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滅鬼の刃  作者: 大橋むつお
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67:『栞の近況報告・教職のこととか』

滅鬼の刃 エッセーラノベ    


67:『栞の近況報告・教職のこととか』 





 前々回、お祖父ちゃんが『キャベツ人間』を書いた日が一次試験でした。


 あ、大阪府の教員採用試験。


 いつもバイトの有る日だから、お祖父ちゃんには気づかれてないと思います。


 ——教師にはならない!——


 高校までは、ずっと言っていたんで、今さら採用試験受けると言えないわたしです。


 

 これと決められないまま、大学の四回生。ハッキリ言ってデモシカです。



 小さいころから学校や教職の話は聞いていたし、普通よりは現場の事も知っていました。お祖父ちゃんや武者のおじさんから色々聞いて大変なことは分かってるんですけどね。でもね、そこから漏れてくる話を聞いていると「わたしなら、こうやる」って感じることがけっこうあるんですよ。


 たとえば、63回で書いてた「女の先生は挨拶をしない」ってやつ。


 あれ、わたしも分かってました。


 小さいころ、お祖父ちゃんが職場に連れて行ってくれたことがあります。期末テストが終わって終業式には間があるという、いわゆるテスト休みの時期です。自分の小学校は創立記念日だったので、家で一人にさせるのは可哀そうだと連れて行ってくれたんです。


 出勤簿っていうのにハンコを押して自分の席に行くお祖父ちゃん。「お早うございます」とか「お早うっす」とか言いながら行くんだけど、きちんと挨拶が返ってくるのは正面の教頭先生だけ。男の先生は「ウッス」とか、コクンと頭下げたりとかなんだけど、数人いた女の先生は無反応。


 まあ、机に向かって仕事してたりするんだけど、それは男の先生もいっしょ。ひょっとしたら職場に子供を連れてくるのを無神経と思われてる? ちょっと緊張。


「退屈だろうから、他の部屋に行こう」


 そう言って、図書室のある校舎に向かって、途中学食にも寄って自販機のお茶を買ってもらって「先生、お孫さんですかぁ?」って、厨房からオジサンが声をかけてくれてお祖父ちゃんと二言三言、「そうか、栞ちゃんか。よろしくねぇ、食堂のおっちゃんですぅ(⌒∇⌒)」って返してくれる。オジサンはわたしの名前を聞いていたんです。そして、名前を確認してから声をかけてくれたんですね。ベンチに腰かけてるとオジサンも出てきて「学食の儲けて、自販機が半分やねん。たすかるわぁ(^▽^)。テスト休みでお昼は麺類だけやけど、よかったら来てぇ」って、行き届いたオジサンでした。


 図書室に行くと、司書の女の人と男の先生。男の先生は顔を上げて「お早うございます」って言うんだけど、司書の女の人は横顔でコクンとするだけ。


 で、その傾向は、自分自身の高校大学、そしてバイト先でも感じたこと。まあ、狭い経験の中からだけなんだけど、そう外れてもいないと思う。


 

 なんで教職をとったのか。とれるものはとっておこうです。終身免許だしね。


 それに、お祖父ちゃんのころと比べたら、採用試験の倍率は劇的に下がってる。


 大阪は、ほぼほぼ5倍ですよ。ちなみに、中学で3~4倍、小学校で2倍ちょっと。


 お祖父ちゃんのころと比べると五倍以下。人気ないんですよ教職って。


 まあ、それだけ現場はきつくなってる。


 でもね、府立高校って140校もある。お祖父ちゃんも「赴任校には当たり外れがある」って。


 まあ、その「当たり」に賭けるわけです。


 しばらくやって、本当にやりたいことが見つかったら鞍替えしますよ。本当が見つかるまでフリーターやるよりも、しっかり仕事の履歴持っていた方が有利だし。


 ちょっと不謹慎めいて聞こえるかもなんですけど、まあ、正直なとこです。


 昭和の偉い女優さんの言葉にこういうのがあります。女優さんは自分でも劇団持っていて、時々入団試験とかやるんですけど。その時に「意気軒昂に素晴らしい志望理由を言う人は外す」んだそうです。たとえ本心であってものめり込んでる人は、折れるのが早くて続かないんだそうです。それと「魚みたいな顔の人も外す」んだそうです。なんでしょうね「魚みたいな顔」って?


 かっこよく言うと、わたしはまだモラトリアム人間なんです。お祖父ちゃんや世間にお返しするには、もう少し猶予してください。


 取りあえずは、人よりは少し愛想よくて、きちんと挨拶ができる。


 とりま、このアドバンテージで二十代を乗り切っていきますよ。




☆彡 主な登場人物


・わたし        大橋むつお

・栞          わたしの孫娘 

・武者走       腐れ縁の友人(35回より故人) 

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