第14話 氷上壁での闘い
南極の嵐は、視界を奪い、体温を容赦なく奪っていく。
白銀の荒野に、ジャスパーたちの雪上車が黒い影となって進む。
「地割れが近い! 減速だ!」
ルーカスがハンドルを切り、雪上車を跳ねるように制御する。地面は突然崩れ、深淵のような裂け目が口を開けた。
セリーヌが風に逆らって銃を構える。
「……影、三つ。護衛だわ」
吹雪を突き抜けた弾丸が、遠距離に潜んでいたレッドウルフの兵士を倒す。残りは仲間が警戒する前に雪に沈んだ。
「よし、進め!」
アイゼンハワードが短く命じ、雪上車は氷壁の目前へと突き進む。
高さ数十メートル、南極の牙そのものの氷壁。だが彼らの前に立ちはだかったのは、それ以上に異質な存在だった。
「ようこそ、侵入者たち」
女の声が吹雪を裂いた。氷壁の上から現れたのは、黒いコートをまとった女、カリナ・ヴォルフ。その瞳は氷と同じ冷たさを宿していた。
カリナが手をかざすと、氷塊が轟音を立てて宙に舞う。
まるで巨人の拳のように襲いかかる氷塊。
「来るぞ!」
ルーカスが雪上車を飛び出し、即席の爆薬を氷塊の進路に投げ込む。爆風とともに氷が砕け散り、粉雪が視界を白に染めた。
「小細工で止められると思った?」
カリナの笑みと同時に、今度は雪崩が彼らを飲み込もうと迫る。
「全員、右へ! ルーカス、あの岩盤を爆破しろ!」
アイゼンハワードの声が冷徹に響く。
即座にルーカスが爆薬を設置、起爆。轟音とともに雪崩の流れが逸れ、仲間たちの頭上をかすめていく。
「……っ、助かった」セリーヌが息を吐いた。
アイゼンは氷壁を見据えたまま言う。
「カリナを長引かせるな。ここは突破する」
カリナは再び手をかざす。氷壁が砕け、道を塞ぐように迫り出す。だが、ジャスパーが機械を操作し、氷壁の亀裂を解析。
「今だ! 三秒だけ安定が崩れる!」
「突っ込め!」
アイゼンハワードの指示で、雪上車が轟音を上げて裂け目へと突入する。
カリナの瞳がわずかに揺れる。
「……やるじゃない」
仲間たちは、氷と念動力の罠をかいくぐり、ついに氷壁の突破に成功する。
だがその先に待つのは、南極基地の核心――未回収異能兵器の中枢だった。
吹雪の向こうで、不気味な赤い光が揺らめいていた。




