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滅鬼の刃  作者: 大橋むつお
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50:『玄関前の階段で孫と新聞のヘッドラインに驚く』

滅鬼の刃 エッセーラノベ    


50:『玄関前の階段で孫と新聞のヘッドラインに驚く』 





 バイトをうちの近所にしたというので、近ごろは家に戻ってきた栞です。


 わたしの家に居れば家賃も光熱費もいりません。食費だって半分以下で済むでしょう。まあ、他にも動機があるのかもしれませんが素直に言うわけもありませんので、放っています。



「ねえ、もう新聞なんてやめたらぁ」


 夕刊を取りに行くと、ちょうど栞が帰ってきたところで、のっけに文句です。


「あと五年あるからなあ」


「五年、なにそれ?」


 鉢植えに水をやりながら文句が続きます。今朝はうかつにも水をやるのを忘れていたので——しまった(;'∀')——と思ったのですがおくびにも出しません。栞も、この程度のチョンボには文句を言いません。いちいち年寄りの失敗を注意していたらキリがないからでしょう。それに、それ以上の文句が言いたそう。


「去年、契約が切れたんでな、また契約したんだ」


「六年シバリって、いちばん長いやつでしょお」


「まあな、みそ汁のいいやついっぱいくれたしな」


「あ、あのみそ汁!?」


 六年で契約すると、いろいろくれるのです。テレビとか掃除機とか、この六年シバリで、もらったものがリビングに置いてあります。「ビールにしときますか?」と新聞屋は言うのですが、高級インスタントみそ汁にしました。


「お祖父ちゃん、お酒飲まないもんねぇ……」


 水やりをすませ、家の前の掃除にかかっています。髪の豊かな孫は、上から見てもつむじが見えません。思わず自分のつむじをさすりながら返します。


「栞だって、美味しいって食ってただろぅ」


「そりゃ、一食200円もするんだからねえ……」


 じつは、営業に回ってきたのは、御年八十四歳のご老人でした——S新聞です——の声に、いつもの集金かと出たら、原チャに乗ったお爺さんです。わたしがお爺さんというのですから、わたしよりも年上なのですが、年齢を聞いてビックリしました。

 お話を聞くと、お孫さんの学費を出してやりたいとか。お孫さんは大学院進学で「いやぁ、上出来の孫でして(^^;)」と手放しで喜んでいらっしゃる。なんとも目出度く、まあ、六年の契約にしたのです。


「ふぅ~ん、同類の先輩だったわけか……」


 少しは納得という顔をします。


「まあ、S新聞だし、いいか……」


 うちは親父の代からS新聞でした。AとかMとかYとかになることもありましたが、結局は社名のロゴがむつかしい漢字であったころからS新聞一本です。


 とくに意識してのことではないのですが、大手新聞では一番安かったからでしょう。


 まともに新聞が読めるようになったのは中学の時ぐらいからです。それでも、政治面などは言葉が難しく、一面は見出しと、冒頭数行のリード(要約のところ)だけで、あとはテレビ欄。他に三面と四コマ漫画というところです。


「お祖父ちゃん、そのネタ、前に書いてる」


「え、ああ……(;'∀')」


 そうでした、元日の新聞で、それも二回も書いています。


 しかし、思っただけで読み取ってしまうとは、恐るべき孫娘です!


「フフ、口に出てるのよ、人前では気を付けなさいよね」


「あ、ああ……」


 照れ隠し半分に新聞を見ると、一面のヘッドライン、沖縄の海難事故のことが出ています。


 めったに新聞には興味を示さない栞ですが、玄関前の階段(我が家の玄関は二階にあります)に座って一面の記事を読んでしまいました……。


 


 ☆彡 主な登場人物


 わたし        大橋むつお

 栞          わたしの孫娘 

 武者走       腐れ縁の友人(35回より故人)


 


 

 

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