第6話 深海侵入 ― ドローン潜水艦との激突
漆黒の海、光も音も呑み込み、ただ水圧だけが鋼鉄を締め付ける世界。
MI6特務課の潜水艦は、静かにその深度を下げていた。
外殻を打つ水流が、まるで敵意を孕んだ囁きのように響く。
「深度8000……接触まであと3分!」
ソナー士官の声が震える。
モニターには、無数の赤い点が浮かび上がる。蜘蛛の群れのように広がるその影――ゼフィルが送り込んだ無人兵器部隊、ドローン潜水艦群だった。
鋭角的な機体に赤いセンサーランプ。
群れをなすように襲来し、まるで獲物を取り囲む鮫の群れのごとく、MI6艦を包囲していく。
開戦
「敵接近! 衝突まで10秒!」
艦内に警報が鳴り響く。
キャプテン・ドレイクが操舵席に飛び込み、怒鳴った。
「回避行動! 潜航角度30度下げろ!」
潜水艦が急角度で潜ると同時に、外殻をかすめて爆雷が炸裂。
深海の闇に閃光が走り、衝撃波が艦を軋ませた。
「迎撃システム作動!」
ジャスパーが操作盤を叩くと、艦外の魚雷管から無人迎撃機が射出される。
小型魚雷が水を裂き、迫るドローン潜水艦を爆散させた。
しかし次の瞬間、四方八方から赤い光が突き刺す。
「敵ドローン、群体アルゴリズムで連携している!」
セリーヌが歯噛みしながらスコープを覗き、艦外レーザー砲で狙撃する。
青白い光線が水中を裂き、ドローンの一体が尾部ごと吹き飛んだ。
突如、艦の外壁に「ガンッ!」と衝撃。
数体のドローンが外殻に取り付き、ドリルアームで侵入を試みていた。
「艦外作業ポッドを出す! 俺が行く!」
アイゼンがダイビングスーツを纏い、緊急エアロックから射出された。
漆黒の深海に、彼のシルエットが放たれる。
背に背負った推進装置で加速し、敵ドローンの死角に回り込む。
ズガァン!
携帯炸薬を叩きつけ、一体を粉砕。
散る破片の光が一瞬、彼のゴーグルに赤い閃光を映した――ゼフィルの監視カメラだ。
「見ているんだろう、ゼフィル……!」
アイゼンは銃を引き抜き、次々と迫るドローンを撃ち抜く。
艦内のドレイクが両手を広げ、艦体周囲の海水を操った。
「うねれ!」
深海の水流が渦を巻き、ドローン群をまとめて飲み込む。
高速の水圧流が鉄を潰し、ドローンの装甲を歪ませた。
その隙に魚雷が直撃し、爆発の連鎖が深海を赤く染め
「制御限界! 敵はまだ40体以上!」
ジャスパーの叫びに、艦内が凍りつく。
その瞬間、艦首の巨大ハッチが開いた。
セリーヌが操作する艦載砲が展開し、全方位に散弾ミサイルを発射。
「一網打尽よ!」
数十発の閃光が、深海を昼のように照らし出す。
破壊されたドローンが断末魔のように水泡を散らし、闇に沈んでいった。
「……敵影消失」
ソナーが告げた瞬間、艦内に重苦しい沈黙が落ちた。
息を荒げる仲間たち。
アイゼンはまだ艦外でゴーグル越しに暗闇を見据える。
その先に浮かぶ、不気味な影。
深海基地アルゴス、漆黒の巨影が、ようやく姿を現した。
アイゼンは低く呟く。
「ゼフィル……深海基地で待っていたのは、お前か。」




