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異世界刑事  作者: project pain


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魔法学校の怪<2>

──教師寮


寮に入ったはいい物の、ベアトリスにあてがわれた部屋のドアをノックしても返事がない。念の為、寮の端から端まで回ってみたが、どこにもそれらしき人物が見当たらない。


「寮にもいませんね・・・」


「そんなに忙しい人なのか?」


「いえ、普段はあちこちに行く様な方ではないのですが」


四人は考え込んでしまった。そんな中、ハルカだけが廊下の別の場所に立っている。


「目を離すとこれだ。勝手に動くなって」


和司がたしなめようとすると、ハルカは首を振って一枚の丸鏡を指さした。


「鏡、ある」


「そりゃあっても不自然じゃないが・・・」


和司の言葉を無視してハルカは鏡に爪を立てた。


「やめろ!その音嫌いなんだよ!」


キキィーという不快な音が響く中、ローレンスの友人が息を切らせて廊下の奥から走ってきた。顔が真っ青だ。


「探したよローレンス!ベアトリス先生、見付かったよ・・・」


「本当?!どこ?」


その生徒は言葉を詰まらせ、視線を地面に落とした。


「二階の廊下・・・。高等生の学舎の休憩スペースで・・・先生が・・・先生が・・・」


「何?どうしたの?ちゃんと言ってよ!」


「とにかく来て!」




──高等生、学舎


学舎の廊下は授業中の為に静かだったが、突き当たりの休憩スペースだけ異様な空気に包まれていた。数人の生徒と教師が青ざめた顔で輪を作っている。その中心に、白いローブを着た女性が倒れていた。近付いたローレンスは倒れているベアトリスの背中を揺さぶってみたが、何の反応も示さない。


「嘘・・・嘘よね・・・気を失ってるだけじゃないの・・・?」


「違うのよローレンス・・・。ベアトリス先生はもう・・・」


「ベアトリス先生が・・・死んでる・・・?ベアトリス先生が・・・?・・・いやあああぁぁぁっ!」


錯乱するローレンスを和司は腕で受け止めた。


「よし、ローレンス。一旦落ち着こう。場所を変えような。ヒロ、そっちは任せたぞ」


「分かった。第一発見者の生徒も一緒に連れてってくれ。ローレンス、支えて上げないとな」


和司は最初に倒れているベアトリスを見付けた生徒を連れて別の場所に移動した。それを見届けてから弘也は周りの生徒や教師に距離を取らせた。ハルカが興味深そうに見守る中、二人は手を合わせた。


「あれ?」


ナスティアは廊下の不自然さに真っ先に気付いた。


「どうした?」


「変じゃない?」


「変って何が?」


ナスティアは遺体の周りを指でグルッと一周させた。


「この輪の中だけ足痕(げそこん)が一つもないのよ。他の場所は足痕(げそこん)がいっぱいあるのに、それがここだけ消えてる。キレイな位に。・・・それともう一つ」


ナスティアはしゃがんで床を叩いた。


「ここの廊下って床板をレンガ状に組んでるでしょ。それがこの輪の中だけ噛み合ってない」


「誰かが張り替えたとか?」


「ご遺体の真下だけをわざわざ?真ん丸に?」


「微物採取の方は?」


「砂利が少し・・・。どこの砂利かは後で探してみるよ」


ナスティアは弘也から受け取ったポリ袋に砂利を入れて固くチャックを閉めた。


「このご遺体、左利きだったのか?」


「え?」


「左手に何か持ってるぞ」


ナスティアが左手を見ると、確かに20cm程の長さの棒を持っている。


「魔法の杖持ってるね・・・」


「これが杖?魔法の杖っていったら普通は身の丈程あるだろ」


「そっちの方が威力が高いのは確かだけど、取り回しが悪いから、普通の魔法使いはこういう持ち運びやすい杖を使うんだよ」


この人物が左利きなのかどうかは頭の片隅に置いておいて、弘也は検視を始めた。


「身長158cm。女性。遺体は後頭部が床に接した仰向け、頭部は南西方向。廊下から右10°。着衣に乱れあり。ただしこれは揉み合ってできた物じゃないな。ご遺体をひっくり返すぞ。手伝ってくれ」


上半身を掴んだ弘也は両足を掴んだナスティアと一緒に遺体を仰向けに返した。


「胸部四ヶ所に熱傷痕(ねっしょうこん)。二ヶ所が円形・・・、直径5cm。二ヶ所が直線・・・長さ7cm。死後硬直は認められるも下肢にまで及ばす。紫斑も触診では戻る。他に目立った損傷はなし。死後4時間前後ってとこか・・・。死亡推定時刻は・・・今朝の8時から10時までの間」


弘也は立ち上がって遺体を見回した。


熱傷痕(ねっしょうこん)が死因なのは間違いないだろう。他殺だ。ただ・・・」


「ただ?」


「この二種類の異なる焼け方、どう思う?」


ナスティアは弘也が示した胸部の焼け跡を覗き込んだ。


「これは・・・火の魔法だね・・・しかも違う呪文を使った様に見える」


「魔法・・・魔法か・・・」


「それに、寮からここまでそう距離は離れてないし、ここ自体目立つ場所でしょ。こんな所で魔法をバンバン撃てば誰かしら気付くはずだよね。8時とか10時頃って皆起きてるわけだし」


「まぁ確かに」




一方の和司はローレンスと第一発見者、ジェシカ・リュエットと共に校庭のベンチで話を聞いていた。


「授業が始まる前に質問したい事があって、それで早めに教室に行こうとしたんです。そしたら・・・。すみません、頭の中が真っ白で・・・」


「大丈夫。思い出したところからゆっくり話してくれればいいから」


「はい・・・」


ジェシカの方もかなりショックを受けているらしい。ローレンスと手を握りながら涙を流している。そこへハルカがひょこっと姿を見せた。


「あれ?ハルカ、向こうにいたんじゃないのか?」


ハルカは手を開いて植物の種を見せた。


「ほい」


「え?」


その種を両手で握って、魔力を込めるとポンッと花が咲いた。


「元気、出せ・・・・・・ふぎゃっ!」


ハルカの後頭部に和司のチョップが一撃。


「その種どっから持ってきた?」


その様子を見て二人はクスッと笑った。


「あなたも魔法使いなのね」


「そう、私、強い」


「あなたみたいな力があれば、止められたかもしれないのに・・・」


「魔法といえば、ジェシカさんは先生に何を聞こうとしてたんだ?」


「はい・・・。二つの精霊を同時召喚した際の魔力制御についてでした・・・」


「・・・ハルカ、何の話か分かるか?」


「知らん」


二つの精霊か・・・。後でナスティアに聞いてみるか。ただ、ハルカが知らないというのが引っ掛かる。

エピソードがまとまったら順次公開していく予定ですので、是非ブックマークしてください。


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