夢うつつ
みここでした。21時近いので初投稿。
「ナイト……!」
「まあまあそんな怖い顔しないでください」
僕の態度など気にも留めずにナイトは続ける。
「あなた方には大変感謝しているのですよ。面白いお話も聞かせていただきましたし、なによりもわたくしのお腹を満たしてくれました」
そういってナイトは自身のお腹をさする。まるでお腹が満腹だと主張せんばかりに。
「お腹を満たす? どういうことだ」
「そのままの意味ですよ。とてもおいしゅうございました。彼らには申し訳ないですが、アートラスが一番おいしかったですかね。いいリアクションをとっていただきましたし」
「――っ!」
その言葉に、先ほど夢に現れたアートラスさんとヴァンの死体が頭によぎる。
「あの人たちに何をした! 答えなければ今すぐお前を殺す!」
僕は殺気立って手刀に闇魔法シャドウソーイングを纏わせる。
「まあまあそう慌てないでください。順を追って説明しますから」
しかし、ナイトはいつのまにか僕の腕をつかんでおり、闇魔法も相殺してしまっていた。
「いい心がけです」
僕はもうすでに勝てないと思い、彼の話を素直に聞くことにした。
「ではまず、わたくしの正体でございますが――」
「ミラ! そいつは危険だ!!」
バン! と、部屋の扉をあけて飛び出してきたのはヴァンとア―トラスだった。
「あらあら、お二方も起きてこられたんですね。まあこの際ですからみんなに説明しましょう」
ナイトが言うや否や、彼のその体は黒い靄に包まれて次第に一つの闇に変化した。
「ど、どういうことだ!」
ヴァンもどうやらよくわかっていないようだ。しかし二人とも無事であることを思うとナイトはどうやら敵ではないらしい。
「今わたくしの姿はどう映っていますか?」
僕はただの闇にしか見えない。しかしヴァンは鹿、アートラスさんは梟と答えた。
「そう、わたくしは見るものによって姿を変えます。ミラさん、あなたには先ほどまで絶世の美男子ナイトとしてふるまっておりましたが、彼らお二人には絶世の美女メアとして接しておりました」
「な、なんだと! 女じゃないのか!」
そう叫ぶヴァンをジト目で見つめる。そうか、だからここに来た時、ナイトの姿を見て惚けていたのか。あれは決してイケメンを見ていたからそうなっていたのではなく、異性の美女として映っていたからなのか。そう考えると二人とも欲に忠実であるように思えて少しイラッとした。
「ふふ、すみませんでした。わたくしは本来ナイトメアという性別のない悪魔にございます。その性質は人の夢をくらう。好物は悪夢でございます。それゆえ、あなた方に悪夢を見せてひとしきり堪能したのです。本当はあらかじめ知らせておきたかったのですが、それをしてしまうと味が半分にまで落ちてしまうのでできなかったのです。ご迷惑かと思いますが、とてもおいしかったです」
おそらくメアの姿に戻ったそのナイトメアは、つややかな表情で満面の笑みを浮かべていた。そこからは、その言葉以上の真意は見受けられず、言っていることがすべて事実であることを如実に知らせてくれた。
「なんだ……そうだったのか……。慌てて損しちゃった……」
僕はへなへなと力が抜ける。それはほかの二人もそうだったようで、ひたすらに疲れる悪夢を見させられる三人と、それを食べて喜ぶ一人が居並ぶという異様な光景が出来上がったのであった。
みここでした。
たまにあるよね、夢と現実の境が判らなくなるのって。




