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滅鬼の刃  作者: 大橋むつお
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60:『鵯越(ひよどりごえ)の逆落とし』

滅鬼の刃 エッセーラノベ    


60:『鵯越ひよどりごえの逆落とし』 栞





 おじいちゃん偉いわねえ(^▽^)。


 ご近所のおばさんに褒められました。



 あ、今日はわたし(栞)が書いています。



 なにが偉いかというと、信号を必ず守るからです。


 自転車が多いお祖父ちゃんですが、スーパーや図書館、ご近所の用事などは歩いていきます。週に一回くらいは散歩も歩いているようです。


 うちの近所は戸建てが多い住宅地なんですけど、駅の周辺や通りに出るとけっこう信号があります。学校が多いせいかなぁ、小学校が四つ、中学が三つ、高校も二つ、幼稚園も二つあります。玉櫛川沿いの遊歩道も、一般道と交差するところに信号があります。


 右を見て左を見て、車が走っていないと、つい渡ってしまうもんですよね。


 高校の近くの遊歩道には、あまり車が通らない道との交差点にも信号があるんですけど、その先には小学校と高校。おそらくは、通学時間帯に地域の人たちが不便にならないための信号です。

 中高生って傍若無人ですからね、ご近所の人が遊歩道を横断して駅とかに行こうとしても聞くもんじゃありません。だから、信号で強制的に流れを止めてご近所さんが通れるようにしたものなんでしょうねえ。


 こういう信号は通学時間以外は守られない感じがあります。わたしも車が通っていないと渡っちゃいます(^^;)。例外は、保育所の子たちが保母さんに連れられてのお散歩に出くわした時とか、たまたま、お巡りさんが目に入った時とか。


 そういう信号でも、お祖父ちゃんは必ず立ち止まっているみたいなんです。


「あはは、歳だと自覚してるんですよ(^^;)」


 ご近所さんには、そう返事するんですけどね。


 ニ三年前は、要領かまして赤信号でも渡っていました。


 そうそう、たまたま、駅の改札出たところ。あ、最寄りの駅は改札は一個で、跨道橋の上にあります。その改札を出ると、ちょうどお祖父ちゃんがやってきます。


 お祖父ちゃんは、跨道橋の階段ではなくてエレベーターを使って上がってきました。思わず目をそらせました。ついこないだまでは「エレベーターは、かえって時間がかかる」と言って使わなかった人です。


 思わず目をそらせて気づかないふりをしました。


 この五月で73になったお祖父ちゃん。


 老化は個人差が大きいといいますが、ちょっと心配。ひいお祖父ちゃんひいお祖母ちゃんが老化の坂を、お祖父ちゃんに言わせると『鵯越ひよどりごえの逆落とし』になったのが73歳だったんだそうです。


鵯越ひよどりごえの逆落とし』っていうのは、源義経が、最初に平家を打ち破った戦いのことで、鵯越という崖を一気に駆け下り、前方の海しか警戒していなかった平家は真後ろから攻めかかられて四国の屋島に後退した。なんでも、信長の桶狭間に匹敵する奇襲攻撃なんだそうです。



 座卓横のくず入れを取り上げると、座卓のキーボードの横に数枚のメモ。


 メモには『753』とか『七五三』とか、書体や字体を変えたのが置かれています。


 こないだから、武者のおじさんのメモやら記録を読んでいる……それの一つかと思ったりするんですが、おじさんの字はどれも判読が難しいんですけど、これは、やたらときれいに書いてあります。


 はてさて……?


 


☆彡 主な登場人物


・わたし        大橋むつお

・栞          わたしの孫娘 

・武者走       腐れ縁の友人(35回より故人)


  

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