悪夢
みここでした。三度ある初投稿は四度ある。
「あ……あぅあ……」
僕は驚きと恐怖と絶望によって声が出せないでいた。
目の前で死人と化したヴァン、それは助けを請いつつその肉体をなおも崩している。
どさりと落ちた上半身は、手だけで僕のもとに近寄ろうとする。
「ミラぁ……ミラぁ……」
うめき声ともかすれた空気音ともとれる、どちらにせよもう人の声でなくなった声で僕の名を呼ぶ。
僕はもう、これ以上ヴァンの醜い姿を見たくなくて慌ててその部屋を出る。
「はあ……はあ……」
息を切らしながらドアを閉める。すると、ドアの向こうからの音はぴたりと止んだ。
それがさらに不気味さを増し、僕を恐怖のどん底に叩き落した。
「ヴァン……なんでこんなことに……」
ヴァンは死人になってしまった。しかももう手遅れなほどに。助ける力を僕は持ってはいないだろう。
「はあ……はあ……、そ、そうだ……アートラスさん」
ここに来たもう一人の連れ、アートラスさんのことを思い出す。彼なら助けてあげられるかもしれないと、一縷の望みを賭ける。
走って向かった先はアートラスさんの個室。ドアノブに手を欠けると同時に、さっきのヴァンの姿がフラッシュバックする。どうしよう、アートラスさんもゾンビになってしまったらどうしよう。
しかし今はそんなことを考えている猶予はなかった。
勢いよく開いた扉。しかしそこにアートラスの姿はなかった。
「い、いない……?」
それならどこへ?
そうして思い立ってしまったのが、先ほど僕自身がトイレに行くときに聞いた引きずるような音。
嫌な予感がする。
走り出す衝動が抑えきれず、僕はもと来た道を戻り、僕の部屋の前を通り過ぎ、先ほどの居間まで駆ける。
ついてみればあっさり。それは見つかった。
高級そうな貴族の服を身にまとったゾンビが形をくずして地面に転がっていた。
「あ、アートラスさん……!!」
先ほどまで屋敷でなくなった従者たちを悼んでいたその瞳は、静かに空を見つめていた。もはや生気はどこにも見受けられなかった。
「ああ……あああっ!」
僕は泣いていた。二人が死んだことにだろうか。そう、僕は二人が死んだことがとても悲しいのだ。その涙は冷たく頬を伝う。
泣いていて気づかなかったのか、いつのまにか僕は複数のゾンビに囲まれていた。
触れるとそこから腐る。おそらくヴァンたちは寝ている間に囲まれたのだろう。きっと何もできずに死んでいったはずだ。そのゾンビたちは止まることなく僕に近づき、触れる。
触れたところから激痛が走る。熱い。痛い。熱い。痛い。
「ああああああああああああああああああああ」
僕の叫びが合図になったのか、抱き留めるようにして全員で僕を殺した。
「ああああああああああああああああああああ」
バッと起き上がる。
「はあ……はあ……」
大量の汗、手のひらには嫌な感触がまだ残っていた。
「夢……か」
実に最悪な夢だった。この場の全員が死んだのだ。しかもものすごいリアルな感触と共に。
もう僕自身、生を諦めてしまうほどにそれは恐怖を具現させた夢だった。
「すこし早いけどおはよう、ミラさん」
ビクっとして隣を振り向く。そこには、初めからそこに存在していたかのように椅子に座るナイトがいた。
「とてもおいしかったです。ありがとうございます。ミラさん」
その先ほどの笑顔と変わらぬ満面の笑みに、僕は冷や汗と共に恐怖を覚えた。
みここでした。ちょっと書くペース早かったかな。まあいいか。
次回、ナイトの正体がわかります。




