第2話 空中の黒い凶影
ロンドン、ヒースロー空港。
夜明け前の薄暗い滑走路に、MI6の輸送機が静かに停まっていた。テムズ川の水面に映る街灯の光が機体を照らす。
「アイゼン、また赤ワイン持参ですか?」
セリーヌが小さく笑いながら、手荷物から缶コーヒーを取り出す。
「当然だ。長旅に備えて、嗜好品は必須だ。」
アイゼンハワードは赤い瞳を細め、ワインレッドのマントの裾を整える。
「ジャスパー、今度はドローンでコーヒー運ぶとか、やめてくれよ」
アイゼンハワードの皮肉に、ジャスパーはにやりと笑う。
「なら僕が代わりに運ぶよ」
ルーカス・ヴァルデスが、にこやかに割り込む。南米特有の明るい声色で、機内を和ませる。
「みんな、極寒でも気分は常夏だと思えば、心も凍えないさ!」
セリーヌが肩をすくめて微笑む。
「ルーカスさん、冗談ばかりですね。でも少し安心します」
「安心?それなら僕が冗談で凍った心も溶かすよ。アイゼンの赤ワインは温めて飲むのかい?」
ルーカスの陽気な冗談に、チームは笑い声を上げる。
短い談笑の時間が、緊張の前の束の間の安らぎを作る。
だが、その静寂は突如切り裂かれる。
フォーン フォーン フォーン
警告音。
計器パネルが赤く点滅し、通信回線が途切れた。モニターには不可解な文字列が流れる。
「何……?」
ジャスパーが声を上げる。
窓の外、月明かりに照らされた翼がわずかに揺れる。機体は制御不能に近い挙動を見せ始める。
「奴だ……」
アイゼンは低く呟く。赤い瞳が冷たく光る。
MI6の裏切り者、レオ・キム、レッドウルフ「赤い秩序」の情報戦部門。黒縁眼鏡の奥で冷笑を浮かべ、機内システムを完全に掌握した。
名前:レオ・キム(天才的ハッカー)
所属:レッドウルフ「赤い秩序」情報戦部門
年齢:32歳
外見:中肉中背、黒縁眼鏡。カジュアルなジャケットとパーカー姿。画面の前に座る姿は静かだが、背後には常に小型ドローンを待機させている。
性格:自信家で皮肉屋。冷笑を浮かべながらも、危険を察知する嗅覚は天才的。常にゲーム感覚で戦場を操作する。
能力:高度なハッキング技術で、MI6の通信網、ドローン、兵器システムを一時的に掌握・混乱させる。戦術を読んで罠を仕掛けることも可能。
戦闘特徴:直接戦うことは少ないが、遠隔操作で戦場を操るため、チームMI6にとって非常に厄介な敵。
小型ドローンが天井から襲いかかる。座席が倒れ、酸素マスクが落下、照明は点滅。空気は一瞬で重く、恐怖に覆われた。
「皆、配置につけ!」
アイゼンの声が響く。
ここでルーカスが冷静に動く。
「僕に任せて」
コンパクトなプラズマライフルを手に取り、旋回するドローンを次々と撃ち落とす。火花と金属破片が舞う中、仲間は安定を取り戻す。
セリーヌは前方通路を守り、ジャスパーはドローン制御に集中。アイゼンは魔族の力で空気圧を微細に操り、乱れた重力を制御する。
機長は脱出カプセルに飛び込み、飛行機は不安定な軌道のまま自動操縦。
「全員、脱出準備!」
アイゼンの声で、4人はパラシュートで飛行機から飛び出す。南海のエクアドルへ滑空。
霧に包まれた海面に着水。背後で電子信号の冷笑。レオ・キムの嗤い声が、まだ戦場を操作していることを示す。
アイゼンは低く呟く。
「前途多難だな……」
そして4人は、次なる南極の死闘を心の片隅で覚悟するのだった。




