第7話 アルゼンチン決戦 ― 赤と影のタンゴ
夜のブエノスアイレス。ネオンに照らされた石畳の街角、流れるバンドネオンの音色。
観光客で賑わうタンゴクラブの奥では、カリナ・ヴォルフが銀色の瞳を細め、レオキムと並んでフロアを踏みしめていた。観客に紛れる彼らの姿はまるでタンゴの踊り子のよう。しかし、足元で交わされているのは優雅なステップではなく、命を奪い合うための静かな準備だった。
ドアを破って現れるMI6の影。銃口が閃いた瞬間、バンドネオンの旋律が張り裂けるように止まった。フロアは一瞬にして修羅場と化す。
レオキムはダンサーのマントを翻すように鎖鎌を操り、照明を撃ち落とす。クラブ全体が闇に沈む中、火花の残光に彼の狂気の笑みが浮かぶ。
「Bienvenidos…ようこそ地獄のステージへ!」
カリナは冷ややかな声を響かせ、念動力でテーブルや椅子を宙に舞わせる。まるでタンゴのリズムに合わせるように、破片が銃弾を弾き、逆に敵を貫いていく。
「アルゼンチンの夜は長いわ。あなたたちにとっては、ね」
銃声、悲鳴、そしてタンゴのリズム。死と舞踏が混じり合う狂気の戦場。
仲間たちはカリナの攻撃をかいくぐり、セリーヌを守りながら退路を探すが、レオキムが出口を鎖鎌で塞ぎ、舞台を支配していた。
混乱の最中、外から轟音。仲間の仕掛けた車両爆破がクラブの壁を吹き飛ばす。
爆風と共に夜風が流れ込み、戦場に一瞬の光を差し込む。
カリナとレオキムは後退しながらも、最後に同時に声を放つ。
「この勝負は終わりじゃない――世界の果て、ウシュアイアで待っている!」
彼らの姿は闇に溶け、残されたのは崩壊するタンゴクラブと、仲間たちの荒い息だけだった。
だが心臓の鼓動はまだ止まらない。
次なる舞台は、世界の最南の果て、南米の尽きる大地、ウシュアイア。




