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異世界刑事  作者: project pain


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消えた心臓<3>

──和司:西八番地、二件目の現場周辺


「そうですか・・・。何か思い出したり、そういえば、といった事がありましたらご遠慮なくご連絡ください」


和司はドアの前で会釈して次の家へと向かう。


やはり二件目も同じだ。声どころか物音一つ聞いていない。普通の人間なら、刃物で切られるか、刺されるかすれば声の一つも上げるはず。現場からそう遠くもない距離なのに、あの距離で声一つ、音一つ聞こえなかった?あれだけひどい目にあったというのに?


「どうやって音を消したか・・・」


どうやって殺害したのか、よりどうやって声や物音を消したのか。そっちを考えたくなってしまう。

そう考えていたところで、少し離れた通りの方から怒鳴り声が聞こえてきた。


「おい、こっちは俺達が先に嗅ぎつけたんだぞ!」


声のする方へ足を向けると、路地の入口で二つの一団が睨み合っていた。冒険者達だろうか。片方は揃いの深紅のマントを羽織った者達、もう片方は緑のローブに身を包んだ者達だ。それぞれの得物に手が掛かっているのが見える。


「先に嗅ぎつけたのは俺達、緋色の鷹だ。ギルドの受注記録を見てないのか?」


「はぁ?受注した時間なら俺達、風の旅人の方が早い」


「実際に現場を押さえたのはどっちかって話をしてるんだ」


和司は両手で二人を引き離す様に割って入った。


「そういう意味なら、最初に現場を押さえたのは俺達だ。だが、俺自身はここで言い争いをするのは好まない。二人共武器から手を離せ」


「モンスターが徘徊してるかもしれないんだぞ!一刻を争う事態って分かってんのか?!」


「だったらなおさらだ!先に討伐しなきゃ今日のメシにありつけないんだよ!」


「・・・これはモンスターの仕業じゃない」


「何だって?」


「今のところ把握できているのは三件。うち二件はいずれも鋭利な刃物を使って殺害されているのを確認した。あれは、モンスターが食い散らかした物じゃない。明らかに人間による犯行だ」


「人間が犯人なら、こうして街ん中走り回る必要はねぇ」


「一つ質問いいか?お前達、どこの現場のクエストを受けた?」


「南一番地だ」


「西八番地」


「こっから先は競争だ!いいな!」


答えを待つ前に緋色の鷹はどこかへと走り去ってしまった。風の旅人の方も違う場所へと急ぐ。


妙だ。彼等が受けたクエストはギルマスから聞いた場所と同じ。クエストが二重に発注されてるのか?それともそれぞれの場所で別の変死体が発見されたのか?見落としがあったとしたら一大事だ。和司もまた、次の家へと急いだ。




──弘也・ナスティア:北二番地、三件目の現場


北二番地に着いた頃には、既に野次馬の人だかりができていた。衛兵がそれを押さえようと現場の前に立っている。弘也とナスティアが案内された先の遺体は、これまでの二件と寸分違わぬ手口だった。


「女性、身長146cm。路地の壁際に仰向けに倒れてる。胸部の開放創、心臓の欠損。死亡推定時刻は今朝3時から5時・・・。先の二件と全く同じだ」


「懐に商業ギルドの登録証があったよ。名前はアシュリー・ウェスト」


弘也は路地の奥を見やった。


「三件とも体格も性別もバラバラ。それでも同じ時間帯に、同じ手口で心臓だけを・・・何の為に」


「お、先を越されたか?」


先頭を歩く男が肩をすくめながら近付いてきた。


「あんた等青の三つ星の・・・」


「クエストを受けて来てみたんだが・・・お前達もか?」


「あぁ、ギルマスに言われて・・・。ひょっとしてクエストが被ったのか?」


「それは知らないがね。ちょっと遺体を見せてもらうよ。クリス、頼む」


「ちょっとごめんなさいね」


クリスは弘也とナスティアを押しのけて、遺体の前へしゃがみ込んだ。


「何か分かるか?」


カーマイドが声を掛けると、クリスは遺体の開口部にじっと目を凝らした。指先を近付けかけて、思い直した様に手を引っ込める。


「心臓がないわね・・・。これってもしかして・・・」


「もしかして?」


弘也が身を乗り出す。クリスは口を開きかけたが、途中で言葉を飲み込んだ。


「クエストの情報を他人に話すわけないでしょ。カーマイド、急ぎましょう。詳しい話は後でするわ」


「おい、待てよ」


弘也が声を掛ける間もなく、クリスはもう走り出していた。カーマイドとアルジェールは弘也に小さく会釈すると、クリスを追って足早に路地を去っていった。


「何だったんだ?一体・・・」


「さぁ」


ナスティアは三人が去っていった方をしばらく見つめていた。彼等は何らかのヒントを得た。しかし、こちらは何も掴めていない。何でもいい。何か一つでも掴めれば。弘也は立ち上がった。


「俺達もこの付近一帯の聞き込みするぞ。カズ一人に負担は押し付けられない」


「うん、分かった」


側で民衆を押さえていた衛兵に声を掛けて、二人は周辺の家々を回った。

エピソードがまとまったら順次公開していく予定ですので、是非ブックマークしてください。


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