第8話 世界の最果ての決戦 ― ウシュアイアの氷と炎
南米大陸の果て、ウシュアイア。白銀の山脈と氷の海が広がる大地は、“世界の終わり”と呼ばれるにふさわしい荒涼とした景観を誇っていた。吹きすさぶ氷風の中、アイゼンハワードたちMI6の小隊は雪上車を降り、冷たい空気を肺に吸い込む。
雪原の向こうに見えるのは、古い捕鯨施設を改造したレッドウルフの拠点。巨大な煙突からは黒い煙が立ちのぼり、外周には無数のドローンが旋回している。
ルーカス・ヴァルデスは分厚いコートの裾を翻し、ライフルを雪に構える。
「まったく……タンゴの次は氷上ダンスかよ。今度は足を踏む相手がドローンだなんてな」
その陽気さに、一瞬だけ張り詰めた空気が和らいだ。
しかし、氷の静寂を破ったのは甲高い電子音。頭上から群れをなすドローンが急降下する。レオ・キムの声がスピーカーから響いた。
「世界の果てまで追ってくるなんて……しつこいねぇ、諜報屋ども! でもここでCHECKMATEだ!」
同時に、吹雪の帳を割るように現れるカリナ・ヴォルフ。銀色の瞳が氷の反射で妖しく輝き、念動の波動が空気を揺らす。雪と氷片が竜巻のように舞い上がり、仲間たちの動きを封じる。
「この地で凍りつけ。あなたたちの未来も、希望も――」
銃声と爆炎が交錯する。雪上に転がるドローンの残骸、吹き飛ぶコンテナ、軋む鉄骨。
アイゼンハワードは冷静に指揮を執り、セリーヌは身を翻しながら接近戦で敵兵を無力化していく。
だがカリナの超能力は苛烈で、ルーカスの弾丸すら空中で止められてしまう。
「ちっ……!」と彼が舌打ちした瞬間、アイゼンハワードの低い声が雪嵐に響いた。
「突破口は一つ――氷を砕け! 炎で道を作れ!」
次の瞬間、仕掛けられた爆薬が轟音と共に炸裂。捕鯨施設の外壁が吹き飛び、炎と氷が入り混じった地獄の舞台が現れる。
カリナの高笑いが吹雪に溶け、レオ・キムのドローン群が炎を背景に影を落とす。
MI6とレッドウルフ――因縁の最後の戦いは、ついに世界の最果てで幕を開けた。




