アレバルザン王国へようこそ
みここです。え?誰かって、いやだなーみここですよ。
「あなた方を閉じ込めていた結界はもう既に解きました。大変おいしい悪夢をいただけましたので」
あれから僕たちは寝直すことにした。そして翌朝、メアさんが出立の準備をしてくれていた。ゾンビと一緒に。
メアさんが言った通り、僕達を墳墓に閉じ込めていた結界は解かれているようで、迷わずに街道に着くことができた。そしてそこには僕達を追っていた者たちの姿はなかった。聞けば、メアさんが張った結界により、完璧に撒いてしまったのだそう。大変な悪夢を見させられたが、感謝しなければいけないのだろう。あれ、マジでビビるからね。
僕達は、ルーイン帝国を目指す途中で進路変更をし、アレバルザン王国へ向かっている。まだここからじゃ半日はかかるらしい。しかし追手がいない分、いくらか気楽であった。初めてのシポース馬車の旅というのもあるかもしれない。のんびりと鼻歌交じりに王国へと向かっていった。
「ヴァンよ、今度こそは道を違えるなよ?」
「あ、アートラス様! あれはあのナイトメアの所業でして……」
必死に弁明しようとするヴァンが実に滑稽で面白かった。
「やっぱり外の景色はきれいだね」
森を抜け、ほぼほぼ平原になった地をシポースは駆ける。
もちろんヴァンがその手綱を引いてくれている。
「まあ夜になればここもモンスターの巣窟になっちまうんだけどな」
「……」
僕はヴァンをジト目で睨む。せっかくの絶景を台無しにするようなことは言わないでほしいよね、まったく。ほんと、男ってやつはデリカシーというものがない。
ふと、そんなことを思った。そして気づいた。あれ、僕も男だったよね、と。
最近なんだか元の自分が消えていっているように思える。かつて日本という地で男だった僕は、この世界で少女として暮らしている。普通ならばありえない現実に、慣れ始めてきている。昔の自分が、既に過去になり始めていた。まだそんなに月日は経っていないはずなのに。僕はもう、どうしようもなくミラ=オルティアになっていた。
「おい、ミラ? 起きてるか?」
先ほどから呼んでいたのかヴァンが声を掛ける。だいぶ思考してしまっていたようだ。
「ん、ごめん。なにかあった?」
「なにかあったぞ、ほれ前を見ろ。あれがアレバルザン王国だ」
視界が小刻みに縦に揺れながら見る景色。敷かれた道に先にひとつの街があった。
「アレバルザン王国って、国土のわりに小さいように見えるね」
「いや、実際に街自体は小さいんだ。アレバルザンはな、小国が寄り集まってできた国なんだよ。だからあれはその一つの"元"国家の街の一部。あの"元"国の街一つだけでも俺は全貌を見たことがねえ」
「あれが単なる街だとしたらかなり大きいね、アレバルザンって」
そう考えると、とてつもない国土も頷ける。さすが大国の一つだ。
そうこうしているうちに馬車は関所に着いた。特に厳しい検閲も受けることなく僕達は門番に案内された。
「ようこそ、マーマリオンへ」
僕達は今日、やっとの思いでアレバルザン王国の街、マーマリオンに着いたのだった。
みここでした。作品中では数日程度でも現実世界では半年かかっちゃいましたね。またこれからもゆっくりと継続して執筆しますので、飽きずに見てやってください。次は、マーマリオンにいるアートラスのお知り合いについてですよー!




