第6話 救出 炎の修道院
地下牢。
鎖に縛られたセリーヌの瞳が仲間を見つめる。
彼女の身体には無数の擦り傷と疲労が刻まれていたが、その瞳だけは決して折れていなかった。
アイゼンハワードは瓦礫の雨を魔族の力で弾き飛ばし、セリーヌに駆け寄る。
「セリーヌ、もう大丈夫だ……必ず連れ帰る。」
鎖は異能兵器で強化された赤黒い鉄。
通常の刃では切断不可能だった。
そこでジャスパーが即席の装置を取り出し、笑みを浮かべる。
「お前の首輪、俺の発明品でぶった斬ってやる!」
装置から放たれたプラズマの閃光が鎖を焼き切り、金属が爆ぜるように弾け飛んだ。
セリーヌが自由を取り戻す瞬間、ルーカスが援護射撃で敵兵を撃退する。
「お前らは、終わりだ!彼女を連れて行け!」
だが、その光景を見届けながら、カリナ・ヴォルフは冷たい笑みを浮かべる。
「ふん……今は見逃してやる。だけど、これは終わりじゃない。」
銀色の瞳が淡く光り、超能力で周囲の瓦礫を持ち上げる。
その隣では、レオ・キムが端末を操作しながら小型ドローンを撤退させていく。
「遊びはここまでだ。次のゲームステージはアルゼンチンだ。」
眼鏡の奥で不気味に笑い、画面を閉じる。
カリナは高らかに言い放った。
「南米の心臓部で待っているわ。そこで、お前たちの墓を刻んであげる。」
二人の姿は闇に溶けるように消え、残されたのは燃え上がる修道院と、ようやく解き放たれたセリーヌ。
アイゼンは彼女の肩を支えながら、低く呟いた。
「必ず決着をつける……赤き秩序に。」
外では火の手が夜空を赤く染め、MI6チームの撤退戦が始まろうとしていた。
修道院の鐘楼が赤々と燃え上がり、夜空を裂くように煙が立ち昇っていた。石壁のひび割れからは炎が吹き出し、崩落した天井から火の粉が雨のように降り注ぐ。
鎖を断たれたセリーヌは、まだ足取りが覚束ない。それでも自ら歩こうとする強い意志が目に宿っていた。彼女の両脇を支えるのは、仲間の傭兵たち。汗と煤にまみれながら、全員が一つの出口へと走り出す。
だが、回廊の先には“赤き秩序”の追撃部隊が待ち構えていた。重装の兵士たちが盾を構え、松明に照らされながら無言で突進してくる。
最初に前へ躍り出たのは、炎に照らされる銀髪の女――カリナだった。彼女は舞うように双短剣を構え、冷ややかな声を響かせる。
「お芝居はここまでよ。逃げ場なんてない」
続いてレオキムが鎖鎌を振り回し、火花を散らしながら言い放つ。
「せいぜい足掻け。だが覚えておけ……アルゼンチンで待ってるわ」
その嘲りを背に受けながら、仲間の一人が火薬樽を転がし、火矢で点火する。轟音と爆風が回廊を埋め尽くし、兵士たちの隊列が崩れた。その隙に、セリーヌを守る形で一行は突き進む。
だが修道院そのものがすでに限界だった。天井から巨大な梁が落ち、通路を塞ぐ。煤と炎の渦の中、必死に瓦礫を押しのける者、燃え盛る布を踏み越える者。悲鳴と怒号が交錯し、まさに地獄そのものの光景だった。
外の冷たい夜風が感じられたのは、その直後だ。崩壊する門をくぐり抜け、彼らはようやく燃え上がる修道院から脱出した。
振り返ると、修道院は炎の塔と化し、闇夜を赤く照らしている。セリーヌは胸を押さえ、震える声で呟いた。
「……あの二人……必ず、また来る」
そして仲間たちもまた、重い息を吐きながら炎の彼方を睨みつけた。
彼らの戦いは、まだ終わっていない。




