第17話 氷獄の決闘 ― 圧倒的差の師弟
制御室全体が、血のような深紅に染まった。
ゼフィルの首筋から胸へ走る神経インプラントが、まるで生き物のように脈打ち、電磁ノイズが空間を狂わせる。
計器が破裂し、蛍光灯が火花を散らす中、ゼフィルは一瞬で姿を消した。
「……速い!」
アイゼンハワードが反応する前に、刃が閃き、頬に鮮血が飛び散る。
次の瞬間にはゼフィルが背後に立ち、無慈悲な蹴りで彼を床へ叩きつけた。
氷床にひびが広がり、アイゼンハワードの身体は跳ねるように宙を舞う。
肺の奥に鈍い痛み。呼吸が詰まる。
「これが“神経同調システム”……」
ゼフィルの声は冷たく響いた。
「思考速度を人間の数千倍に引き上げ、筋肉の限界を超える。師よ、時代は、もうあなたを置き去りにした」
アイゼンハワードは立ち上がるが、ゼフィルの影が三つに分裂し、同時に迫る。
視界に映る全てが残像。剣撃が雨のように降り注ぎ、血飛沫が制御室の氷壁を赤く染めた。
「終わりだ、老いた魔族!」
カリナ・ヴォルフの銀色の瞳が閃く。
彼女の手がわずかに動いた瞬間、鋼鉄のコンソールが宙を舞い、アイゼンハワードの背後から叩きつけられた。
「ぐッ……!」
骨が軋み、血が口から滲む。
カリナは冷酷に続ける。
「ゼフィル様に触れることすら許されない。あなたはここで朽ち果てる」
彼女の念動力が嵐のように吹き荒れ、制御室の配管が千切れて凶器となり、アイゼンハワードを縛りつける。
ゼフィルはその隙を逃さない。
再び影のような速度で迫り、アイゼンハワードの胸を蹴り抜いた。
氷の壁に叩きつけられ、アイゼンハワードは血を吐き、膝をつく。
その姿は、圧倒的な敗北に見えた。
仲間たちは別の戦場で必死に抗っているが、この場の空気は完全に支配されていた。
カリナの冷たい笑み。
ゼフィルの深紅の脈動。
アイゼンの耳には、かつて自らが導いた弟子の声だけが響く。
「師よ、過去に囚われた者は、未来を裁けない」
血まみれのアイゼンハワードは、剣を杖にしてなお立ち上がろうとするが、ゼフィルとカリナの攻撃は容赦なく続いた。




