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滅鬼の刃  作者: 大橋むつお
54/56

54:『お祖父ちゃんの同窓会・2』

滅鬼の刃 エッセーラノベ    


54:『お祖父ちゃんの同窓会・2』 





 ちょっと話がなぁ……



 淹れたお茶の湯気を見ながらお祖父ちゃん。


 二年ぶりの同窓会から帰って腰を落ち着けたところです。


「聞き取れなかった?」


 ほかの人が「ちょっと話が……」と言えば、話が合わない……と思うんだけど、お祖父ちゃんが言えば「聞き取れない」になります。


「うん、他にも団体客が居たし、店の内装とかの関係もあるんだろうけど……栞の声はよく聞こえるんだけどなあ」


「アハハ(^□^;)」


 わたしのことも時々スカタンに聞いているお祖父ちゃんですが、追及はしません。


「まぁ、みんな似たり寄ったり。通じてないと思ったら半分くらいはリピートしてくれる」


「さすがは同窓生だね」


「言ったつもり聞いたつもりが半分だけどな。まあ、話は中身だけじゃない、話し方とか表情とかも大事だからな。そういう点では、ちゃんと伝わったさ」


「それで、みんなの顔、分かった?」


 前回の同窓会に来ていない人もいるだろうし、その時も幹事の方が送ってくださった写真を見て「誰やったかいなあ……」でしたからね。


「あ、まあな」


 分からなかったんだ……。


「いや、のっけにな『大橋くん、あたしのこと分かる?』って聞かれてな」


「恥かいたんだ」


「ちゃんと分かったぞ」


「えらいえらい(⌒∇⌒)」


「あ、正直言うと直前まで『どこのオバハンや?』だったんだけどな、横目で聞いてきたときの表情とかがな、昔のままで、すぐに分かった。人間、多少変わっても、表情は変わらんもんだ。他にもなぁ……」


 他にも直ぐには分からなかったけど、話をして分かる人が居たようです。


「幼稚園の話になってなぁ」


 お祖父ちゃんの幼稚園時代というのは、七十年近い昔の話です。たしかW幼稚園。


 以前、自転車で昔住んでいた町に行って、同じ場所に幼稚園があるのに感動したお祖父ちゃんです。


 あんまりジロジロ見ているもので、近所の人から不審な目で見られて困った。その幼稚園です。


 幼稚園の近くにはガスタンクがあって、ガスタンクって見たことが無いんで聞き返したんです「ガスタンク?」って。で、パソコンでガスタンクを出して説明してくれたことがあります。


「「「ああ、ガスタンク!」」」


 みんなの声が揃ったんだそうです。


 わたしは「ガスタンクぅ?」でしたから、会話が一気に弾んだみたいです。


 中でも女子二人が「うち、W幼稚園!」「あたしも!」となったそうです。


「ええ!?」


 お祖父ちゃんは愕然としました。


 目の前の女子二人は、直前まで——誰やったかいなあ?——だったからです。


 その二人が、実は幼稚園でも同窓生!


 幼稚園は二年保育だったから、中学一年の時と合わせて三年、ひょっとしたら小学校でも同じクラスだった可能性があります。バツが悪いのでそこまでは確認しなかったんだそうだけど。


 他にも、岐阜からやってきた人が居て、その人が60年ぶりのお祖父ちゃんを見て、こう言ったそうです。


「大橋くん、一学期の自己紹介で『みなさーん』て切り出したでしょ。びっくりしたわぁ(^〇^)」


「え、あ、そうだったっけ(^^;)?」


 昭和四十一年、ピッカピカの一年生。標準語で『みなさーん』とカマして自己紹介をするやつは、めちゃくちゃ珍しかったことでしょう!


 聞くと、その人は今でも発掘のお仕事をされているとか。


 その人、お祖父ちゃん自身忘れていた60年前の自意識を発掘したようです。


 今日はここまで。



 お祖父ちゃん、次は自分で書いてね。


 聞いてる?


 


☆彡 主な登場人物


 わたし        大橋むつお

 栞          わたしの孫娘 

 武者走       腐れ縁の友人(35回より故人)

 


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