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滅鬼の刃  作者: 大橋むつお
53/56

53:『お祖父ちゃんの同窓会・1』

滅鬼の刃 エッセーラノベ    


53:『お祖父ちゃんの同窓会・1』 





 えーーと、栞です。



 お祖父ちゃん、不調なので、わたしが書きます。


 ヒノキ花粉も落ち着いて、天気予報でも紫色の『非常に多い』というのが無くなって黄色の『少ない』に変わってきました。まあ、これで、今年の花粉症もお仕舞……と思ったら、お祖父ちゃんの不調はそのままです。


 白内障やら網膜穿孔とかを患ったせいか、未だに目がシカシカしてパソコンの画面を見ていると目の奥が痛くなるんだそうです。

 それに、右ひじから肩にかけて痺れがあって。最初は棚の上のものが取りにくい程度だったのが、近ごろはキーボードを叩いていても痛んでくるとか。


「親も、これぐらいの歳からだったからなあ……」とため息のお祖父ちゃんです。


 お祖父ちゃんの言う親とは、わたしにとってはひい祖父ちゃんひい祖母ちゃんになります。


 生物学的の曽祖父曾祖母は8人ですが、生きているのを見たことがあるのは、お祖父ちゃんの両親だけです。


 10年前までは生きていたので覚えています。いつもひ孫のわたしにはニコニコと優しくしてくれました。高槻の公団住宅に住んでいたのですが「生きてひ孫の相手ができるなんて、ほんまに幸せやぁ(^▽^)」と笑っていました。最後は、二人ともボケボケになって、老人ホームで亡くなりました。


 そのひい祖父ちゃんひい祖母ちゃんの曲がり角が、いまのお祖父ちゃんの年齢なんです。


 いやはや……。


 だから、まあ、わたしがピンチヒッターなのですよ。



 この週末に、お祖父ちゃんは中学の同窓会に行きます。



 一昨年もあったのですが、去年は万博で交通機関も込み合っているだろうからと、一年置いて、今年の開催です。


 高校や大学の同窓会案内もくるのですが、ほとんど読みもしません。大学は、ゼミか部活でもなければ、あまり親しみは感じられません。わたしも学生だから分かります。


 でも、高校にもアイデンティティーを感じられないお祖父ちゃんです。


 実は、お祖父ちゃん、高校は二年で留年して四年行ってました。最初の学年が二年、二回目も二年。修学旅行は二年生の行事だから、なんと修学旅行を二回も行ってます。


 おや。


 なんと、上の二行で『二』を6回も使っています!


『二』はお祖父ちゃんにはクリスチャンの『13』と同じくらい縁起が悪いようです。


 同窓会と言っても、学年全体のではなくて、クラスの同窓会です。


 1年5組T学級。Tは担任の先生のイニシャルです。前回は20人ほど集まったそうです。


 もう何度もやっている同窓会なんですが、お祖父ちゃんは40歳の時に参加したきりで、実に30年ぶり、半分以上は誰が誰だかわかりません。幹事の方が名札を配ってくれて「あ、そうか!」と気が付くんだそうですが、中には名札を見ても「え?」という場合もあるんだとか(^^;)。


 もう古希を過ぎた同窓会なので、亡くなった方もチラホラ。亡くなった仲間たちに黙とうをささげるところから始まったそうです。


「いやぁ、久しぶり」と言って丸顔のお爺さんが、少し遅刻したお祖父ちゃんの前に座ったそうです。


「いやぁ、あのころは……」って感じで話してくるんだけど、お祖父ちゃんは「?」です。その人の話し方もお祖父ちゃんに直接ではなく、付近の人たちに話題を振ってという感じだったのですけどね。

 それ以外にも話しかけてくる人も居て、誰だか思い出せないまま時間が過ぎていきます。名札を見れば一発なんですが、名札が小さいところに、老眼。あのころには、もう網膜穿孔が始まりかけていましたから、容易には分かりません。


 そこで、眼鏡を出してやっと確認。


 それは水泳が達者だったA君でした。A君はスポーツがよくできて、特に水泳がすごくて、高校には水泳の特推で進学したほどです。そんなスポーツマンのA君でしたが、運動音痴のお祖父ちゃんにも分け隔てなく付き合ってくれて、運動会ではA君と二人クラス席の前で応援団の真似事とかもやったそうです。


「おお、Aだったんか! お互い、変わってしまってスグには分からんなあ!」


 とか、正直に叫べばよかった……一生の不覚。とお祖父ちゃんは後悔しています。


 名札をジロジロ、あげくには眼鏡でやっと確認、特に感動した様子もなく話だけ合わせて……きっとK君は失望しただろう……と、同窓会の案内を見ながら俯いています。


 会話というか、大げさに言えば人間関係というのは、そういうタイミングを逃すと挽回がむつかしいものです。とは、お祖父ちゃんが常々言っていることでもあります。お祖父ちゃんの人間関係論というかコミニケーション術は30年間の教師生活で身に染みたものなんだけど、ちょっと錆びついたかなぁ。


 まあ、それにも懲りずに、行くのですから、立派なもんです。


 がんばれ、お祖父ちゃん!


 で、次は自分で書いてね。


 


☆彡 主な登場人物


 わたし        大橋むつお

 栞          わたしの孫娘 

 武者走       腐れ縁の友人(35回より故人)

 

 

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