表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一二三書房Web小説大賞の一時選考突破】 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『仁風、町に吹く3 ― さっちゃん先生 マフィア編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1690/1711

第3話 海と不器用な距離

さて。

ケンカする男女ってのはね、だいたい“相性が悪い”んじゃない。

むしろ逆で、“気になってしょうがない”からぶつかるんでございます。


素直じゃない。

でも、目が離せない。


そんな二人が海に行ったらどうなるか

まぁ、見てやってくださいな。



カズヤと智子、ガン飛ばし合い。


砂浜の上。

照りつける太陽。

潮風と、波の音。


それなのに


「……なんであんたと海来てんのよ」


「こっちのセリフなんだけど」


完全に空気が悪い。


周りはキャッキャしてるカップルばっかり。

その中で、この二人だけ、なぜか決闘前みたいな空気。


「先輩が“仲良くしろ”って言うから来ただけだからな」


「ふーん。あたしも。別にあんたと来たかったわけじゃないし」


「……」


「……」


沈黙。


波が、ザァ……と寄せて返す。


(帰りてぇ……)

(帰ろうかな……)


だが、こういうときに限って、

妙なイベントが発生する。


「おーい! ビーチバレーやろうぜー!」


知らない大学生グループが声をかけてきた。


「男女混合でちょうど人数足りねぇんだ!」


「え、いや……」


「やるわ」


「えっ!?」


智子、即答。


ニヤッと笑って、カズヤを見る。


「逃げるの? 会社の犬くん」


「……やるに決まってんだろ」


こうして始まる、なぜか本気のビーチバレー。


◆ビーチバレー対決


「そっち行った!」

「わかってる!」


最初は息が合わない。


「ちょ、今の取れただろ!」

「そっちが遅いのよ!」


完全にケンカ。


だが――


「……右、来る」


「……了解」


少しずつ、

タイミングが合ってくる。


「ナイス!」

「今の良かったじゃん」


気づけば、

自然と声を掛け合っていた。


そして最後の一球。


「行くぞ……!」


カズヤがジャンプして打つ。


ボールが相手コートに突き刺さる。


挿絵(By みてみん)


「……勝った」


「……勝ったね」


一瞬だけ、

目が合う。


そして――


「やるじゃん、会社の犬」


「うるさい、キャンキャン女」


「なによそれ!」


やっぱりケンカ。


でも、どこか少しだけ

楽しそうだった。


波打ち際

試合のあと。


二人は少し離れて、

波打ち際を歩いていた。


さっきまでの喧騒が嘘みたいに、

静かな時間。


「……さっきは、ありがと」


「え?」


「パス、ちゃんと合わせてくれたから」


「……別に」


(なんだよ急に素直かよ)


(なによその顔)


また空気がぎこちなくなる。


そのとき――


「うわっ!」


足を取られた智子が、

バランスを崩す。


「おい!」


とっさに、カズヤが手を掴む。


砂に倒れ込む寸前で、

なんとか支える。


近い。


やたらと近い。


潮の匂い。

濡れた髪。

息が、かかる距離。


「……大丈夫か」


「……うん」


手を、まだ握っている。


離すタイミングが、わからない。


そして――


「……ありがと」


小さな声。


ほんの一瞬。


でも確かに、

ケンカじゃない“何か”が混ざった。


カズヤは、少しだけ視線を逸らす。


「……気をつけろよ」


「うん」


手が、ゆっくり離れる。


波が足元をさらっていく。


好きってやつはね。


「楽しい」とか「ドキドキ」とか、

そんな分かりやすい顔して来やしない。


むしろ


ケンカの中に紛れて、

気づいたときには、もう逃げられない場所にいる。


そんなもんでございます。



つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ