも見える、レッドウルフ残党の亡霊のように。
セリーヌが囁く。
「……見て。あれは……」
一瞬の幻影のように、氷の地平線に黒い旗が翻った。
そして次の瞬間、吹雪に掻き消える。
嵐が再び強まり、飛行機のエンジン音が遠くに響く。
チームはそれぞれの思いを胸に、氷原を後にした。
機体のハッチが閉まる直前。
アイゼンハワードは振り返り、凍てつく南極を見渡す。
「戦いは終わらん。
次なる戦争は、すでに始まっている。」
その横でルーカス・ヴァルデスが、いつもの陽気さを取り戻したかのように苦笑する。
「……オレたち、また地獄の旅だな。
でもいいさ、氷より冷たい敵でも、仲間がいりゃ凍えねぇ」
機内に静かな笑いが生まれる。
氷原に轟くエンジンの咆哮。
飛行機は吹雪を突き抜け、極光の空へと消えていった。
その眼下。
赤黒い影が氷海の奥深くで蠢き、世界に新たな災厄の胎動を告げていた。
『アイゼンハワードの魔族のおっさんはつらいよ18ーFinal Reckoning 最後の審判』
― THE END ―
(だが物語は、まだ終わらない)




